外観をデザインするためのさまざまな工夫

杉板張り外観

燕あおうづの平屋」は、瓦の載った切妻屋根の家屋が建ち並ぶ周囲の街並みに合わせるため、軒先の伸びたシンプルな切妻屋根の外観としています。まるで子供が描く家の絵のように、端正な三角屋根の家です。屋根や外壁の色のトーンを周囲の街並みに揃えることで、建物が建つ周辺環境に馴染むよう、意図しました。

外壁に採用した自然素材の杉板張りも相まって、新築なのにまるで以前から建っていたかのような落ち着いた佇まいとなっています。

設計者として、何を手掛かりに外観デザインを決めているか、思いつくことを列挙していきたいと思います。案外と色々な工夫をしているのだなと、自分で書いてみて驚きました。

軒先をすっきりさせる

南側外観

軒の伸びた外観は、軒下に暗い影を作り出し、昔ながらの懐かしい風景を作りだしています。機能的な面でも長く伸びた軒は、夏場には陽差しを有効に遮り、夏場の冷房負荷を低減してくれます。

今回は外観のシャープな印象を保つため、軒先には軒樋を取りつけていません。写真で見ても、軒先がすっきりしているのが分かるのではないでしょうか。

軒先デザイン

屋根に振った雨は、軒先から真下の砂利敷きの地面へと落ち、地中に埋めた浸透管に集水され、敷地外へと放流されます。一見、単純な納まりに見えますが、うまく軒先端部の形状を工夫しないと、雨水が真下へ落ちてくれません。シンプル=簡単という訳にはいきません。シンプルに見せるための裏には、実はいろんな苦労があったりします。

窓の配置バランスを考える

北側外観模型

窓の配置は、室内側からここにあって欲しいと、部屋の用途に応じて決まることが多いのですが、室内側からの要求で決まった窓配置が外から見た際にバランス悪くてはいけません。内部からだけの検討だけでなく、外観全体のバランスも考えながら配置検討することも大切です。

立面図で配置バランスを検討するのは当然ですが、できることなら模型を作って立体的に検討するのが確実です。少し高めの位置に窓を取り付ける、スリットタイプの窓形状にするなど、さまざまなタイプの窓を駆使してバランスよく窓を配置しましょう。

外壁に自然素材を使う

杉板縦羽目張り押縁押え外壁

外壁は、自然素材の杉板張りとしています。雨切れを良くし、杉板の傷みが少なくなることをねらって、杉板を縦張りとし、目地部分に「押縁(おしぶち)」と呼ばれる幅の狭い板材を打ちつけています。一般的に「杉板縦羽目張り+押縁押え(すぎいた たてはめばり+おしぶちおさえ)」と呼ばれる外壁板張り工法です。押縁の部分が杉板面よりも少し出っ張っているため、陽が当たると、リズム感ある美しい影が出来ます。

こちらの杉板は耐候性を上げるため、「ウッドロングエコ」と呼ばれる木材保護塗料を塗ってあります。杉板にしては、ややグレー掛かった色味をしているのは、ウッドロングエコを塗ったからです。ウッドロングエコの塗料は、塗装屋さんに頼まず、施主さん自らがDIY塗装を行って仕上げました。最初は杉の茶色い色目が見えていますが、時間が経つと共に、より深いグレー色へと変化していくはずです。自然素材を使う良さは、時間の変化と共に変化していく色目や質感を愉しめることです。

外壁に取り付くパーツ選定

杉板張り外壁

外壁に取り付く照明器具やハンドル、コンセントカバー、換気扇フードなどのさまざまなパーツも、シルバーで色目を統一しました。ちょっとしたことですが、パーツ毎の色が揃っていないと、それだけでちぐはぐな印象となってしまします。外壁材に気を使う以上に、外壁に取りついてくるさまざまなパーツの形状と色は重要です。きちんと忘れずに選定しましょう。

外構計画も忘れずに

外壁と植栽

可能であれば、建物本体だけでなく、外構デザインも建物と一体で考えましょう。玄関アプローチの敷石の素材や庭木の配置によっても、建物の印象はだいぶ変わります。まだ植栽がない時は、建物の外壁だけが目につきますが、植栽を植えれば外壁は植栽の背景になります。木を植えた時に緑が映えるよう、樹との取合いを考慮した上で、外壁仕上げ材と外壁色を決めることが大切です。