高断熱(省エネ)住宅の毎月の光熱費はいくらか?2022~2023年版

障子と雪
高断熱住宅の毎月の光熱費を公開します。近年、高断熱住宅が作られる割合が多くなってきましたが、毎月の光熱費の実測データは個人情報のために公表されていることは多くありません。これから高断熱住宅を建てたいと思っている方のために、一年間でどのくらいの光熱費が掛かったかを公開したいと思います。こちらの住宅は自邸ですので、プライバシーを気にすることなく、そのまま公開しています。

今回の記事のデータは2022年7月~2023年6月までの一年間のデータです。前年2021年のデータは、こちらに公開していますので参考にしてください。

また実測データと合わせて、省エネ計算ソフトQPEXで計算した予想冷暖房費とどのくらいの誤差があるかを比べてみます。

電気を使用する建物の条件

電気を使用している建物の条件は、以下の通りです。

立地エリア:新潟県新潟市(地域区分:5)
断熱性能:Ua値0.43(断熱等級6/heat20 G1相当)
冷暖房器具:エアコン×2台(床下冷暖房)換気:第3種(熱交換無し)
規模:木造平屋建て
延べ床面積:85.29㎡(25.80坪)
家族構成:夫婦2人
利用用途:住宅+事務所(ほぼ一日中家で仕事)
使用家電:照明器具(LED照明)、パソコン、スマホ、モニタ、冷暖房エアコン、冷蔵庫、換気扇等
(ふろ給湯と調理コンロはガス設備による)
電力供給会社:Looopでんき

1年間の毎月の電気料金

1年間の電気使用量と電気料金 ( )内はkW当たりの電気単価です。

2022年 7月電気使用量108kWh/月 3,899円(36.10円/kW)
2022年 8月電気使用量152kWh/月 5,670円(37.30円/kW)
2022年 9月電気使用量129kWh/月 5,046円(39.11円/kW)
2022年10月電気使用量 73kWh/月 3,317円(45.43円/kW)
2022年11月電気使用量 63kWh/月 2,944円(46.73円/kW)
2022年12月電気使用量155kWh/月 7,231円(46.65円/kW)
2023年 1月電気使用量473kWh/月 24,365円(51.51円/kW)
2023年 2月電気使用量420kWh/月 15,617円(37.18円/kW)
2023年 3月電気使用量231kWh/月 7,020円(30.38円/kW)
2023年 4月電気使用量127kWh/月 3,126円(24.61円/kW)
2023年 5月電気使用量 75kWh/月 1,806円(24.08円/kW)
2023年 6月電気使用量 65kWh/月 1,600円(24.61円/kW)

1年間合計 電気使用量 2,071kWh/年 81,641円(平均39.42円/kW)

前年と同様、冬季のエアコン暖房の使用によって、12月~3月までの電気使用量が増えています。特に気温の低い1月、2月は暖房による電気使用料が大幅に増加しています。夏季にはエアコン冷房を行っていますが、思っていたほど電力使用量は増えていません。このデータから、ここ新潟では、冷房期間よりも暖房期間の電力使用量を抑えることが省エネに繋がることが分かります。

電力料金の平均を前年と比べてみると(2021年)30.90円/kW→(2022年)39.42円/kWと27%値上げしています。同様に1年の電力料金は(2021年)62,418円→(2022年)81,641円と、30%アップしています。

市場価格連動型で電力契約しているので、市場価格が上がれば、それに比例して電力単価が上がってきます。利用明細を見ると最も安い5月はkW当たり12.85円、最も高い1月はkW当たり32.02円と3倍近く電力料金が違います。2023年2月以降、政府補助政策として7円/kWが補助されていますので、補助期限が切れれば、電力量は更に上がることが予想されます。

1年間の毎月のガス料金

1年間毎月のガス使用料は以下です。この住宅でガスを使用するのは、給湯とキッチン調理です。

2022年 7月ガス使用料 3,735円
2022年 8月ガス使用料 4,093円
2022年 9月ガス使用料 3,379円
2022年10月ガス使用料 3,664円
2022年11月ガス使用料 4,368円
2022年12月ガス使用料 5,079円
2023年 1月ガス使用料 6,228円
2023年 2月ガス使用料 5,530円
2023年 3月ガス使用料 3,725円
2023年 4月ガス使用料 4,655円
2023年 5月ガス使用料 3,660円
2023年 6月ガス使用料 3,510円

1年間ガス使用料合計 51,626円

前年(2021年)47,308円でしたので、約9%アップしています。毎月のガス使用量は前年とそれほど違わないので、ガス料金の値上げが影響しているものと考えられます。冬季の気温の低い時期には、給湯効率が落ち、やや割高になりますが、電気料と比べてそれほど大きな差は出ていません。

電気とガス料金を合わせた光熱費合計

以下が電気とガスを合計した毎月の光熱費です。

2022年 7月電気+ガス使用料 7,634円
2022年 8月電気+ガス使用料 9,763円
2022年 9月電気+ガス使用料 8,425円
2022年10月電気+ガス使用料 6,981円
2022年11月電気+ガス使用料 7,312円
2022年12月電気+ガス使用料 12,310円
2023年 1月電気+ガス使用料 30,593円
2023年 2月電気+ガス使用料 21,147円
2023年 3月電気+ガス使用料 10,745円
2023年 4月電気+ガス使用料 7,781円
2023年 5月電気+ガス使用料 5,466円
2023年 6月電気+ガス使用料 5,110円

1年間の電気+ガス使用料合計 133,267円

前年2021年が合計112,000円でしたので、19%アップ(21,267円アップ)しています。1年で光熱費が約2割上がるというのは、もろに家計を圧迫する数字です。高断熱住宅でさえ、この金額ですので、断熱性能の低い住宅では光熱費は更に大きくなっていることが予想されます。

またデータを取った住宅では、電子レンジやドライヤー、大画面テレビなどの消費電力の大きな家電を使用していませんので、光熱費が控えめな方だと思います。家電が多い家や家族の多い家は、更に光熱費は上がることが予想されます。

光熱費を抑えるには何が有効か?

障子戸と雪景色
データからは光熱費を抑えるには、冬場の暖房電力量をいかに抑えるかが大事だということが読み取れます。電力料金の安い時間帯に暖房を使う方法もありますが、料金が高い時間に暖房を我慢して過ごすのでは高断熱住宅を建てる意義が薄れてしまいます。

基本的には、まずは断熱性能を上げること、が大事です。断熱性能を上げれば、冬だけでなく夏にも省エネ効果を発揮することができます。熱の逃げやすい窓に障子戸やハニカムスクリーンなどの断熱効果を上げる装置を設けることも有効です。また、冬でも日照が期待できる地域であれば、積極的に太陽光を室内に取り入れるパッシブな設計を心掛けることを考慮しましょう。

エアコンを選ぶ際には、消費エネルギー効率の高い機種を選ぶことも大事です。エアコンはヒートポンプという方式を使っているため、例えば1000Wの電気を使って、実際の出力を3000Wにすることができます。この場合のエネルギー消費効率は「3」になります。より高い効率の機種を選ぶことで、電力使用量を下げることが可能になります。

QPEXのシュミレーションデータと比較する

岩室の平屋QPEX計算結果
上がこの家のQPEXシュミレーションデータです。QPEXとは、建物の断熱性能やエネルギー消費量を計算するソフトです。右下に冷暖房に掛かる電力料が表示されています。電力単価は39円/kWで計算しています。冬季室温設定20℃、夏季室温設定27℃にした場合の冷暖房に必要な一年間の電気料金60,833円が表示されています。あくまで冷暖房に必要な電力のみで、冷蔵庫や電子レンジ、照明などの電力使用料は含まれていませんので、お間違えなく。

この家の冷暖房を使っていない月の電力使用料は、75kWh=1,806円/月でしたので、それを家電や照明などで使っている冷暖房以外の電力と考えて、1年(12か月)分に換算すると、1,806円×12か月=21,672円/年。QPEXのシュミレーション冷暖房電気料と足すと、21,672円+60,833円=82,505円/年となります。

実際に支払った電力料金は81,641円ですので、誤差864円となり、QPEXでかなり正確に計算されていることが分かります。

QPEX月別エネルギー消費量岩室の平屋

こちらは月別の冷暖房エネルギー消費量のQPEXシュミレーションです。冬は1月の暖房エネルギー、夏は8月の冷房エネルギーが大きく、夏に比べて冬のエネルギー消費量が2倍近く大きいと計算されています。実際の電力使用量と照らし合わせてみると、ややズレはあるものの、ほぼシュミレーションした通りとなっています。

冬場の暖房時の負荷が高く、暖房期間が長いことが読み取れますので、暖房エネルギー効率の良いエアコンを選ぶことが大事だということが分かります。また明確に冷暖房負荷が把握できるので、無駄にオーバースペックなエアコンを導入してコスト増になることを防ぐことができます。

このように、計画時点で冷暖房エネルギーを掴めるのが、QPEXシュミレーションの利点です。窓の大きさや仕様を変えたり、庇の長さを変えたり、とさまざまな調整を設計プランニングを行う時点でシュミレーションし、より有効な計画を練っていくことをおススメします。