
新潟で暮らしていると、冬が寒いのは当たり前のことのように感じます。
空は曇り、雨や雪の日が続く。朝晩だけでなく、昼になってもなかなか暖かくならない。家づくりの打合せでも「冬、暖かい家にしたい」という話はよく出てきます。
では、新潟の冬はなぜ寒いのでしょうか。雪国なのだから、東京など太平洋側に比べて、気温がずっと低いから。そう思うかもしれません。
ところが、気象庁のデータで新潟と東京の冬の気温を比べてみると、少し意外なことが分かります。
新潟の冬の寒さは、単純に気温が低いというだけでは説明できないようです。
新潟の冬は、昼が暖まらない
気象庁の平年値で、1月の新潟と東京の気温を比べてみます。
出典:気象庁「平年値(1991〜2020年)」新潟・東京
1月の日最低気温は、新潟が0.1℃、東京が1.2℃。その差は、わずか1.1℃です。
雪の降る新潟と東京では、もっと大きな差があるように思いますが、夜から朝にかけての冷え込みには、それほど大きな違いはありません。
ところが、日最高気温を見ると、新潟5.3℃に対して東京9.8℃。その差は4.5℃まで広がります。
出典:気象庁「平年値(1991〜2020年)」新潟・東京
新潟の冬は、夜に極端に冷え込むというよりも、昼になっても気温が上がらないことが読み取れます。
なぜ、これほど差が開くのでしょうか。大きく違うのが、冬の日照時間です。
1月の日照時間は、新潟が56.4時間なのに対して、東京は192.6時間。1日あたりにすると、新潟は約1.8時間、東京は約6.2時間になります。
出典:気象庁「平年値(1991〜2020年)」新潟・東京
さらに、太陽から地表に届くエネルギーを示す全天日射量も、新潟の5.3MJ/㎡に対して、東京は9.4MJ/㎡です。
新潟の冬は、単に気温が低いのではありません。太陽が出る時間が短く、日射そのものも少ないため、昼になってもなかなか暖まらない。
これが、新潟の冬の寒さを考えるうえで、とても大きな特徴です。
冬の太陽をあてにできない
高断熱住宅では、冬の太陽の熱を室内に取り込むことが、暖かい家をつくるための有効な方法のひとつです。
南側に大きな窓を設け、低い角度から差し込む冬の日射を室内に取り込む。昼間に太陽の熱で室内を暖め、その熱を断熱によってできるだけ逃がさない。いわゆる日射取得を利用した考え方です。
晴れた冬の日に、窓辺にいると暖かく感じることがあります。暖房をつけていなくても、日射が入るだけで室温が上がることもあります。太陽の熱は、うまく利用できれば、とても有効です。
ただ、新潟ではひとつ大きな問題があります。前の章で見たように、1月の日照時間は1日平均で約1.8時間。東京の約6.2時間に対して、3分の1にも届きません。
せっかく南側に大きな窓を設けても、冬の間、その窓からいつも太陽の熱を取り込めるわけではないのです。
もちろん、新潟でも晴れた日の日射は利用できます。日射取得を考えなくてよい、ということではありません。ただし、冬の日射を安定した熱源として、あてにしすぎることはできない。
ここが、太平洋側と新潟で住宅を考えるときの大きな違いだと思います。
そして、窓にはもうひとつの側面があります。窓は、光や太陽の熱を室内へ取り込む場所であると同時に、外壁に比べて熱が逃げやすい場所でもあります。
晴れていれば、窓から太陽の熱を得ることができます。しかし曇っていれば、日射による熱は期待できない一方で、室内から外へ熱は逃げていきます。
冬の曇天が続く新潟では、このことを無視することはできません。
入れられないなら、逃がさない
冬の日射を安定してあてにできないのであれば、別の方法で室内の暖かさを保つ必要があります。
入れられないなら、逃がさない。
新潟の住宅で断熱性能を高めることが大切なのは、このためです。
暖房で室内を暖めても、その熱が次々と外へ逃げてしまえば、暖房を止めた途端に室温は下がっていきます。
反対に、屋根や壁、床、窓から逃げる熱を少なくすることができれば、一度暖めた室温は下がりにくくなります。
断熱性能の違いは、数字だけではなく、暮らしているときの感覚に現れます。
朝起きたとき、室温が大きく下がっていない。リビングから廊下や脱衣室へ移動しても、急に寒くならない。暖房の近くにいなくても、部屋全体が穏やかに暖かい。
そうした環境をつくるために、断熱性能を高めることが必要になります。
そして、もうひとつ大切なのが気密です。
いくら断熱材を厚くしても、建物の隙間から暖めた空気が外へ逃げてしまえば、十分な効果を発揮できません。断熱と気密は、どちらか一方だけではなく、合わせて考える必要があります。
太陽が出る日には、その熱を利用する。けれど、太陽が出ない日が続いても、室内の暖かさをできるだけ保てるようにする。

冬の日射が少ない新潟では、晴れることを前提にするのではなく、曇った日でも暖かく暮らせる家をつくる。
それが、新潟の気候に合わせて断熱を考える、ということだと思います。
窓を小さくすればいい、ではない
熱を逃がさないことだけを考えれば、窓は小さい方が有利です。
一般に、窓は断熱された壁に比べて熱が逃げやすいため、窓の面積を小さくすれば、建物全体の断熱性能は高めやすくなります。
けれど、断熱性能を高めることだけが、家づくりの目的ではありません。
窓から入ってくる光があり、そこから見える庭や景色があります。空が見えたり、季節や時間の変化を感じたりすることもできます。
大きな窓によって、室内と外がつながり、実際の広さ以上に空間が広く感じられることもあります。そうしたものも、家の心地よさをつくる大切な要素です。

だから、断熱性能を上げるために、ただ窓を小さくすればよいとは考えていません。
どこから光を入れたいのか。どこに視線を抜きたいのか。どんな景色を室内から見たいのか。
そうしたことを考えながら、必要なところにはきちんと窓をつくる。その一方で、必要以上に窓を増やさず、窓そのものの断熱性能も高めていく。
断熱性能と、光や開放感。どちらか一方を優先するのではなく、そのバランスを考えることが大切です。
特に、冬の日射が少ない新潟では、窓を単純に「太陽の熱を取り込むためのもの」として考えることはできません。限られた光をどこから取り込み、暖かさを保ちながら、どう心地よい空間をつくるのか。
そこは、断熱性能の数字だけでは決めることのできない、設計の部分だと思います。
日射が乏しい土地だからこそ、光を考える
新潟の冬は、東京と比べて最低気温が極端に低いわけではありません。
大きく違うのは、冬の日射の少なさです。昼になっても太陽がなかなか出ず、日射によって室内を暖めることを安定して期待できない。
だからこそ、一度暖めた熱をできるだけ逃がさないために、断熱性能や気密性能を高めることが大切になります。ただ、暖かさだけを求めて窓を小さくしてしまえばよい、ということでもありません。

冬に曇った日が続く新潟だからこそ、室内に入ってくる自然光は大切です。窓から入る光、そこから見える景色、外への視線の抜け。そうしたものも、日々の心地よさをつくっています。
熱を逃がさないことと、光を取り込むこと。どちらか一方だけを考えるのではなく、新潟の気候の中で、そのバランスを探していく。
断熱性能は、数字を高めること自体が目的ではありません。冬でも暖かく、明るく、外とのつながりを感じながら過ごせること。
そのために、どこを閉じ、どこを開くのか。新潟の気候を読みながら、その答えを探していくことが、心地よい家をつくるための設計だと思います。
関連記事
新潟の冬の日射の少なさは、断熱だけでなく、室内で洗濯物をどう乾かすかにも関係してきます。室内干しの場所をどう考えるかについては、「物干スペースをつくれば、洗濯物は乾くのか」で詳しく書いています。