付加断熱でどれくらい断熱性能が上がるのか

付加断熱施工後

「上越滝寺の店舗併用住宅」では、外壁の断熱性能を上げるため、付加断熱を採用しています。写真の左側外壁が付加断熱施工後、右側外壁は施工前の状態です。(タイベックと印刷してある白いシートの裏側に隠れているため、断熱材自体は写真に写っていません。)右手の横になった材木の間に付加断熱材をはめ込んでいきます。付加断熱材にはグラスウールを採用しているため、断熱材をはめ込み後、断熱材が濡れないよう、直ぐに防湿シートを張り付けていきます。

「付加断熱あり」と「充填断熱のみ」との断熱性能の違い

付加断熱スケッチ

外壁の内部に入れ込む充填断熱材が厚さ105ミリ。それに加えて付加断熱材が45ミリですので、合わせて断熱材の厚さは150ミリになります。一般的な壁内充填断熱だけの壁と熱貫流率を比べてみると、

  • 充填断熱105ミリのみ → 熱貫流率 0.41 W/m²・K
  • 充填断熱105ミリ+付加断熱45ミリ → 熱貫流率 0.28 W/m²・K

と、大きな違いがでます。付加断熱の方が単純に断熱材の厚みが増していることもありますが、計算結果を見ると、柱などによる熱橋(断熱材の欠損)が減ることが有利に働いていることが読み取れます。

熱貫流率をどう読み取ればよいのか

熱貫流率とは、外壁を通過する熱量のことで、数値が小さいほど通過する熱の量が小さく、断熱性能が高いことを示します。両者の数値を比べてみると、付加断熱の方が1.4倍、断熱性能が高い。この数字の差は、冬場なら1時間あたりに室内側の温度が、充填断熱のみなら1.4度下がるのに対し、付加断熱の方は1度下がるということです。室内の温度を一定に保つためには、外壁から逃げる熱エネルギー分だけ暖房で供給する必要があるのですが、充填断熱のみの方は暖房エネルギーが1.4倍必要になることを示しています。

参考のため、どれくらいのエネルギーが必要になるのかを簡単に手計算してみます。
(以下は技術的な話なので、読み飛ばしてもらっても構いません。)
計算条件を「外壁量100㎡、室内温20℃、室外温0℃の場合 → 室内外温度差20℃」として

  • 充填断熱のみ=熱貫流率0.41×温度差20℃×外壁面積100㎡=820 W・K
  • 付加断熱あり=熱貫流率0.28×温度差20℃×外壁面積100㎡=560 W・K

20℃の室温を保つには、それぞれ820Wh、560Whの暖房器具で室内を加熱し続ける必要があります。この数字は1時間当たりの必要量ですので、毎日15時間使い続けるなら、それぞれ820W×15=12.3kW、560W×15=8.4kW(4割増し)、その差3.9kW/日となります。(※この数字は、外壁だけを計算しています。その他の部分からは一切、熱が逃げない仮定の下での計算ですので、ご注意ください。)

住宅規模の場合、全体の表皮面積に対する外壁の割合が高いため、外壁に付加断熱を加える効果は大きく働きます。ただ、外壁面積が大きいことは、逆に施工面積が多く、仕様アップによる建設費の上昇につながることも同時に意味します。付加断熱を採用するか否かは、コストバランスを考慮して決定することが大事です。冷暖房費を節約するために膨大な建設費を掛けてしまっては、本末転倒ですので。