外壁杉板張り(ウッドロングエコ塗装)の経年変化

私の事務所で設計する建物の外壁には、自然塗料であるウッドロングエコを塗ったスギ下見板張りを良く採用しています。(杉板張りは、新潟では昔から多用されてきた外壁材です。杉材が最も身近に手に入りやすい材料だったことが関係しているのと思われます)

新建材で仕上げたクールな外観とは異なり、自然素材で仕上げた建物は、温かみを持った柔らかな表情になります。年を経るごとに変わっていく色味を愉しめることも自然素材ならではの特徴です。

写真で見比べる杉板外壁の経年変化

ただ、自然素材であるスギ材にウッドロングエコという自然塗料を塗って仕上げていることもあって、耐候性が他の外壁材に比べて劣るのではないか、と質問をよく受けますので、実際にどのような経年変化が起こっていくのかを、写真で見て比較してみます。

杉下見板張りウッドロングエコ完成後

上の写真は、完成直後の杉板外壁の写真です。杉板を横向きにして張る、下見板張りという工法で外壁を仕上げています。完成直後の杉板は、グレーと茶色の中間色といった感じです。杉板自体に、赤っぽい部分と白っぽい部分があるため、一枚一枚の板には色ムラがあります。この色ムラの味わいが自然素材の特徴で、既製品の外壁材ではなかなか出せない独特の風合いです。中央に見えている玄関ドアも同様に、杉板張りの上にウッドロングエコを塗って仕上げています。

杉下見板張りウッドロングエコ1年後

上の写真は、完成後1年が経過した外観写真です。完成時点の写真と比べると全体的に黒っぽくなっているように見えます。もしかすると、排気ガスなど空気中のホコリ汚れが付着しているのかもしれませんが、当初に比べ全体的にグレー掛かっています。

玄関庇の下部、雨の当たる部分と雨の当たらない部分の境で、やや雨水の跡がついています。雨が当たる部分は表面が雨で洗い流され、雨の当たりにくい部分では元の塗装状態が残って、差が出来ているものと思われます。その他の部分は全体が均一に経年変化しているのが見て取れます。

上の写真は、3年が経過した杉板外壁です。杉板の表面が雨風に当たることで、ラフな質感へと変化しています。以前に比べて木目が浮き出てきて強調されたように見えます。玄関ドアの杉板は、外壁よりも色が抜け、やや白っぽくなってきています。完成当時と比べると、味わいがぐっと増したように見えます。

完成1年目には、雨が当たる部分と雨が当たらない部分の境に、雨跡がありましたが、その跡はすっかりと消えて均一になってきています。

写真の事例は、岩室の平屋です。詳しくはクリックしてリンク先をご覧ください。

スギ縦羽目板張り外壁の3年後の表情

杉縦羽目板張りウッドロングエコ完成時

こちらは、木材保護塗料ウッドロングエコを塗布したスギ縦羽目板を貼った外壁の拡大写真です。板ごとに濃茶の部分と肌色の部分が見て取れます。色味が異なるのは、スギ板の素材の色違いがそのまま表れているからです。

こちらの板は外壁に張るため耐候性の高い、スギ板の中でも赤身(あかみ)と呼ばれる丸太の内側に近い部分から取った板を選別して使っています。全体的に肌色の部分が少なく、濃い茶部分が多いのは、赤身の部分を多く使っているからです。

杉縦羽目板張りウッドロングエコ3年後経年変化

上の写真は完成直後、下の写真は完成から3年経った外壁の状態です。完成時と比べて外壁全体がシルバーグレー色へ変化しているのがハッキリと分かります。塗装が雨で洗い流された感じもありますが、写真の外壁は南側に面しているため、紫外線焼けして色抜けが起こったのかもしれません。窓サッシの直下は、雨の当たりが少ないためか当初の板の茶色が少し残っているのが見えます。完成当時の若々しい表情とは異なりますが、味わいのある落ち着いた表情になっています。

完成から数年の時点で、ところどころ節が抜けている個所や所々、板の反りはありますが、板が腐って傷んでいる不具合などは全くありませんでした。まだ数年ですので、これからまだ痛みが発生してくる可能性はあるかと思いますが、現時点では全く損傷なく、今すぐにメンテナンスが必要な個所はありませんでした。まだ数年、このままの状態を放置しておいても問題無さそうです。

写真の事例は、標準化住宅ベーシックハウスです。詳しくはクリックしてリンクをご覧ください。

杉板外壁はメンテナンスに手間がかかる?

木の外壁メンテナンス(塗り替え)は、数年ごとに行った方が良いか?と聞かれることも多いのですが、私の事務所で良く採用している自然塗料ウッドロングエコは、ノーメンテナンスが基本となっています。(経年変化の味わいが自然素材の特徴ですので、変化自体をポジティブに捉える方が良いでしょう。)ただ、数年ごとに塗料を塗り重ねた方が木の持ちが良いはずですので、もし耐候性が気になる方は(費用は掛かりますが)5年を目途に塗り重ねを行ってもよいかもしれません。

杉板外壁経年変化

杉板張り外壁の良い点は、

  • 温かく味わいのある表情が出せること
  • 経年変化を愉しめること
  • 手に入り易く、板が傷んだ際には一部だけ交換ができること

です。一般的には外壁に、サイディングや板金などの工業製品を張るよりも、木を使った方がメンテナンスに手間と費用が掛かると思われているようですが、そんなことはありません。外壁材に工業製品を採用したからといってメンテナンスフリーになるとは限りません。

サイディングであれば製品によっては、10年を目途に定期的な塗り替えが必要となりますし、板金などで継ぎ目部分に防水のためにシーリングを使っている場合は、シーリングの耐用年数の10年ごとに打ち替えが必要になります。どんな外壁材であっても、定期的なメンテナンスは必要ですので、木だからといって他の材料よりも極端に手間が掛かる(メンテナンス費用がかかる)ということはありません。

日本国内の何処であっても、もっとも身近で手に入りやすい杉材は、何十年後であっても、容易に手に入れることができるはずです。そのため、傷んだ部分を一部だけ取り換え交換することが可能です。逆に、工業製品は数年ごとにラインナップが変わっていくため、数年後に一部だけ交換することが難しい状況です。一部だけを直したいケースでも、そこだけが色や柄が変わって見た目が変になってしまうので、結局は全部張替え、むしろ多額の費用が掛かる可能性があります。

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