なぜ気密測定試験を行うのか

気密測定試験

「上越滝寺の店舗併用住宅」では、気密測定試験を行いました。気密測定とは、その名前の通り、建物の気密性能を計る試験です。気密測定は一般的に、工事の途中段階(気密工事完了後)と建物完成時の2回行います。両方とも行えばより確実ですが、どちらか片方かだけ試験を行うこともあります。

工事の途中で測定を行う場合、仮にどこかに穴が開いていたとしても、その場所を特定することができ、直ぐに手直し対処ができるので、気密性を確実にするのにとても有効です。建物完成時に行う気密測定は、最終的な気密値がいくつなのか、確定するために行う試験です。最終的には外壁に配管のために穴を開けたり、工事途中とは気密条件が変わるので、最終的な気密値を知るため、完成時の測定を行います。

ただし、気密測定には1回ごとに測定費用(およそ5万円/回)が掛かるので、予算上、もしどちらか一方の試験だけ、という場合には工事途中の測定を行うと良いでしょう。

気密測定値について

測定値は、C値(相当隙間面積)で表されます。床面積1㎡当たりの隙間面積(cm2)を現したもので、高気密住宅ですと、C値=1以下が最低基準とされています。数値が小さいほど、隙間が少ない目安になり、より高気密であると言えます。

気密測定試験

気密測定は、専門の測定業者が行います。送風機で室内の空気を外へ掃き出し、圧力差を測定することで隙間面積を判定します。もし測定時に、どこかに隙間があれば、外部から風がヒューヒューと入ってきますので、明らかにそこに隙間があることが分かります。もし、隙間の場所が特定できた場合には、直ぐに手直し気密処理を行うことができます。

上記の写真は、どこかに隙間がないか、探している図です。建物の全体をぐるぐると回り、部分部分に手をかざして風が漏れていないか、入念に確認していきます。

気密測定試験

上記写真が、測定結果です。右上の数値、C値=0.5(cm2/㎡)となっています。相当隙間面積が65cm2ですので、建物全体で約6.5cm×10cmの隙間が存在することになります。はがきが14.8cm×10cmの大きさですので、建物全体の隙間を足して、はがきよりも小さな面積でした。目標C値が1以下でしたので、十分、数字を満たしていることが確認できました。

今回採用した断熱材は、壁・天井ともグラウウール断熱材で、一般的には気密性が確保しにくいと言われています。しかし注意を怠らず、入念に施工を行うことで、気密性を確保できることが証明できました。

気密性能が高いと、どんなメリットがあるのか

気密性能が高ければ、つまり、隙間が少なければ、暖めた(夏であれば冷やした)室内の空気が外へ逃げる量が減ります。逃げる量が減れば、冷暖房効率が上がり、省エネになります。特に冬場は隙間が多いと、冷たい冷気が足元から入ってきますので、冷えを感じやすくなります。

また隙間が多い場合、換気扇による風の流れをうまく作ることができず、室内の空気が滞留しやすくなってしまいます。

気密測定はやり直しできるのか?

もし思うような気密測定結果が出なかった場合は、どうなるのか?再度、測定はしてもらえるのか?それとも測定費用が余計に掛かってしまうのか?

答えを先に書きますが、その測定最中であれば、測定のし直しは可能です。実際に、今回の測定では最初、全く思うような数字が出ず、おかしいということになって、どこかに穴が開いてないか探し回ることになりました。(最終的には、換気扇の穴を一箇所、塞ぎ忘れていたことが判明し、直ぐに対処できました。)

気密測定試験

数値が思うように出なかった場合、一箇所にまとまって穴が開いているのか、それもと分散して小さな穴が開いているのか、その隙間の穴あきの傾向(隙間特性値)が測定機に表示されます。もしまとまって穴が開いている場合、今回のように、どこかに塞ぎ忘れがある可能性があります。気密測定は、一発勝負ではありません。

施工上のミスが無いかを確認し、気密性を確実にするために行うものです。よって、その場で何度も測定し直すことは可能です。(ただし、手直しに時間がかかり、後日改めて測定しなければならない場合には、再度、測定費用が掛かります)

気密試験を行うメリット

気密測定試験を行う利点は、大きく以下の3点です。

  • 隙間などがあった場合に直ぐに手直しができ、気密性を確実なものにすることができる。
  • 気密性能をきちんと数値で示せる。(感覚的なものでなく、きちんとした根拠ある数字で示せる)
  • 気密測定を行うことで、現場管理がきちんとする。(逆に気密測定を行わないと、現場での管理が曖昧になってしまう)

気密工事に関して施工実績と経験があり、気密測定を行わなくとも、きちんとした気密性能を実現することができる施工会社は、現状ではまだ多くはありません。建物の気密性を担保するためにも、きちんと気密測定を行うことは有効です。今後、私の事務所では、工事途中の気密試験を必須条件にしていきたいと思います。