内外の印象の異なる「矛盾的な」家づくり

外部から見ると閉鎖的に見え、中に入ると明るく開放的な室内が広がる、そんな内外の印象の異なる矛盾的な家が居心地のよい家だと考えています。それは何故なのか、その理由を説明していきます。

外から見ると閉鎖的な家

外から見て開放的な家は、立地条件に合っていれば、明るく広がりがあって良いのですが、立地環境によっては落ち着きのない家になってしまうかもしれません。交通量の多い通りに面している立地だったり、外を歩いている人と目が合ってしまうような環境で、無闇に外に開いてしまっては、(人目を全く気にしない人なら別ですが)結局はカーテンを閉め切った生活になってしまうかもしれません。

そのような立地環境では、外に対して閉鎖的外観を作る手法が有効だったりします。外から見て閉鎖的な家は、いったん室内に入れば、安心感を与えます。家というものは本来的には外部から守られたシェルターであるべきですので、閉鎖的であるというのは理にかなっています。

上の写真の「岩室の平屋」では、前面道路に面しているため、道路側に対しては非常に閉鎖的な表情をしています。道路際の外壁が、室内空間を守るシェルターの役割を果たしています。このように道路からの距離が近い家では、道路側に開放的な窓を設けることができませんので、必然的にこのような閉鎖的な表情ができてきます。

ただ窓が一つもなく、外部(街)に対して生活感がまったく感じられない家は、街並みに対して、人が暮らす安心感を与えているとは言えません。そのような家が立ち並んでいる街は、生活感の無い人気の感じられない寂しさを感じさせてしまいます。どこかに暮らしが街に漏れ出すような仕掛けを与えることも忘れてはいけません。

岩室の平屋では、庭の木々の奥に明かりが漏れ出すことで、通りからも生活感を感じられる設えとしています。

外観とは異なる開放的な室内

室内は、外観と同じ閉鎖的な印象であってはいけません。逆に室内は明るく開放的であることが大事です。外からの視線を気にせず、カーテンを開け放し、開放的に過ごせる室内空間。そうすれば明るく軽やかな暮らしを実現することが出来ます。

開放的な室内を実現するためには、窓の設ける位置や大きさ、向きが重要です。敷地条件が悪くて、必ずしも大きな窓が設けられないとしても、空が見えるハイサイド窓や坪庭の緑が見える地窓を設けるなど、上手く工夫することで開放感を実現することは可能です。

上の写真のように開放感ある空間を実現するための前提条件として、外から守られていることが必須です。それを実現するために、いったん外観を閉鎖的に作って、室内の安心感を作り出してから、外へ開放するという手順を取ります。

外から見ると閉鎖的で守られている安心感がありつつ、一旦、中に入ると明るく開放的な空間が広がる。そんな内外の印象の異なる空間が実現できれば、居心地の良い家となることは間違いありません。