高断熱住宅にするには、いくら費用が掛かるのか?

「上越滝寺の店舗併用住宅」では、外皮平均熱貫流率Ua値を0.39と設定して、断熱材の仕様を決定しています。家を建てるに際して、どの程度の断熱性能とするのが適切か、きっと迷うことでしょう。設計を専門にしている私でさえ、一体どこまでの断熱性能が適切な数値なのか、迷ってしまうことがあります。当然、技術的に断熱性能を上げていくことは可能ですが、性能が上がれば上がるほど、建設費も比例して上がってしまいます。

果たして、どの程度の断熱性能が適切なのか。同じ室温でも寒い・暖かいなど、そこで暮らす人の感覚にも左右されてしまうので、基準は必ずしも一定ではありません。とはいっても設計者は専門家である以上、きちんと目標数字を決め、目標に基づいて断熱仕様を決めなければなりません。設計者が何を目安に断熱仕様を決めているのか、断熱材には何を使っているのか、性能を上げるにはいくら掛かるのか、を紹介したいと思います。

住宅の断熱性能の目安はどう決まっているのか?

上越滝寺の家
建物の断熱性能は、現行では、その地域ごとの平均熱貫流率(Ua値)を目安に判断することになっています。ちなみに「上越滝寺の店舗併用住宅」の平均熱貫流率Ua値は0.39ですが、その数字がどの程度の水準かと言うと、新潟県上越市(地域区分5)では、以下のようにHEAT20 G1クラスを余裕で満たし、HEAT20 G2までは少し届かない程度の断熱性能となっています。(G1とG2の中間あたり、HEAT G1.5程度とイメージすると良いかも分かりやすいかもしれません)

上越市(地域区分5)のUa値水準(下にいくほど断熱性能が上がります)
・Ua値0.87以下 平成28年度基準相当(断熱等級4)
・Ua値0.60以下 ZEH基準相当(断熱等級5)
・Ua値0.48以下 HAET20 G1基準(←この数字は余裕でクリア)
・Ua値0.34以下 HAET20 G2基準(←ここまでは届かず)

一般的に考えて2021年現在、「Ua値0.60以下」をクリアすることが、高断熱住宅と呼ぶための最低限必要な断熱性能と思われます。また高断熱住宅とキッパリと言い切るなら、さらに上の「Ua値0.48以下」を目指したいところです。

専門家でない限り、HEAT20 G1水準と言われても具体的にどの程度の断熱性能か、イメージしにくいかと思います。現実的な体感温度として伝えるなら、冬場、前夜の23時に暖房を切って就寝し「最も温度の下がる北側の非暖房ゾーンで、暖房をつける前の早朝5時頃に体感温度10度を下回らない」という水準になります。簡単に言い切ってしまうなら、夜間に暖房を止めても冬の一番寒い時間にどの部屋でも10度を下回らない、という水準になります。

なお、HEAT20 G2の場合は、同様の条件で「早朝に13度を下回らない」となります。ここで注意すべき点は、暖房を行わない最も寒い部屋ですので、通常なら北側の廊下やトイレなどの温度を指すことになります。(ですので、前日に暖房を行っていたリビングなどの部屋は体感温度10度(または13度)よりもずっと暖かい、という事ですので、お間違いなく。)

改めて表にすると、上越市(地域区分5)で、一年で最も寒い時期に(2月頃の早朝、外気温-2度くらいの時間に)最も寒い部屋で
・Ua値0.87 平成28年度基準相当→8度を下回らない
・Ua値0.60 ZEH基準相当→9度を下回らない
・Ua値0.48 HAET20 G1基準→10度を下回らない
・Ua値0.34 HAET20 G2基準→13度を下回らない
が、おおよその体感温度の目安と考えてもらえば間違いはないかと思います。

この温度感を目安に、建物の断熱性能を決めていくようにします。当然、人によって寒さを感じる程度が異なりますので、その方の体感に応じて目標値を調整することも大事です。また、人は歳をとるに従って、寒さを感じやすくなるため、今現在だけでなく、10年先のことまで考えて断熱性能を決めていくことをおススメします。

断熱材には何を使うのが有効か?

高性能グラスウール施工

断熱性能を実現するために、屋根、外壁、床下に性能の高い断熱材を入れ込み、室内の熱が外部へ流れるのを防ぐ必要があります。当然のことですが、断熱性能を上げるに従って、建設費用も上がってきます。建て主としては、断熱性能を上げつつ、コストも抑えたい、というのが心情でしょう。つまりコストパフォーマンスの高い断熱材を使いたい、という要望に応える必要が出てきます。

私の設計した建物では、上記の要望に応えるために、コスト当たりの断熱性能が最も高い製品である高性能グラスウール断熱材を使うことにしています。他にも断熱性能のもっと高い製品もあるのですが、日本国内どこでも直ぐに手に入るグラスウールに比べるとまだまだ値段が高い印象があります。また、グラスウールは昔から大工さんが使ってきた製品でもあるため、施工性が高く、導入に当たって施工コストを抑える事ができるというもの大きな理由です。

ただし、グラスウール断熱材にもデメリットがあります。施工方法を間違えれば、すぐに性能低下へとつながりますし、湿気に弱いため材料保管や施工には細心の注意を払う必要があります。

高断熱住宅にかかる費用はいくらか?

断熱工事

例えば、木造2階建て延床面積35坪の平成28年度基準(断熱等級4)の住宅を、HEAT20 G1クラスまで断熱性能をあげるには、いくら費用が割増になるのか?を計算してみようと思います。

この規模のH28年度基準の住宅ですと、断熱材全ての材料費は40万円程度になります。その断熱材をHEAT20 G1を満たす断熱材へ変えた場合、およそ断熱材の材料費が30万円アップします。また外壁付加断熱が必要となるためその取り付け工事費で20万円アップ。更に気密処理などで5万円増。その他、サッシを樹脂複合から樹脂サッシに仕様アップして30万円増。ちなみに天井や壁、床に入れ込む断熱工事は断熱材の仕様が多少変わったとしても施工手間は一緒なので増額無しの0円。以上、合計すると85万円の割り増しになります。

・断熱材仕様アップ+30万円

・外壁付加断熱+20万円

・気密工事+5万円

・樹脂サッシに仕様アップ+30万円

上記合計=85万円

割り増した金額を坪数で割れば、85万÷35坪=2.4万円/坪の増額になります。仮に建設坪単価が85万円/坪だとすれば、延床面積を一坪小さくすれば、まかなえる金額です。建物を少しだけ小さくして、その分の差額で断熱性能をアップすると考えるのはどうでしょう。コンパクトにした分で、夏涼しく、冬暖かく。そんな価値観があっても良いと思います。