断熱等級7の年間冷暖房光熱費を計算する

断熱等級7の冷暖房費は年間いくら掛かるのか?を計算シュミレーションしてみます。例に取り上げる物件は「越後曽根の平屋」です。検討を行った住宅の条件および仕様は以下の通りです。(詳しい断熱仕様はこちらの記事で解説しています)

  • 木造平屋 床面積98.54㎡
  • 建設地 新潟市(断熱地域区分5)
  • 平均熱貫流率Ua値=0.25W/㎡K(断熱等級7)
  • 天井断熱:セルロースファイバーt330
  • 外壁断熱:壁充填グラスウールt105+付加断熱フェノールフォームt50
  • 基礎断熱:フェノールフォームt100
  • 冷暖房器具:エアコン(暖房効率:3.6/冷房効率:2.8)
  • 換気扇:第一種熱交換換気扇

建物の外皮断熱性能と冷暖房エネルギー消費量を計算した計算ソフトは、新木造住宅技術研究協議会(通称:新住協)が提供している「QPEX(キューペックス)」です。建物の各部面積と断熱仕様、設置する冷暖房機器の能力から、年間の冷暖費を算出することができます。

設計時には、建物をどの程度の断熱等級ランクにするかを決めなければなりませんが、何を手掛かりにすればよいのか明確ではありません。目安として年間の冷暖房料金を手掛かりにするのが最も分かり易いと思われます。どれくらいの年間冷暖房料金が適度なのか、建設時に掛ける断熱工事費用と照らし合わせて検討することが大事です。冷暖房費だけを気にして、建設費用が大幅に上がってしまえば、本末転倒ですので。

ここでは一つの例を挙げますので、断熱性能の検討の際の参考にしてください。

QPEXの計算シュミレーション

上の計算シートがQPEXで計算した断熱等級7の平屋住宅の断熱性能です。右下に、電力単価40円/kWで計算した一年間の冷暖房に掛かる電力料金が表示されています。暖房費24,840円+冷房費17,078円=合計41,918円が1年で掛かる冷暖房電力料金です。(この費用の中には冷蔵庫・テレビなどの家電や照明に使われる電力は算入されていませんので、ご注意ください。)

なお、こちらの冷暖房費は、24時間冷暖房を稼働した場合の電力料金を示しています。冷房に対して、暖房の方が電力料金が高くなっていますが、これは暖房期間が長いことと、暖房時の方が外気温と室温の差が大きいことが影響しています。

右の中間付近の棒グラフが、一年間を通したの暖房および冷房の負荷です。この建物が建つ新潟市では、11月~4月までは暖房、7月~9月までは冷房を運用する期間であることが読み取れます。冷房の棒グラフには、濃い青と薄い青の表記がありますが、濃い方の棒グラフは窓を開け閉めせずに過ごす場合の冷房負荷です。気候が温暖な5月、6月、10月は適切に窓を開けて換気すれば、薄い青グラフのように冷房エネルギーを使うことなく過ごせますので、QPEXの計算では適切に窓換気を行う際の冷房エネルギー消費量が計算されています。


こちらの表が冷暖房設備の必要能力を計算したものです。最も寒い日の最低気温から室内で発生する熱を差し引いた数値が、必要暖房能力になります。こちらの住宅では、必要暖房能力は1692.9W、仮に室内発生熱を考慮しない場合には2151.2Wの暖房能力が必要となります。

最も暑い日(外気温33.9度)の冷房時に必要な冷房機器の能力は、2456.6Wと表示されていますが、掛け率×0.8となっていますので、余裕をもって0.8掛ける前の3070.8Wを見込んでおくことがベターです。

この計算書から必要な冷暖房エアコンは、暖房能力1.7kW以上、冷房能力3.1kW以上ということが分かります。この数値からエアコンを選定すると、およそ2.8kWの能力の機種になります。畳数表示ですと10畳用エアコン一台で家一軒まるごと冷暖房できる計算となります。ポイントは、能力の小さなエアコンを設置すれば済むことで、エアコンの導入費用が非常に安く済むことです。断熱仕様を上げることで建設費は上がりますが、相対的にエアコンの購入費は下がります。

付加断熱無しで計算してみる

シュミレーション検討のため、上記の建物の外壁の付加断熱を取りやめてみます。どのように数値が変わるでしょうか。

平均熱貫流率Ua値が0.25→0.30W/㎡Kに低下し、断熱性能は等級7→等級6とワンランク下がりました。年間の冷暖房費は51,459円、つまり、差額9,541円上がりました。年差額約1万円ですので、20年間この家に住み続けた場合、冷暖房費で20万円の差が生まれることになります。

この20万円差をどう考えるか。付加断熱を追加するのに20万円以上の工事費が掛かっていますので、単純に計算して20年では採算がとれません。が、付加断熱の有る/無しで外壁から感じる冷えや暑さは、明らかに異なります。(QPEXでは放射温度は計算に参入されませんので、数字には表れなくとも、付加断熱の有り/無しは現実的には効果があるはずです。)採算性でなく、毎日の暮らしの中の体感差を価値あるものと考えるか、否か。そこが付加断熱を導入するか否かの判断の目安になってきます。

とはいえ、このように断熱計算シュミレーションを行うことで初めてこのように詳細検討が出来ますので、建物の仕様検討の際には断熱計算を行うことをおススメいたします。

Ua0.43断熱等級6)の平屋住宅の実際の冷暖房光熱費については、こちらの記事を参照ください。