カテゴリー: プロジェクト

「ユニベールハウス」玄関を玄関だけで使うなんて勿体ない

「ユニベールハウス」の玄関土間は広めにとって、玄関収納としています。玄関土間を広めにしておけば、ただ単に靴の履き替えをするだけでなく、ちょっとしたアウトドア用品を仕舞ったり、DIY作業したり、自転車の整備をしたりと、さまざまな用途で使うことが可能になります。玄関土間をただ出入りするだけに使うなんて勿体ない、いろんな用途に転用することで暮らしの可能性が大きく広がります。

玄関土間の壁面には可動棚を設け、カウンターには手洗いボウルを置きました。壁面収納を設けたことで、かなり大容量のモノが収納できます。キャンプ好きな人はテントやBBQ用具など、海好きな人は釣り竿やサーフボードなど、思ったよりも収納道具って容量が必要ですよね。可動棚を増やせば、更に収納量を増やすことも可能です。

これだけの棚があれば、かなりの量が納まるのではないでしょうか。今回はコストを抑えるために合板仕上げのままとしましたが、塗装で仕上げることで見せる棚にすることもできます。最近はテレワーク需要も高まっていますので、オフィススペースとして使う、というのも有効かもしれません。今回は6帖ほどのスペースですが、もっと大きく設ければ、ちょっとした店舗スペースとしても使えるかもしれません。


玄関側には自転車を土間へ入れるため、テラスドア設けています。テラスドアには、暗くなりがちな玄関スペースに光を取り込む機能も持たせました。玄関ドア横の壁には、ポスト口を組み込みました。郵便物などは外に出なくとも、ここで受け取る事ができます。ポスト口に投函されたモノは、カウンター上にぽろりと落ちる仕組みとなっています。

小さな住宅だからこそ、スペースを有効活用することは重要です。床面積が小さくとも工夫をすることで、使い勝手を上げ、広く使うことが可能になります。

設計協力物件が「近代建築2021年6月号」に掲載されました

ここ数年、当事務所が設計協力を行ってきた「ハイアットリージェンシー横浜」が近代建築6月号に掲載されました。2021年6月15日発売で書店に並びますので、ぜひお手にとってご覧ください。

ハイアットリージェンシー横浜」掲載ページ

建築主:株式会社ケン・コーポレーション
設計・監理:国建
構造設計:江尻建築構造設計事務所
設備設計:森村設計
インテリアデザイン:イリア
設計協力:金子勉建築設計事務所

と、錚々たるプロジェクトメンバーの中、当事務所もプロジェクト参加させていただきました。思い返せば、設計がスタートしてから完成まで色々とありましたが、メンバー一丸となり、最後までたどり着くことが出来ました。

設計メンバーには、大学時代の先輩にあたる意匠設計の有銘氏と構造設計の江尻氏が参加しています。(プロジェクトに誘っていただいたのは、ほかでもない有銘氏ですが。。。)お二人は、私が設計事務所を始めた当初のプロジェクト「南青山キリン」でお世話になった、顔なじみメンバー。南青山キリンは2001年竣工ですので、20年の月日が経ったことになります。あの頃は私もまだ駆け出しで、まさか20年後にここまで大きなプロジェクトを同じ顔ぶれで進めているとは、夢にも思いませんでした。

私の事務所では、住宅や店舗内装などの比較的小規模な設計事案が多いので、高層ホテルとなると、いつも手掛けている規模の数百倍の床面積になります。私自身、ここまで大きな規模の物件を経験したことは無かったのですが、普段手掛けている物件と同様、目の前にある事を一つ一つ確実に処理していく事で、いつもと変わらず、前向きに設計に取り組めたのではないかと思っています。この経験を活かし、更に設計技術を磨いていきたいと思っています。

「ユニベールハウス」工事最終段階です

「ユニベールハウス」工事の最終段階に入りました。壁の塗装工事が終わり、白い壁に反射した陽の光で室内が一気に明るくなりました。壁仕上げには、しっくい塗装を採用しています。こちらの塗料は、艶消しのようなざらっとした質感が特徴で、落ち着いた雰囲気の空間に仕上がります。見た目の質感だけでなく、しっくい塗料だけあって調湿性を持ち、空気環境を安定させてくれます。

こちらの写真は、窓回りの枠納まりです。窓枠の厚みを薄くすることで枠の存在感を消しています。既製品枠だとどうしても、ぼてっとした印象になってしまいますが、このように納めると見た目がシャープになります。本来であれば、窓の外の景色をそのまま見たいのであって、サッシや窓枠の存在が完全に無くなるのが理想ではあるのですが、、、完全に隠してしまうには更に複雑な納まりを採用しなければならず、今回はシンプルな納まりにする、という方法にとどめています。窓の外には隣地の桜の木が見えています。隣の風景を拝借、借景として取り込んでいます。

現在、設置工事が進行中のオーダーキッチン。ローコスト住宅でありながら、ここはこだわった箇所です。細かな作り込みをせず、シンプルな納まりとすることで、オーダーキッチンでありながらも、製作費を抑えています。ローコストを目指すと、どうしても既製品を組み合わせることに陥ってしまうのですが、既製品の組み合わせだけでは、賃貸アパートのような作りになってしまいがちです。ローコストだからこそ、こだわりの個所を作ることが大事だと思います。こだわりの無い、抑揚のないのっぺらとした家では、感情移入しづらく、なんとも貧相な空間になってしまうと思うからです。

工事はいよいよ最終段階。完成に向け、ラストスパートです。販売会社により内覧会が開催される予定ですので、興味のある方はぜひとも、ご来場ください。

「ユニベールハウス」工事進行状況の確認

「ユニベールハウス」工事進行状況の確認と打合せのため、現場へ。仕上げた材を傷つけないよう、工事の順番を天井→壁→床と上から下に順番に進めていきます。天井の工事が概ね終わり、現在、間仕切り壁の下地工事が進んでいます。壁下地工事と同時進行しながら、窓枠や建具枠などを同時に加工し、取り付つけていきます。

今回、枠や建具などは、既製品を使わず、加工製作枠としているので、その都度、納まりを検討して、形状を加工し、組み立てていく必要があります。そのため、既製品枠を購入するのとは異なり、取付工事には時間がかかってしまいます。が、、、その分、空間に合った形で作ることができます。今回は、枠の厚みを薄く、出寸法も最小限に納め、室内空間をシンプルでミニマルな雰囲気で統一します。

「ユニベールハウス」断熱性能と建設費用について

「ユニベールハウス」工事がスタートした頃は、まだ残暑が続き、暑い暑いと言いながら現場作業していたように思うのですが、気がつけば既に肌寒い季節になってきました。夏になれば暑さが、冬が近づけば寒さが、つい気になってしまうのが人情ですが、今回は断熱性能についての話です。なぜなら現在、現場では断熱工事が進行中だからです。

断熱材は色々なメーカーが研究開発を重ね、現在、さまざまな種類の断熱性と気密性が高い製品が市場に出ています。10年前に比べると、同じ値段で手に入る断熱材の性能は、格段に上がっているというのが実情です。数ある断熱材の中からどの断熱材を選ぶのが良いのか。各社のカタログを見比べて今回選択したのは、在来工法でもっとも一般的に採用されている高性能グラスウール断熱材でした。

高性能グラスウール断熱材を採用した理由は、一般流通している製品で日本中どこでも手に入りやすいこと(つまり全国どこの建材屋さんでも手に入り、かつ、導入コストが安い)、また、大工さんが昔から使っていて最も慣れており、施工スピードが速くて施工が確実なこと、でした。高性能と呼び名がつくだけあって、一般のグラスウールよりはやや値が張りますが、高性能グラスウールだろうと、一般グラスウールだろうと、大工さんの施工手間は全く一緒。(高性能だろうと高性能でなかろうと、グラスウールの厚みが一緒なら、という事です。)ということは、施工手間は変わらず、グラスウールの差額分の増額だけで導入できるので、大幅な工事費アップをせずとも断熱性能を上げることができます。

サッシには、樹脂複合サッシ+複層ガラスとし、日差しの差し込む大きな窓については熱線反射ガラス(Low-Eガラス)を採用しました。数年前まではアルミサッシが主流で、樹脂複合サッシは、まだ金額が高かったのですが、近年、国の省エネ政策の影響もあって、アルミサッシの1~2割増しで手に入るようになり、採用しやすくなっています。また、更に性能の高い樹脂サッシも、普及が進んできており、価格は年々、下がってきています。今回の建物のように、大開口窓を設けるような住宅では、窓サッシの断熱性能を上げるのは、断熱性能アップにとても有効な手段です。

これらの仕様で、建物の断熱性能は(正確には外皮性能ですが)、平均熱貫流率(UA)値=0.64W/㎡Kとなっています。ZEH(ゼッチ=ゼロエネルギー住宅)の断熱性能基準が新潟市では、UA値=0.6以下ですので、ゼロエネルギー住宅にはちょっと届かないという数値ではありますが、坪単価を抑えたローコスト分譲住宅という建物の性質を考慮すれば、それなりにハイスペックな断熱住宅の部類に入れても良いのではないかと思います。

分譲住宅においては、販売価格と断熱性能スペックのバランスが重要となるので、今回はこの断熱数値としましたが、もっと断熱性能を上げていくことは当然、可能です。例えば、断熱材の性能をアップする、または、窓を全て樹脂サッシにし、Low-Eガラスにするなど。部屋の広さやデザインなどと違って、断熱性能は、ぱっと見で伝わるものではないので、どこが適正値かを決めるのはとても難しいところです。

思い返してみると、私の事務所で設計している住宅は、年々、断熱性能が上がってきています。10年前の住宅と今の住宅では、まったくといっていい程、断熱性能が異っています。それは、断熱材の性能アップという断熱メーカーの努力と、省エネルギーに対する人々の意識が変わってきたことの現れと言えるかもしれません。

「ユニベールハウス」外装下地工事

「ユニベールハウス」現在、外装下地工事が進行中です。以前は柱梁だけの骨組みでしたが、外壁下地が貼られ、外形が表れて家らしくなってきました。周囲の建物と比べ、ひと回り高さが低いためか、どこかしら可愛らしい印象があります。

今回、外壁下地材には耐震パネルを採用しました。筋交いなどの線状の耐震材に比べ、パネル状の耐震材は、地震力を分散させて伝えることができるため、地震に強いと言われています。また耐震性を上げると同時に、建物の気密性も上げる効果があると考えています。

建物内はというと。。。まだガランとした状態のままです。外壁工事が終わらないことには、室内に雨が入ってきますので、まだ室内の工事が進められません。現在、窓サッシを取り付けるために外壁下地ボードに穴を開ける作業中。サッシが現場に届くのを待っている状態です。

「蓮野の平屋」が「住まいネット新潟VOL.30」に掲載されました

9月30日発売の「住まいネット新潟VOL.30」に「蓮野の平屋」が掲載されています。「10年後の住まい」と題し、取材後10年以上たった家を再度訪れ、どのような暮らしをしているか、どのように暮らしが変化しているのかを再び取材・撮影した特集。

「蓮野の平屋」は2008年竣工。今年が2020年ですので、竣工から約12年経ったことになります。建築の設計は、最初の相談から家が出来あがるまで丸1年以上の時間がかかります。設計に集中して取りかかっていると、あっという間に月日は経ち、気がつけば12年もの月日が経っていたようです。まるで浦島太郎です。

7年ぶりの取材(掲載時の取材は2013年ですので)に立ち合い、当時の思い出を施主さん家族と話していると、その時考えていたことやその当時の自分の気持ちを思い出してきました。「空間の中にどんなモノが置かれても、空間内でどんな暮らしをしたとしても、ぶれない強度のある空間を作ること」その当時考えていたのは、包容力のある空間を作ることでした。ちょっと雰囲気の異なるものを置いただけで、ぶれてしまう繊細な空間でなく、どんなものでも受け入れてしまう包容力のある、骨太の空間。

出来上がった紙面を見ると、少し感じは異なるものの、竣工当時の空間の雰囲気そのまま、何も変わってないように感じられます。少しは自分にも包容力のある空間を作れたのだとすれば、うれしいのですが。ぜひ紙面を手にとって見比べてみてください。

リビング風景。窓の外。隣地の竹林を借景として取り込んでいます。高さが抑えられたハンス・ウェグナーのソファーとテーブルが置かれ、重心の低い落ち着いた空間となっています。ペンダント照明の明るさが抑え目なのも、落ち着き感に貢献しています。和とモダンデザインが融合した、家具インテリアは、お住まいの方が自分で選んだもの。さすが、センスあります。

リビングと連続するデッキテラス。リビング床とデッキ床レベルを揃えることで外部への連続性が生まれ、部屋の広さの割に広がりを感じる空間となっています。竣工当時と比べるとフローリングの色は、だいぶ飴色に変化しています。竹林の葉を透過した陽の光がちらちらと揺れながら室内に差し込んできます。

ダイニングテーブル横のスペースは、子供たちが作った作品の展示エリアに。造り付けの収納カウンターは、ダイニングテーブルと高さを揃え、モノが直ぐに手に取れるように。写真や習字、ピアノなど何でも並べて、にぎやかな雰囲気に。壁付けスポットライトをベース照明として使い、ポイントとなる個所にはペンダント照明を吊るし、空間に明暗を作り出すことを意識して照明計画しています。

竹林に面した側には昔ながらの縁側を設けて、ちょっと懐かしい空間に。右手の窓の外には雑木林、左手の障子戸の奥は畳スペース。縁側に腰掛けてぼーっとするのも良し、畳にごろんと寝転ぶのも良し。畳に腰掛けて外を見たときの視線を重視して、あえて天井高さは低めにしています。屋根を支える構造部材の垂木(たるき)は、そのまま表しに。規則正しく連続する垂木が空間にリズムを与えています。

縁側を外から見る。窓の外には雑木林が広がっています。この立地の敷地を探すために、施主さんはずいぶんと土地探しをしたそうです。確かにこんな条件の土地は、そうそう見つかりませんよね。隣地が雑木林という敷地の特徴を最大限生かすため、設計時には、窓の配置や建物の配置を何度も検討しました。

廊下コーナーの展示スペース。壁から分厚い木の棚板を飛び出させ、スポットライトを当てています。明るい場所だけでなく、暗い場所も意識的につくり、明暗の変化がある空間としました。明・暗だけでなく、天井の低い場所・高い場所、開放的な場所・閉鎖的な場所、と場所ごとに空間の質を変えることで、小さいながらも変化に富んだ家となってます。

取材時に撮らせてもらった写真を解説と共に載せてみました。雑誌の掲載記事と見比べながら、お楽しみください。

「ユニベールハウス」建設工事スタート

「ユニベールハウス」建設工事がスタートしました。地盤改良工事→基礎工事→建て方と進み、柱梁が立ち上がりました。角地に建つ建物ですので、全貌がとても良く見えます。北側へいくに従って高さが低くなる片流れ屋根形状の建物。この屋根の形そのままに、天井にも勾配がついた内部空間となる予定です。

写真をみると、周囲の建物よりも高さが少し低めになっていますが、何故かといえば、それは建設コストを抑えるため。高さを抑えることで、外壁仕上げ面積と内装仕上げ面積が減り、建設費を抑えることができます。と言っても、室内の高さが低くて圧迫感があるということはありません。そこは設計上の工夫をして、広がりのある空間を実現していきますので、ご心配なく。

木造住宅ですと、部材を構造計算によらず、大工さんの経験値で決めることもあるのですが、この建物では構造計算を行って部材ごとの耐力を決めています。その計算された耐力を発揮するため、建て方が終わった際に取付金物の確認を行っていきます。柱梁の寸法を確保することは当然、大事なのですが耐震性を高めるには、金物の取り付けが重要なポイント。力のかかる場所に見合った金物がきちんと取りつくことで、建物本来の強度が確保できます。

金物の取り付け位置や取付ビス種類や本数などもひとつひとつ漏れなくチェック。仕上げをすれば隠れてしまう部分だけに、この段階での確認が大切。金物が間違っていれば直しも簡単ですし、弱い部分には補強を施すこともできます。下の写真は、柱と筋交いに金物が取りついた写真。設計図で指示している金物であるかどうか、また、ビスの本数が合っているか、打たれているビスは指定通りのものか、などを確認していきます。

工事はこの後、外壁下地工事へと進んでいきます。まだまだ先は長いですが、工事の進行状況を時期をみてアップしていきたいと思います。

屋根端部をすっきりと納める方法

「岩室の平屋」現場では現在、屋根工事が行われています。今回の屋根は、ガルバリウム鋼板葺きとしているのですが、ガルバリウム屋根葺きと一言で言っても実は、さまざまな葺き方があります。瓦棒葺き、縦ハゼ葺き、横葺き、と、その他多数。近年は、現場での施工手間を減らすため、パチパチと留め付けるだけで簡単に施工が完了するタイプの屋根葺き工法もあって、施工時間の短縮化、施工手間の軽減が大幅に図られています。(同時に防水性能の向上も年々、図られているようです。)

ガルバリウム鋼板自体も年々、性能が上がり、さび保証20年以上の高耐候製品や遮熱性能を持つ製品も現れてきています。工事コストと屋根防水性能を考えると、他に選択肢がないくらい、ガルバリウム屋根が国内の屋根業界を席巻しているのが現在の状況です。

今回、屋根葺きに採用したのは、昔ながらの手で締め付け加工を行う「縦ハゼ葺き工法」。なぜわざわざ、と思われるかもしれませんが、敢えてこの方向を選択したのは、見た目がすっきりと美しく納まるから。

・軒先に雨どいを取り付けないので軒先が良く見える
・平屋で建物の高さが低く、軒先が近くに見える
・平屋の特徴である水平ラインを強調したい

これらの要素を考慮し、縦ハゼ葺きのハゼ部分を軒先端部でつぶしたシャープなデザインにしたい、と考えました。そんな細かい所まで、と思われるかもしれませんが、そのような小さな部分を積み重ねることで、最終的な建物の見え方が大きく変わってきます。上の写真は、屋根の端部納まり部分。屋根端部でハゼの立上り部分を折り曲げ処理し、水平ラインがくっきりと、すっきりとします。

上の写真は、縦ハゼを締め込んでいくための道具「ハンドロールシーマー」。

職人さんの話では、近年、簡易型のキャップ式施工方法が主流で、手加工をしたのは、数年ぶりとの事。施工方法が簡易化・効率化していく流れの中、このような手間の掛かる工法は、いつか姿を消していくのかもしれません。

隣り合った屋根材の立上り部分を専用の道具で掴んで折り曲げていきます。折り曲げることで屋根材同士が一体化し、継ぎ目のない一枚の屋根となります。端部は大きなペンチのような道具(通称「がちゃ」と呼ぶそうです。)を使ってがちゃ、がちゃと締めこんでいきます。長い召し合わせ部分は、ハンドロールシーマ―で、立上りに沿ってローラーでぐいぐいと押し込んで締めていきます。


設計者としては年々、工法の選択肢が減っていくのは非常に悩ましいことではあるのですが。デザイン上、選べるものが無くなっていくことですので。もしかすると数年後には、手で加工するこのような工法を現場で目にすることが無くなっているかもしれません。

 

ウッドロングエコを使った杉板DIY塗装の手順

「岩室の平屋」は、設計者である私の自邸です。いつもは設計者として現場に関わるのですが、今回は立場を変え、住まい手の立場で記事を書いてみました。DIYをやりたいと考えている方の手助けに少しでもなれば幸いです。

建物の外壁に張る杉板の塗装、通常は塗装職人さんが行うのですが、今回は自分でDIY塗装をしてみました。いつもは設計者として、お客さんのDIY塗装のアドバイスや助っ人をしているのですが、自分が主役となってDIYを行うのは、今回がはじめて。

せっかくの機会ですので、DIYの塗装の手順や掛かった費用を紹介したいと思います。

 

杉板DIY塗装に選んだ自然塗料「ウッドロングエコ」

今回使用した塗料は、天然防腐塗料「ウッドロングエコ」。木の表面に被膜を作らず、成分が木へ浸透し、防腐効果を発揮する塗料です。

外壁に木材を採用する場合は、耐候性やメンテナンス性が重視されるため、一度塗ったらメンテナンスがいらなくなるのは大きな利点。人体に害のない自然素材を原料にしているので、外壁を木で仕上げるエコなスタンスと、とてもマッチします。

ウッドロングエコは、緑色の粉末と水道水を混ぜるだけで作れるので、初心者でも簡単に扱えます。塗装に使ったハケやバケツなどの道具は水道水で洗い流せる点でも、取り扱いが簡単です。

今回は、桶を作って塗料に杉板を漬けながら塗る「どぶ漬け」の方法をとりました。以前、ハケ塗りをしたことがあるのですが、塗装の終わった板を後日みると塗り残し部分が結構あり、最終的には3度塗りまで再塗装をおこなった経験がありました。(木の表面に撥水する部分があると、塗料がうまく材に浸透しなくなるようです。)ハケで3度塗りをする手間を考えると、どぶ漬けを行う方が効率が良いと判断しました。またハケ塗りは、塗っている最中に塗料がぽたぽたと床に垂れてしまい、塗料がだいぶ無駄になっているのではないかと考えたためです。

「ウッドロングエコ」をどぶ漬けする

はじめに塗装の前に塗料を漬け込む桶づくりからスタートします。用意した材料は、以下。

・ブルーシート(長さ5.4以上)×1枚(水漏れ防止のため、厚手タイプがおすすめ)
・桟木(さんぎ:3cm×3cm程度の細長い角棒状の木材)長さ4m×6本程度
・貫板(ぬきいた:幅9cm×厚1.5cm程度の板材)長さ4m×4本程度
・えんぴつ
・のこぎり
・65mmビス(材料固定用)
・充電ドライバー(ビス止め工具)

まずは、桟木と貫板をのこぎりで必要な長さに切り、ビスで固定して桶の外形フレームを作ります。

参考までに、今回のフレームのサイズは、深さ30cm×幅20cm×長さ4.5m程度としました。桟木などは通常、長さ4mで販売されているので2本繋いで4.5mの長さにしています。(塗装する外壁材の寸法によって調整してください。)底に板を貼れば更に完璧ですが、今回は手間を省いて、底板を留めつけず、底に板を敷くだけにしています。

完成したフレームの上に、ブルーシートを被せ、塗料を溜める桶とします。塗料の液漏れ防止のため、ブルーシートは2つに折って2重にしておくのがベターです。

また塗装作業は、地面の上に桶を置いておこなってもよいのですが、作業時に腰に負担がかかるので、やはり台の上に置いて作業した方がおススメです。(今回は大工さんの作業用の台を借りました)

ここまで整えば、後は塗料を作り、桶の中へ入れて塗っていくだけです。
塗装のために用意した道具は、以下。

・塗装用手ぬぐいタオル、または、雑巾などの布
・バケツ(10L程度、水の量を測れるとベスト)
・ゴム手袋

どぶ漬け桶に塗料(ウッドロングエコを水道水で溶かした塗料)を入れます。塗料を満たした桶の中に、塗装する板材を漬け、表面を布で擦ります。

木の節や脂分の多い部分は水分を弾きますので、布で擦ってやって、塗料を材料へ浸透させていきます。板をゴシゴシとぞうきんで水洗いするイメージです。

板の側面や端部は、塗り残しがちな部分ですので、特に入念に。表に続いて、裏面も同様に。(表だけ塗装とする場合は、片面だけでOKです)塗り終わったら、よく水を切って、立てかけて乾燥させます。後は、根気よく繰り返すだけ、です。

塗装作業動画はこちら↓

DIY塗装にかかった作業時間

今回、塗装した板の枚数は200枚でした。板を運ぶ人、塗装する人と、作業を分担して2人ががり作業して、1時間に大体20枚程度のペースで塗れました。朝9時からスタートして昼休憩をはさんで15時まで作業すると、一日に塗れる枚数は100枚。

計算通り、2人で作業して、2日間で板200枚のDIY塗装が完了しました。平屋ですので外壁面積が少なく、この程度の板の枚数で済んでいますが、2階建ての家であれば、倍の板枚数、倍の塗装時間がかかると思ってください。

なお今回は2人で作業をしましたが、もっと人手があって、板を運ぶ人、塗装する人、立てかけて乾燥させる人、と作業分担をすればもっと効率よく作業が進むはずです。テンポの良い音楽でもかけながら、リズムよく作業を進めてください。

「ウッドロングエコ」の塗装後の杉板の表情

写真は、手前から、塗装前、塗装直後、塗装して数時間後の杉板の表情。肌色だった杉材が、落ち着いたグレー色に変化しているのが分かります。

塗装直後よりも時間が経つほど、塗料が木へ浸透・反応し、更に落ち着いた色目になってくるはずです。いかにも着色した木の色でなく、シルバーグレイの木の自然な風合いを求めるのであれば、この塗料はおススメです。

杉板DIY塗装にかかった費用

参考までに、どぶ漬け両面塗りにした場合の塗装費用を計算してみます。

ウッドロングエコ100gの塗料を使って、長さ4m×幅15cm×厚15mmの板が約80枚分、両面を塗れました。両面の塗装面積を計算すると約106㎡。塗料の購入費が約2万円ですので、塗料費20,000円÷106㎡=188.6円/㎡となります。カタログには100gの塗料、刷毛2回塗りで約70~90㎡塗装可能と表示があるので、両面106㎡塗れたとすると、カタログ値よりも約15%増しの面積が塗装できたことになり、かなり効率よく塗れたことになります。

今回塗装した杉材は、表面仕上げが荒木だったため、削った後の木くずや木粉が表面についていました。その粉を塗装をする前に乾いたぞうきんで拭き取って落としたのが功を奏したのかもしれません。また当日は気温が低めで、天気は雨模様だったため、塗料の蒸発量が少ないかったことも影響しているのかもしれません。

塗装屋さんにお願いした場合の塗装費用と比較してみます。見積もり時の塗装工事は、片面塗り112㎡×1,800円/㎡=201,600円(税抜き)→消費税込み221,760円(塗装手間+塗料代)でした。この金額は片面塗りですので、今回のように両面塗りの場合、倍の443,520円掛かることになります。

今回、実際に掛かった費用は、塗料代だけですと20,000円×3袋=60,000円。その他の材料費を含めても、7万円弱となります。つまり、DIY工事を行うことで、373,520円のコストダウンになった計算になります。この計算には自分の人件費(自分の働いた時間)を計上していないので、そのままの金額が全部浮いた!とはなりませんが、かなり大きな金額を抑えることができたことになります。

建設現場は、プロの職人さんが関わっているので、素人では建設工事に参加しにくい印象があります。しかし、この外壁杉板DIY塗装は、他の工事工程とは切り離されていますし、やる気さえあれば比較的に簡単にできる作業です。自分で手をかけた家は、きっと満足感が違うはず。家づくりに参加したいと思う方は、ぜひ試してみると良いと思います。

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤改良の工法について

「上越滝寺の店舗併用住宅」地盤調査を行った結果、軟弱地盤(沈下の可能性あり)との判定が出てしまいました。(実はもう少し良い結果が出るのではないかと、淡い期待を抱いていたのですが。。。)土地を購入する際に、ある程度の地盤強度が分かっていれば良いのですが、たいてい土地の購入時には、地盤調査をしてあることは無く、地盤強度が不明ということが大半です。予想していたよりも地盤が軟弱であれば、後々、地盤改良費用が増えてしまいますし、地盤改良費を多く見込みすぎては、借入額が増え、事業自体が成り立たなくなってしまいます。土地の購入時に、地盤改良予算をどこまで見込んでおくのか、毎回のことながら悩ましい問題です。

周辺の地盤調査データが得られれば、ベストではあるのですが、そう簡単にデータを得られることはないでしょう。もし近くで施工している現場があったらその物件が地盤改良を行ったかどうかを見て、地盤改良が必要かどうかのおおよその検討がつきます。また、もし聞けるのであれば、お隣さんに地盤改良を行ったかどうか、聞いてみるのも良いかもしれません。それらが叶わなければ、周辺の道路や塀にひび割れがあるかどうか、塀や電柱が傾いていないか、などの周辺情報から軟弱地盤かどうかを予測するしかありません。

地盤調査の結果を踏まえ、地盤改良を行うことにしました。今回、地盤改良に採用した工法は「環境パイルS工法」という、木杭による地盤改良工法。(写真に写っている鉄筋の下に埋まっている木が、改良杭です。)私の事務所では、近年、この改良方法を採用することが増えています。

「環境パイル工法」改良工事費用は、他の改良工法に比べて1~2割高めではあります。ただし、建物解体時のコストまで含めてトータルに考えると、コストメリットがあると判断しています。なぜなら、この木杭工法であれば、比較的簡易に杭を引き抜くことが可能だからです。つまり、杭の撤去費用が安い。セメントなどを使った改良方法ですと、杭打設時の工事費用は比較的安くできるのですが、解体しようとすると、解体費用が大きくかかってきます。(場合によっては、解体不能という場合もあります。)

新築の際に、そこまで考える方は少ないのかもしれませんが、もし仮に建物を解体し、最後に更地にして土地を売る場合、改良杭が撤去していなければ、土地の値段は下がってしまいます。(改良杭の撤去費分、土地代が下がってしまいます)ですので、建設~解体に至るまでをトータルに考えれば、全体費用が抑えられ、むしろ割安ではないかと。目先の建設費だけでなく、もっと長いスパンで考えていく事が必要です。

「岩室の平屋」合板パネルによる耐震工法

「岩室の平屋」建て方に続いて、現在、外壁に下地合板を貼る工事が進んでます。なぜ外壁に合板を貼るかというと、建物に耐震力を持たせるためです。今回の建物は、柱・梁を組んで作る在来木造と呼ばれる昔ながらの木造工法を採用していのですが、「筋交い」だけでなく、外壁に「合板パネル」を貼る事で、耐震力を持たせています。最近では合板パネルの種類にも、各メーカーとも様々な製品が出てきていますが、施工費を考慮し、もっとも価格の安いラーチ合板を採用しました。(写真で茶色に見えている壁に張られた合板)

合板パネルで耐震力を持たせる工法といえば、2×4(ツーバイフォー)工法が知られていますが、今回採用した工法は、ツーバイフォー工法の良いところを在来木造に取り入れた、良いとこどりのハイブリッドな工法となっています。線で支える筋交いに比べて、面で支える合板パネルは、建物に掛かる地震力を分散させて伝えることができ、強い揺れにも粘り強く対抗できる利点があります。

写真に見えている斜めにかかっている部材が「筋交い」です。どしんっといった急激な地震力が筋交いに加わると、その力は筋交いに集中的に加わり、筋交いが抵抗できずに折れてしまうケースが阪神大震災などの大地震で多く見られました。しかし、今回の建物には筋交いを併用しています。なぜわざわざそのような地震に弱い部材を採用するのかというと、コストを抑えつつ、建物の耐震バランスを取るため。昔から使われてる筋交いは工法も比較的簡易で、合板パネルを貼るよりもコストを抑えることができるので。

基本的に合板パネルは、外壁に張られますが、外壁にはいくつもの窓が設けられており、場所によっては合板を貼れない個所がでてきます。合板が貼れない部分があると、建物の重心が偏り、その部分に揺れが集中してしまいます。一般的に住宅は、採光のために南側に大きな窓が設けられることが多いので、南側の耐震性が弱くなる傾向があります。そのような場所に補完的に筋交いを設け、全体のバランスをとっているのです。考え方としては、メインで外壁の合板パネルで力を支え、サブで筋交いを使っているイメージです。

とは言え、建物に加わった地震力は単純に合板パネルだけでもっている訳ではありません。実際には、柱や梁などの線材を介して地震力を基礎へと伝えていくため、柱・梁の接合部分の取合いや金物の選定がきちんとしていなければ、地震に耐えることができません。そのため、接合金物の許容耐力や留付け釘の種類や間隔などを、現場で一つ一つ間違いが無いか確認していくことが重要です。耐震の合板は貼ってあるけど、実際には力が伝わってない、では意味がありませんので。