カテゴリー: 建築を巡る

片岡献設計「聖クララ教会(与那原カトリック教会)」を訪れて

打合せのため、夏真っ盛りの沖縄へ。打合せの合間を縫って、以前から訪れたいと思っていた与那原の「聖クララ教会」を訪れてきました。

与那原へは県庁前からバスで約30分。バス停を降り、ふと見上げると、丘の上に中央が低くなったバタフライ型の特徴的な外観が見えています。その外観に誘われるように、丘の上へ上へと階段を上っていきます。敷地内は、地元の方の通り抜けになっているのか、途中、さまざまな人とすれ違います。教会というと何となく近寄りがたいイメージがあるのですが、こちらの教会はとても親しみやすく、敷地内には沖縄らしい柔らかな空気が流れています。

エントランスを通り抜け、中へ入ると、目の前には沖縄らしい濃い緑の樹々と光の溢れる中庭が広がっています。その中庭を取り囲むように配置された回廊をぐるりと廻り、聖堂へ。

聖堂内に入ると、右手には色とりどりの色ガラスの嵌まったガラスサッシ、正面には祭壇が見えてきます。入口から祭壇に向けては、次第に高くなっていく天井。その視覚的効果なのか、(実際に距離の割に)祭壇が間近に迫っているように感じます。これは、神を遠い存在ではなく、より親密に(身近に)存在として感じるよう、設計者が意図してデザインしたのかもしれません。そうだとすれば、さりげなくありながら、とても秀逸な仕掛けです。

椅子に座り目を閉じていると、海風が聖堂内を涼やかに吹き抜けていきます。色とりどりのガラスが嵌め込まれたガラスサッシは、部分部分、開けることが出来、その部分には網戸も取付けてあります。左右の開口部からは、途切れること無く風が流れていきます。ただ美しいだけでなく、とても使い勝手よく、気候風土を考えた合理的な造り。

写真から勝手に考えていたイメージではもっと硬質な崇高な空間だと思っていたのですが、実際にこの場を訪れて感じたのは、とても親しみやすく、温かな空間だというということでした。沖縄の、あの温度、あの湿度、あの静けさ。言葉や写真では伝えきれない沖縄の濃密な時間が、そこには存在していました。

聖クララ教会(与那原カトリック教会)
住所:沖縄県島尻郡与那原町字与那原3090-4
電話:098-945-2355
見学に関する問い合わせは直接教会へ

聖クララ教会 聖クララ教会 聖クララ教会 聖クララ教会

前川國男設計「神奈川県立図書館」を訪れて

神奈川県立音楽堂」に続いて隣に建つ「神奈川県立図書館」へ。こちらの建物も隣と同様、前川國男の設計になります。渡り廊下で繋がった2つの建物。デザイン的には同じトーンで仕上げられているものの、その建物に求められた性質からか、音楽堂は開放的、図書館は閉鎖的と、両者は対照的な表情をしています。

図書館の外壁は、穴あきテラコッタブロックを積んで仕上げられてます。この穴あきブロック、ただの表層的なデザイン要素ではなく、きちんとした機能を持っています。直接光が室内に入るのを遮断し、ブロックの穴に反射した柔らかい光だけを室内へ導いているのです。内部へ入ると、安定した量の光が閲覧室内を満たしています。中央の閲覧室には吹き抜けが設けられ、北側は全面ガラス張りとなっています。他の穴あきブロック壁と同様に、こちらも直接光が室内に差し込まないよう、縦格子状のコンクリート壁が並び、柔らかな光で空間が満たされています。縦格子の間からは庭の樹々が見えています。

建物の中を見て回るうちに、設計者は表層的なデザイン以上に、その空間に求められた環境(というか空間の質)を実現することを目指したのではないか、とふと思い至りました。読書をするのに最適な光量、最適な静寂さ、人間同士の最適な位置、そんな場を作り出すこと。至極当たり前ことかもしれませんが、そのような本質的視点がこの空間を作り出しているように感じました。前川國男という人間の美学が感じられる空間とでもいうか。そう考えれば隣に建つ音楽堂も、音楽を鑑賞するための最適な音響、最適な人間配置など、環境を最適化することにすべての重心が置かれていることが理解できます。

設計者の前川國男は、スタッフから「大将」と呼ばれるような愛すべきキャラクターを持つ人物だったそうです。この2つの建物からは設計者、前川國男のその人柄からにじみでる温かさを感じることができるはずです。

神奈川県立図書館 神奈川県立図書館 神奈川県立図書館 神奈川県立図書館

前川國男設計「神奈川県立音楽堂」を訪れて

横浜ランドマークのある京浜東北線桜木町駅を下り、人通りの多いランドマークを避け、反対方向の紅葉坂へ。坂を上りきる辺りまでさしかかると前川國男設計の「神奈川県立音楽堂」が右手に見えてきます。正面の水平に延びた深い軒が、まるで人を誘っているかのよう。これだけ大きな規模の建物であれば、人に威圧感を与えてしまうことが多いのですが、そんな威圧的な雰囲気はなく、人を迎え入れるような優しい佇まいをしています。前川國男氏は、戦後一面焼け野原となったこの土地に人に希望を与えるような建物を作りたいと語ったそうです。その思いがこのような佇まいの建物を作らせたのでしょう。

少し背の高い音楽ホールを低層のホワイエが取り囲むという構成になっています。低層部分はガラスに覆われた軽快な意匠、音楽ホールは赤や緑で着色された重厚なコンクリートボックスと構成毎に異なる表情を持ち、お互いがその存在感を強調し合っています。

太陽の光が差し込む開放的なホワイエ。とても気持ちのよい空間です。「おおらか」という表現がしっくりきます。公演の合間にくつろぐ人たちや待ち合わせをする人たちが、みんな思い思いに時間を過ごしていました。天井から吊り下げられた照明器具やくねっと流れるような形の階段手すりなど、様々な細部にまで前川のデザインが盛り込まれています。その中でも個人的に特に印象に残ったのは床仕上でした。セメントと石を打ち込んだ後、研磨を掛けるテラゾーを2色使いで仕上げてありました。(昔は学校の手洗い場などで見ることができました。)一つ一つが考え抜かれ、職人さん達の手間が惜しみなく盛り込んであります。

扉を開け、落ち着いた雰囲気の音楽ホールへ。ゆったりとした椅子に腰掛け、演奏を待ちます。演奏が始まると、何かが違うことに気づきます。通常であれば客席の前方、ステージ方向から演奏が聞こえてくるのですが、どうもそうではない。目を閉じると、前方というよりはホール自体が音を発しているような不思議な感じがします。まるで楽器の中に入ってしまったかのような。このホールは天井壁ともに木で仕上げられています。この音響効果が木という素材によるものなのかどうかは、専門家ではないので分かりませんが、素人である私にでも何か違うという気がしました。設計者の前川國男自身、音楽好きで知られています。やはり音響に関しては特別な思い入れがあったのでしょうか。

演奏が終わり、外に出て振り返るとホワイエには明かりが灯り、昼間とはまた異なる表情を見せていました。外観のボリュームが闇に消え、ガラスの繊細さだけが際立って、昼に見たときよりも更に温かさが増したような感じがしました。

神奈川音楽堂 神奈川音楽堂 神奈川音楽堂 神奈川音楽堂 神奈川音楽堂

ジャン・ヌーベル設計「サムスン美術館Leeum/Museum2」を訪れて

前回に続いて、サムスン美術館リウムのレポートです。マリオ・ボッタ設計のミュージアム1に続いて、ジャン・ヌーベル設計のミュージアム2へ。2つの棟は地下のエントランスホールで繋がっています。こちらはジャン・ヌーベルらしい大屋根が掛かった直線的な建物。どの建物も個性的でお互いに競い合って建っているよう。マリオ・ボッタの中世的な表情に対して、こちらは現代的。

外壁からランダムに突き出した黒い箱の中が展示スペースとなっています。展示空間の中からは、黒い箱の中に展示された作品と、ガラス窓(場所によっては内側は遮光スクリーンが下ろされていますが)が交互に並び、まるで展示作品と外の景色が等価に扱われているように見えます。こちらはミュージアム1に比べて、明るく開放的な展示空間となっています。ミュージアム1には青磁などの古典的な作品、ミュージアム2にはモダンアートと、展示される作品の性格に合わせ全く異なる展示空間が用意されたのかもしれません。作品の大きさや見る方向も多様なモダンアートにとって、このようなランダムな配置方法は有効に働いているように思えます。

レム・クールハースの設計した児童教育センターは時間の関係で残念ながら中を見ることができませんでした。2つの建物を見るだけで既にお腹いっぱいになってしまったこともありますが。それはまた次の機会に。このような3人の世界的建築家の建物を同時に体験できるのは、他にはないことだと思います。

サムスン美術館ミュージアム2web
住所:ソウル特別市竜山区イテウォンロ55ギル, 60-16
開館時間:10時30分〜18時
休館日:毎週月曜日、1月1日、旧正月連休、秋夕連休(詳しくはwebで確認ください)
入館料:常設展10,000ウォン/企画展8,000ウォン
電話:02-2014-69013

サムスン美術館Museum2 サムスン美術館Museum2 サムスン美術館Museum2 サムスン美術館Museum2

マリオ・ボッタ設計「サムスン美術館Leeum/Museum1」を訪れて

韓国ソウルで以前から訪れてみたかったサムスン美術館リウムに行ってきました。世界的な建築家マリオ・ボッタ、ジャン・ヌーベル、レム・クールハースの3人によって設計された3棟の建物で構成されてます。それぞれ個性的な建築をつくる3人ですので、各棟は立面的にそれぞれ独立して建ち、地下のエントランスホールからそれぞれの建物へアクセスできるようになっています。

逆さまにして地中に差し込んだような円錐形と長方形が並んだミュージアム1。こちらはマリオ・ボッタ設計。シンプルな幾何学形態はマリオ・ボッタのトレードマークともいえる赤茶色のテラーコッタ・レンガ仕上げで覆われています。

平面は、螺旋階段とトップライトを中心に設け、その廻りをぐるりと展示スペースが取り囲むドーナツ形をしています。展示空間には一切窓がなく、暗い室内の中で作品が照明に照らされています。壁には外形の逆円錐形の傾きがそのまま現れています。この傾きによって、空間に流動性が生まれているように感じました。奥へ奥へと導かれるように進んでいきます。白い壁に触ってみるとざらっとした独特の質感。磨き漆喰のようです。ほんの小さな操作ですが、壁の傾きや質感がこの空間を成り立たせている重要な要素なのでしょう。

ぐるっと一回りするとその階の展示が見終わります。次の階へは中央の螺旋階段を通って移動します。明るさを抑えた展示空間から一転、トップライトから降り注ぐ真っ白な空間へ。突然、現実に引き戻されたような気分になります。

展示空間から移動空間へ。そして、移動空間から展示空間へ。暗と明。オンとオフ。緊張と開放。対比する空間を交互に通り抜けていきます。シンプルな構成ながら、集中して作品鑑賞することができるとても優れた展示空間だと感じました。

サムスン美術館ミュージアム1web
住所:ソウル特別市竜山区イテウォンロ55ギル, 60-16
開館時間:10時30分〜18時
休館日:毎週月曜日、1月1日、旧正月連休、秋夕連休(詳しくはwebで確認ください)
入館料:常設展10,000ウォン/企画展8,000ウォン
電話:02-2014-69013

サムスン美術館museum1
サムスン美術館museum1 サムスン美術館museum1  サムスン美術館museum1

磯崎新設計「ハラミュージアムアーク」を訪れて

前橋から1時間弱車を走らせ、伊香保グリーン牧場方面へ。今回の目的は磯崎新設計の「ハラミュージアムアーク」。こちらは牧場に隣接して建つ美術館です。緑の芝生が広がるのどかな風景の中に真っ黒な建物が見えてきます。緑の中にごろんと転がった黒い物体。その存在自体がアート作品のようにもみえます。

建物に近づくと黒い外壁は黒く着色した下見板で仕上げられていることが分かります。展示スペースはいくつかの棟に分かれており、棟の間の半屋外空間を通り、各展示棟へと移動していきます。真っ黒な建物の隙間からは、遠くの山並みが見えたり、緑の樹々が見えたり。周辺の風景を上手く切り取り、借景としてフレーミングしています。黒い建物が背景となり、いっそう風景が目に入ってきます。

展示棟の中でアートとじっくり対峙した後、移動空間がちょっと一息つく時間を与えてくれます。真っ黒な展示棟に入る=オンの時間、真っ黒な展示棟から出る=オフの時間、というように明確に空間(体験)が区分されています。窓のない壁に囲われた閉鎖的な展示空間と、黒い壁に囲われた開放的な移動空間。とても対照的な空間です。オンとオフ、メリハリある空間操作によって、より集中して作品鑑賞ができるように感じました。だらだらと抑揚なく作品展示が続いている展示空間は、見ていて疲れますから。

構成はとてもシンプルですが、敷地環境を良く活かした気持ちのよい美術館でした。肩の力を抜いて鑑賞できるというか。雪の真っ白な風景の中に経つ姿もまた美しいのでしょうね。

ハラミュージアムアークweb
住所:群馬県渋川市金井2855−1
開館時間:9時30分〜16時30分(入館は16時まで)
休館日:木曜(祝日・8月を除く)、展示替期間、冬期(詳細はwebで確認ください)
入館料:一般1,100円、大高生700円、小中生500円
電話:0279-24-6585

ハラミュージアムアーク ハラミュージアムアーク ハラミュージアムアーク

ザハ・ハディド設計「東大門デザインプラザ」を訪れて

韓国ソウル、東大門に2013年に竣工した東大門デザインプラザ(DDP)。設計者は今、新国立競技場の設計者白紙撤回で話題となっているザハ・ハディド氏。デザインプラザの名の通り、こちらの建物は美術館やイベントスペースやショッピングモールなどが複合した施設です。

その異様で巨大な外観は、遠くからでも目にとまります。ビルが建ち並ぶ街の中にその姿を見つけた時、頭に浮かんだイメージは「不時着した宇宙船」でした。艶かしいシルバーの曲面外皮、重力を無視したかのような不安定なバランス、窓などの建築的な手掛かり全く見えないつるりとした外形。どこをとってもこれを建築と定義する要素が見つかりません。今にも地面からふわりと浮いて、宇宙へと飛び立っていきそうな佇まい。

敷地周辺には、歴史的建造物の東大門や人々が屋台で賑わう東大門市場などの昔ながらの雑多なアジアな街並が広がっています。なんの脈絡もなく巨大な塊を街の中にごろんと置いた、ぶっきらぼうさを感じました。必要なのは、周辺の街のコンテクスト(脈絡)よりも「新しさ」だとザハはコメントしているようですが、その巨大なスケールは余りにも暴力的です。確かに新しさという設計コンセプトは実現しています。新しすぎて地球上の物体に見えないくらい。周辺の文脈を読み取るか、それとも無視するか。どちらが正しいとははっきりとは言い切れないのでしょうが、少なくとも私には周辺と調和しているとは感じられませんでした。

あいにく訪れたのは開館前で内部に入ることはできませんでしたが、内部に入ればまた印象は変わるのかもしれません。外皮の中には、きっとザハらしいスピード感のある内部空間が広がっているのでしょう。んっ?でもそれって宇宙船感をさらに冗長してしまうのかな。それはまた次の機会に。

東大門デザインプラザweb
住所:ソウル市 鍾路区(チョンノグ) 乙支路7街(ウルチロチルガ)2-1
開館時間:10時〜19時、21時、22時(閉館時間は施設毎に異なりますのでwebで確認ください)
休館日:無し(詳しくはwebで確認ください)
入館料:企画展毎に異なります
電話:02-2153-0408(英語のみ対応)

東大門デザインプラザ 東大門デザインプラザ 東大門デザインプラザ 東大門デザインプラザ

渡邊洋治設計「斜めの家」を訪れて(内部見学)

斜めの家内部

渡邊洋治設計「斜めの家」の内部を特別に見せてもらうことができました。外観だけみると地中から浮上した鉛の潜水艦のような重厚な建物に見えますが、果たして内部はどのようになっているのか。期待に胸が膨らみます。

玄関ドアを開け、内部へ。玄関ドアといえば通常、外に向かって開くのですが、こちらのドアは内開き。ここ上越は豪雪地帯。雪が積もった際にドアが開けられないことに配慮し内開きとしたのでしょうか。玄関には下駄箱やコート掛け、内部から取り出せるポスト口と荷物受けが造り付けられています。奇抜な外観の印象に反して、内部の作り込みはとても細かく、きちんと使い勝手が考えられています。

斜めの家内部

玄関からスロープ状になった廊下へ。床には真っ赤な絨毯が敷かれ、両側の壁には大きさの異なる小さな穴がいくつもランダムに並んでいます。スロープは奥に向かって上へと登っています。傾斜した床のせいなのか、不規則な小さな穴のせいなのか、スケール感が失われるような不思議な感覚。廊下右手には手前から納戸、客間、キッチン、畳部屋の入口が並んでいます。各部屋の南側には大きな開口部が設けられ、明るい日差しが射し込んでいます。室内に入り込んだ光は床の赤い絨毯に反射し、室内を真っ赤に染めています。光の変化によって赤さが変化し、白い壁が刻々と色を変えていきます。まるで光のインスタレーションを見ているようです。

廊下のスロープは途中で折り返し、更に上へと上がっていきます。ランダムな小窓からは外が見えたり、他の部屋が見えたり、移動するに従い刻々と景色が変化していきます。雨戸の締まった真っ暗な2階の部屋の中へ。ガイドの方に障子の所、ちょっと覗いてみてくださいといわれ、そこを覗くと。。。なんと!驚くべき現象が。もしこの現象を意図して設計していたのだとすれば、その設計者の創造力たるや計りしれません。(これはここを訪れた方だけが体験できることなので、ここでは秘密にしておきます。)

外観からはおどろおどろしい威圧的な印象を受けたのですが、今回、内部に入ってみて感じたのは、ヒューマンスケールのかわいらしい建物だということでした。開口部には雨戸、ガラス戸、障子戸、簾戸が仕込まれ、家具の細部の作り込みや、光の入り方や風通し、小さな窓の納まりなど、さまざまな箇所で暮らしに合わせた細かな工夫がなされています。仲の良かった妹さんの家ということもあって、渡邊洋治は考えられる限りの工夫を盛り込んだのでしょう。頻繁にこの家に遊びに来ていたという話から、まるで自分の家のような思い入れがあったのかも知れません。ひとつひとつの作り込みから渡邊洋治の愛情がにじみ出ています。

斜めの家内部

また光と色の使い方がこれほど上手い建物を見たのは初めてでした。あのような光と色の使い方があるのかと、大変勉強になりました。今回伺ったのは晩夏の晴れた日でしたが、雪の積もった冬の日などに訪れればまた違った体験ができるのではないかと思います。ぜひまた機会があれば。

渡邊洋治設計「斜めの家」を訪れて(外観をみる)

斜めの家
住所:新潟県上越市(非公開)
見学について:建物の一般公開はしていません。見学希望の方は下記HPへ問い合わせください。
参考HP:渡邊洋治設計『斜めの家』再生プロジェクト

斜めの家内部

横河工務所設計「京都伏見稲荷大社儀式殿」を訪れて

伏見稲荷大社の境内を歩いていると、ふと目にとまる外観。建築に関わっている者であれば必ずや脚を止めてしまうことでしょう。私もその外観に一瞬で心を引かれてしまいました。参道をそれ、ふらふらと吸い寄せられるように建物の方向へ。

細長い板を互い違いに積上げたような外観。プレキャストコンクリートを使っているのでしょう。積上げられた板は薄く、とても華奢な印象を受けます。板同士の隙間からは空が見えています。境内の中にあって高さもボリュームもある建物です。外観をルーバー状にすることで存在感を少しでも希薄にしようという意図なのでしょうか。建物ボリュームを一つとせず、構成をいくつもに分けている所をみると、その予想は間違いでないように思えます。これだけのボリュームにそのまま外壁材を貼ったら、きっと圧迫感が生まれたでしょう。とても効果的な処理に思えます。

横ルーバーは建物の外観に影を生み、彫りの深い表情を生み出しています。ルーバー同士の納まりはとても美しく、見れば見るほど興味深い建物。googleマップで航空写真を見ると、2つの正方形の一つを45度ズラしたような八角形の星形平面をしています。内部は見れませんでしたが、機会があればぜひ内部も見てみたいと思いました。ネットで検索してみると、設計者は横河工務所とあります(現、横河建築設計事務所)。1968年竣工。

京都伏見稲荷大社儀式殿
住所:京都府京都市伏見区深草藪之内町68
開館時間:伏見稲荷大社は24時間開館(建物の一般公開はしていません)
参考:伏見稲荷大社web

伏見稲荷大社儀式殿 伏見稲荷大社儀式殿 伏見稲荷大社儀式殿 伏見稲荷大社儀式殿

京都詩仙堂を訪れて(その2)

京都詩仙堂へ行ってきました。ここを訪れるのは6年ぶりです。訪れる度に違った印象を受ける建物というものがあります。ここ詩仙堂もその一つ。訪れる季節や気候によって見える風景が異なることがその大きな要因でしょうが、その時の自分の気持ちによっても見える景色が違ってくるのだと思います。心がざわついている時に感じる景色、心が落ち着いている時に感じる景色。同じ物を見ても感じ方は少しづつ変わってくるもの。今回はどのように見えるでしょうか。

以前は建築が庭の自然の増幅装置として作用していると感じました。あくまでも庭が主役だと。しかし今回は庭よりも建物自体に目が引かれました。一見、建物は控えめな設えに見えますが、よくよく目を凝らしてみると、場所毎に様々な素材を使い、竹の雨樋や蛍壁仕上げなど、かなり凝った意匠をちりばめています。それが庭よりも目立たないよう上品に上手くまとめている。庭と建物、どちらが主張しているではなく、ちょうど良い強度でお互いにバランスしているように見えます。

ただ、建物が自然の増幅装置になっているという印象は、前回同様に感じました。建物があることで庭の緑がより強調されているように感じます。風や雲の流れ、梢の音、土の香りなど。室内に座っていると外にいる以上に自然の変化に敏感になります。室内でありながら、外にいるよりも外を感じる空間。目を閉じて座っていると心が落ち着いてきます。

詩仙堂web
住所:京都市左京区一乗寺門口町27番地
開門時間:9時〜17時(受付は16時45分まで)
拝観休止日:5月23日(詳しくはwebで確認ください)
拝観料:大人500円、高校生400円、小中生200円
電話:075-781-2954

京都詩仙堂 京都詩仙堂 京都詩仙堂 京都詩仙堂

白井晟一設計「善照寺本堂」を訪れて

人で賑わう合羽橋商店街のすぐ裏手。白井晟一設計による切妻屋根の本堂がひっそり静かに建っています。今まで合羽橋商店街はよく通っていましたが、まさかその通りの裏に建っていたとは思いもよりませんでした。表通りから細いアプローチを通り抜け、ちょっと奥まった境内へ。境内に近づくにつれ、空気の質が変わっていくよう。装飾を抑えた端正なプロポーションの本堂が正面で迎え入れてくれます。

訪れたのはしとしとと雨降る日。長く延ばした庇の先端から砂利の上に落ちた雨が、ぽつりぽりつと雨音を響かせています。本堂は地面から1m程浮き上がっており、本堂の廻りにはテラス床が跳ね出し、回廊状に建物を取り囲んでいます。この跳ね出した回廊の床の厚さはとても薄く、まるで建物が浮遊しているかのように見えます。

石階段を登り回廊へ上ると、地面から1m程しか上がっていないのに、街の喧噪が遠のき、世俗から切り離されたような気分になります。このレベル差が結界の役割しているのでしょう。ごろっとした存在感のある石の階段や浮遊する回廊床が結界を作り出す重要な装置として働いているのでしょう。

本堂内部を覗くと、障子を通した柔らかな明かりに包まれ、静謐な空間が広がっています。庇の延びた左右対称の切妻屋根という昔ながらのお堂の典型的なカタチが、私たちにお寺というイメージを呼び起こすのか、斬新な表現のわりに誰にでもすんなりと受け入れられる姿になっているように感じました。静かに雨が降っているそんな日に訪れるのが良いかもしれません。1958年竣工。

善照寺本堂
住所:東京都台東区西浅草1丁目4−15
拝観について:一般公開はしていません。拝観の際には隣接する社務所にお声かけください。
電話:03-3844-4006

白井晟一設計「善照寺本堂」

  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」
  • 白井晟一設計「善照寺本堂」

アントニン・レーモンド設計「高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)」を訪れて

高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)を訪れる。タイトルにはアントニン・レーモンド設計と表記しましたが、正確には直接的にレーモンドが設計をした訳ではありません。当時、麻布に建っていたレーモンド自宅兼事務所(こちらはレーモンドの設計)に深く感銘を受けた井上氏がレーモンドの許可を得て、建物の実測を行い、その資料をもとに建てたのが、こちらの旧井上房一郎邸ということ。平面方位が反転していたり、事務所棟がなかったりと、もともと見本にした建物とは少し変えてあるそうです。現代風にいえば、レーモンドfeat.井上房一郎といったところでしょうか。

ごつごつとした表情の杉丸太や合板という重厚な素材を使いながら、出来上がっている空間の質は軽快。障子を通して外から射し込む陽の光が柔らかく室内を満たしています。昔ながらの民家の延長線上にあるような懐かしい雰囲気。細かな納まりに目をやれば、ひとつひとつ丁寧に考えられていることが分かりますが、全体としてみるとデザインデザインしていなくて、嫌みなく自然に納まっています。素直に気持ちのよい空間。椅子に座ってぼーーっとしていると、時間があっという間に過ぎていってしまいます。

高崎哲学堂(旧井上房一郎邸)web
住所:群馬県高崎市八島町110-27(高崎市美術館内)
開館時間:3月~11月は10時~18時、12月~2月は10時~17時
休館日:月曜日(祝日は開館し翌日休館)、祝日の翌日、展示替期間、年末年始
入館料:大人100円、大高生80円(企画展は別料金)
電話:027-324-6125(高崎市美術館)

旧井上房一郎邸 旧井上房一郎邸 旧井上房一郎邸 旧井上房一郎邸