中古住宅は、いつ設計者に相談すればいいのか

リノベ前リビングからキッチンを見る

リノベーションを考えて相談に来られる方を見ていると、中古住宅を購入することに、不安を感じている方が少なくないように思います。

「この物件を買って、本当に思い描いた暮らしが実現できるのだろうか。」
「予算内で、本当にやりたいことができるのだろうか。」

そんな不安を抱えながら、事務所へ相談に来られる方が多くいらっしゃいます。

予算も違えば、家族構成も違う。理想とする暮らしも、それぞれ違います。だから、同じ中古住宅を見ても、その人に合う物件かどうかの答えは一つではありません。

ある人にとっては理想の住まいになる家でも、別の人にとっては、思い描く暮らしを実現することが難しい家かもしれません。

では、その人に合う物件は、どのように見つければいいのでしょうか。

最初に考えるのは、建物ではありません

物件を探し始めると、多くの人は、築年数や価格、広さ、立地といった条件から比較を始めます。もちろん、それらは大切な判断材料です。でも私は、物件を見る前に、まず暮らしについて話を伺います。

部屋数や広さ、予算も大切です。ただ、それだけでは、その人に合う物件かどうかは分かりません。

休日はどのように過ごしているのか。
どんな場所で落ち着くのか。
好きなお店や、よく行く場所はあるか。

そんな何気ない会話の中に、その人らしい暮らしのヒントがたくさん隠れています。

でも私が知りたいのは、趣味や好きなお店、そのものではありません。その人が、どんな時間を心地よいと感じるのか。どんな空気感の中で過ごしたいのか。その手掛かりを探しています。

そうして集めた手掛かりをもとに、この物件で、その人らしい暮らしが実現できるのか。その人に合う物件なのかを考えていきます。

同じ物件でも、見え方は変わります

中古住宅の内見では、お客さんは、間取りやキッチン、浴室の状態、駐車スペースなど、今ある建物を見ています。これから暮らす家ですから、今の状態が気になるのは当然のことだと思います。

一方で、私は少し違うものを見ています。今ある建物ではなく、その先にある暮らしです。

現地調査

この建物を、どう変えられるだろうか。
どんな暮らしの可能性が残されているだろうか。
その人が思い描く暮らしを、この建物で実現できるだろうか。

そんなことを考えながら建物を見ています。

もちろん、どんな建物でも自由に変えられるわけではありません。構造や法規、予算など、さまざまな条件があります。その条件の中で、どこまで可能性が残されているのかを見極めること。そして、その人が思い描く暮らしを実現できるかを考えることが、設計者の仕事だと考えています。

私が見ているのは、今ある建物ではなく、その建物でどんな暮らしが実現できるかです。

暮らし、建物、予算は切り離せません

例えば、「広いLDKで暮らしたい」という要望があったとします。そのとき、細かく部屋が仕切られた中古住宅を見て、「この家では難しそうだ」と感じる方もいるかもしれません。

でも、設計者は少し違う見方をします。

この壁は取り払えるだろうか。
どこまでなら建物への負担を抑えられるだろうか。
補強工事には、どれくらいの費用が掛かるだろうか。

そんなことを考えながら、実現できる可能性を探していきます。ただ、壁を取り払えば、それで終わりではありません。補強工事が必要になれば、工事費も増えていきます。

予算に余裕があれば実現できるかもしれません。しかし、そこまで費用を掛けられるのであれば、新築という選択肢も見えてきます。

広いLDKに限った話ではありません。静かな場所で本を読みたい人もいれば、庭を眺めながら過ごしたい人もいる。友人が集まる家にしたい人もいれば、小さくても一人になれる居場所を求める人もいます。

実現したい暮らしが違えば、その人に合う物件も変わります。暮らしだけを考えても、建物がそれを受け止められなければ実現は難しくなります。建物に可能性があっても、予算が合わなければ、その可能性を活かすことはできません。

逆に、予算だけで物件を選んでしまうと、本当に実現したかった暮らしから離れてしまうこともあります。暮らし、建物、予算。その三つは切り離して考えることはできません。だから私は、物件だけを見て判断することはありません。

安心して判断するために

内見を終えると、私は何が実現できそうか、何が難しそうかをお話しします。そして、お客さんにも聞きます。

「この家を見て、どう感じましたか。」
「何が気になりましたか。」

建物の条件だけでなく、その家から受けた印象も、大切な判断材料になるからです。

最終的に、物件を購入するかどうかを決めるのは、お客さん自身です。私は、その判断に必要な情報を整理し、何が実現できそうか、何が難しそうかを、一緒に考えていきます。安心して判断できる材料を整理することも、設計者の大切な役割だと思っています。

リノベ後リビングからキッチンを見る

内見では、ごく普通の住宅に見えた空間です。暮らし、建物、予算を一緒に考えながら可能性を探した結果、このような住まいになりました。

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