年: 2022年

付加断熱でどれくらい断熱性能が上がるのか

付加断熱施工後
「上越滝寺の店舗併用住宅」では、外壁の断熱性能を上げるため、付加断熱を採用しています。写真の左側外壁が付加断熱施工後、右側外壁は施工前の状態です。(タイベックと印刷してある白いシートの裏側に隠れているため、断熱材自体は写真に写っていません。)右手の横になった材木の間に付加断熱材をはめ込んでいきます。付加断熱材にはグラスウールを採用しているため、断熱材をはめ込み後、断熱材が濡れないよう、直ぐに防湿シートを張り付けていきます。

付加断熱スケッチ

外壁の内部に入れ込む充填断熱材が厚さ105ミリ。それに加えて、付加断熱材が45ミリですので、合わせて断熱材の厚さは150ミリになります。通常の壁内の充填断熱だけの壁と熱貫流率を比べてみると、

  • 充填断熱105ミリのみ → 熱貫流率 0.41 W/m²・K
  • 充填断熱105ミリ+付加断熱45ミリ → 熱貫流率 0.28 W/m²・K

と、大きな違いがでます。付加断熱の方が単純に断熱材の厚みが増していることもありますが、計算結果を見ると、柱などによる熱橋が減ることが有利に働いていることが読み取れます。

熱貫流率とは、外壁を通過する熱量のことで、数値が小さいほど通過する熱の量が小さく、断熱性能が高いことを示します。両者の数値を比べてみると、付加断熱の方が1.4倍、断熱性能が高い。この数字の差の意味を一言で言うなら、冬場なら1時間あたりに内壁の温度が、充填断熱のみなら1.4度下がるのに対し、付加断熱の方は1度下がるということです。室内の温度を一定に保つためには、壁から逃げる熱エネルギー分だけ暖房で供給する必要があるのですが、充填断熱のみの方は暖房エネルギーが1.4倍必要になります。

住宅の場合、全体の表皮面積に対する外壁の比率が高いため、外壁に付加断熱を加える効果は大きいと言えます。ただし、外壁面積が大きいということで、逆に施工面積が多く、建設費が上がってしまうマイナス面もあります。

新住協(新木造住宅技術研究協議会)の登録会員になりました

新住協QPEX

昨年度より、新住協(新木造住宅技術研究協議会)の登録会員になりました。

これまでの断熱等級が見直しとなり、今までの断熱等級4に加え、上位レベルの断熱等級5が設定されました。
また更に上位等級の6、7の設置検討もされており、断熱性能のレベルアップは加速していくものと考えられます。そのような社会の流れを鑑み、当事務所も高断熱・高気密住の普及を目指して、新住協へ事務所登録しました。

本年より、当事務所で設計する物件は全て、新住協の提供する計算ソフト「QPEX」で断熱性能計算を行い、平均熱貫流率Ua値や冷暖房エネルギー値などを提示します。また計算データを基に詳細な検討を行い、可能な限り断熱性能の向上を図りたいと考えています。

昨年2021年中には2棟、HEAT20 G1グレードの設計を行い、実際に住宅が竣工いたしました。その現場監理の経験を活かし、今後も高断熱・高気密住宅の棟数を増やしていきたいと思います。高断熱・高気密住宅に興味のある方は、お気軽に問い合わせください。

気密測定試験について

気密測定試験

「上越滝寺の店舗併用住宅」では、気密測定試験を行いました。気密測定は一般的に、工事の途中段階(気密工事完了後)と建物完成時に行います。

工事の途中で行う場合、仮にどこかに穴が開いていたとしても、その場所を特定することができ、直ぐに手直し対処ができるので、気密性を確実にするのにとても有効です。建物完成時に行う気密測定は、最終的な気密値がいくつなのか、確定するために行う試験です。最終的には外壁に配管のために穴を開けたり、工事途中とは気密条件が変わるので、最終的な気密値を知るため、完成時の測定を行います。

ただし、気密測定には1回ごとに測定費用(およそ5万円/回)が掛かるので、予算上、もしどちらか一方の試験だけ、という場合には工事途中で測定を行うと良いでしょう。(その理由は以下に書きます)

気密測定値について

測定値は、C値(相当隙間面積)で表されます。床面積1㎡当たりの隙間面積(cm2)を現したもので、高気密住宅ですと、C値=1以下が最低基準とされています。数値が小さいほど、隙間が少ない目安になり、より高気密であると言えます。

気密測定試験

気密測定は、専門の測定業者が行います。送風機で室内の空気を外へ掃き出し、圧力差を測定することで隙間面積を判定します。もし測定時に、どこかに隙間があれば、外部から風がヒューヒューと入ってきますので、明らかにそこに隙間があることが分かります。もし、隙間の場所が特定できた場合には、直ぐに手直し気密処理を行うことができます。

上記の写真は、どこかに隙間がないか、探している図です。建物の全体をぐるぐると回り、部分部分に手をかざして風が漏れていないか、入念に確認していきます。

気密測定試験

上記写真が、測定結果です。右上の数値、C値=0.5(cm2/㎡)となっています。相当隙間面積が65cm2ですので、建物全体で約6.5cm×10cmの隙間が存在することになります。はがきが14.8cm×10cmの大きさですので、建物全体の隙間を足して、はがきよりも小さな面積でした。目標C値が1以下でしたので、十分、数字を満たしていることが確認できました。

今回採用した断熱材は、壁・天井ともグラウウール断熱材で、一般的には気密性が確保しにくいと言われています。しかし注意を怠らず、入念に施工を行うことで、気密性を確保できることが証明できました。

気密性能が高いと、どんなメリットがあるのか

気密性能が高ければ、つまり、隙間が少なければ、暖めた(夏であれば冷やした)室内の空気が外へ逃げる量が減ります。逃げる量が減れば、冷暖房効率が上がり、省エネになります。特に冬場は隙間が多いと、冷たい冷気が足元から入ってきますので、冷えを感じやすくなります。

また隙間が多い場合、換気扇による風の流れをうまく作ることができず、室内の空気が滞留しやすくなってしまいます。

気密測定はやり直しできるのか?

もし思うような気密測定結果が出なかった場合は、どうなるのか?再度、測定はしてもらえるのか?それとも測定費用が余計に掛かってしまうのか?

答えを先に書きますが、その測定最中であれば、測定のし直しは可能です。実際に、今回の測定では最初、全く思うような数字が出ず、おかしいということになって、どこかに穴が開いてないか探し回ることになりました。(最終的には、換気扇の穴を一箇所、塞ぎ忘れていたことが判明し、直ぐに対処できました。)

気密測定試験

数値が思うように出なかった場合、一箇所にまとまって穴が開いているのか、それもと分散して小さな穴が開いているのか、その傾向が測定機に表示されます。もしまとまって穴が開いている場合、今回のように、どこかに塞ぎ忘れがある可能性があります。気密測定は、一発勝負ではありません。施工上のミスが無いかを確認し、気密性を確実にするために行うものです。よって、その場で何度も測定し直すことは可能です。(ただし、手直しに時間がかかり、後日改めて測定しなければならない場合には、再度、測定費用が掛かります)

気密試験を行うメリット

気密測定試験を行う利点は、大きく以下の3点です。

  • 隙間などがあった場合に直ぐに手直しができ、気密性を確実なものにすることができる。
  • 気密性能をきちんと数値で示せる。(感覚的なものでなく、きちんとした根拠ある数字で示せる)
  • 気密測定を行うことで、現場管理がきちんとする。(逆に気密測定を行わないと、現場での管理が曖昧になってしまう)

気密工事に関して施工実績と経験があり、気密測定を行わなくとも、きちんとした気密性能を実現することができる施工会社は、現状ではまだ多くはありません。建物の気密性を担保するためにも、きちんと気密測定を行うことは有効です。今後、私の事務所では、工事途中の気密試験を必須条件にしていきたいと思います。