HEAT20のシュミレーションで室温を検証してみる

氷点下の朝の風景

2023年2月、日本全国で10年の一度の寒波が訪れています。ここ新潟市では、昨日の夕方の時点で外気温はマイナス5度。深夜にはマイナス6度を下回る予報が出ていました。朝起きると、窓ガラス面には粉雪が張りつき、外の樹々は雪が積もったまま凍っていました。

岩室の平屋」は、外皮平均熱貫流率=Ua値を0.43です。このUa値が建物の断熱性能を示すもので、数値が小さいほど断熱性能が高いことを表します。Ua値=0.43は、断熱等級でいえば、HEAT 20 G1等級。この数値は、どのような体感温度の家になるでしょうか?

HEAT 20(一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)では、ただ単純に目標水準Ua値を示すのではなく、実際の冬場の最低体感室温目標を満たすための必要Ua値が示されています。シュミレーションプログラムが無料公開されているので、家を建てる前にぜひ一度、試してみることをおススメします。

HEAT20でシュミレーションしてみる

HEAT20計算結果
HEAT 20のウェブ上シュミレーションで「岩室の平屋」のシュミレーション計算を行うと、上のような結果となりました。計算のベースになっている条件は、連続暖房ではなく、各部屋とも在室時のみ暖房を行い、その都度で暖房を止める「部分間歇暖房(ぶぶん・かんけつ・だんぼう)」です。

暖房期の最低室温が「12.0℃」となっています。暖房期の最低室温というのは、おおむね一番寒くなる朝5時くらいの一番寒い部屋での室温を示しています。通常ですと、廊下やトイレなどの無暖房部屋の室温が示されていると考えれば、大きなズレはないでしょう。

計算結果を見ると、暖房室温15℃未満の面積割合15%を超えているので「不適合」となり水準を満たしていませんが、これは建物全体に対して室温15℃未満になる部屋の時間・面積の割合を15%以下にしましょうという目安で、部屋ごとの温度むらを考慮した数値になります。

HEAT20のウェブシュミレーションは、2階建て、延べ床面積120㎡を前提条件にした数値ですので、平屋の場合や延べ床面積が異なる場合は当然、実際の数値とは違ってくるので、あくまで目安として考えるのがベターです。今回シュミレートした建物は、平屋、かつ、ほぼワンルームの間取りの建物ですので、温度むらを示す「暖房室温15℃未満の面積割合」は無視しても問題ないでしょう。

またここで示されている室温は、単純な部屋の温度ではなく、体感温度です。部屋周囲の床・壁・天井・窓などの表面温度と室温の平均が体感温度です。壁などの表面温度が低くければ、たとえ室温が適温であっても、体感温度は低く感じることになります。

氷点下の朝の実際の室温を検証する

マイナス5度の朝の室温

測定した日の深夜の外気温は、マイナス5℃。前日の夜22時頃にエアコン暖房を切り(この時点では室温18℃)、翌日の暖房を運転する前の朝7時頃に室温を計っています。温度計の室温は「11.7℃」と表示されています。計算シュミレーションでは「12.0℃」となっていたので、やや低いものの、ほぼ計算通りの室温となっています。

暖房を切る前日夜の室温が18℃でしたので、9時間で約6℃の室温が低下したことになります。今回は10年に一度レベルの寒波ですので、夜間に暖房を切って、この室温をキープできるのであれば、個人的には十分ではないかと思いました。たしかに朝起きた時には、さすがにいつもよりは寒いと感じましたが。

ちなみに外気温がマイナスまで下がらない別の日に計ってみたところ、冬の朝の室温は14℃程度でした。HEAT20ですと、G2の断熱水準で13℃以下にならないとなっているので、普段はG1基準を上回るG2程度の体感温度になっていると考えても良いかもしれません。

断熱性能を上げることの利点

冬の日のリビング

ここ最近、エネルギー価格の上昇に伴い、電気料金が大幅に値上げされました。エアコンなどで電気を使って暖房をする場合、暖房機器を稼動させるほど室温が上がって快適性は向上するのですが、それに比例して、毎月の電気料金も上がってしまいます。

世界的なエネルギー価格の上昇情勢を考えると今後、電気料金、ガス料金が下がることは考えにくいと思われます。建設時の断熱性を上げ、毎月の光熱費を抑える方向が主流になっていくでしょう。

高断熱住宅は、ただ光熱費を抑えるられるだけでなく、室温変化が小さく、身体に負荷(ストレス)を感じずに快適に過ごせます。

室温差が10℃以上ある場合、ヒートショック(急激な血圧変化)が起こる可能性が高まると言われています。暖房を行っている部屋の室温が20℃で、廊下やトイレの室温が10℃を下回っていると、部屋を移動する際にヒートショックが起こりやすくなります。夜間の布団から出てトイレに行こうとする際も同様、布団の中の温度と室温の差が大きければ、同じくリスクが高まります。

長い時間を過ごす住まいです。身体にも、心にも、ストレスフリーで過ごせる高断熱住宅を検討してみてはいかがでしょうか。