無垢材を使いたい。でも、どこで探せばいいのか、どう選べばいいのか、わからない——そんな声をよく聞きます。
気に入った無垢材を手に入れるには、ネットやカタログを眺めているだけでは辿り着けません。市場や材木屋に足を運び、実際に見て、触れて、対話しながら探していくしかない。設計者である私自身も、毎回そうやって素材と向き合っています。
この記事では、実際のプロジェクトを通して、どのように無垢材を選び、どう使っていったのかをお伝えします。正解はひとつではありませんが、何かひとつでも手がかりになればと思います。
まず自分が好きな木を知ることから
まずは、どこに無垢材を使いたいのかを決めることから始めます。ダイニングテーブルとして部屋の中心に据えたいのか、書斎カウンターに使いたいのか。使う場所が決まって初めて、どんな材を探すかが見えてきます。
多様な無垢材の中から自分の好みの材を見つけるのは、手がかりが無ければ困難です。そもそも住む方が気に入った材でなければ、手間をかけてまで無垢材を取り入れる意味がありません。自分の目で見て、触れて、気に入ったものを選ぶことが大事です。
私がよくお勧めしているのは、最初は値段を気にせず、できるだけ多くの材を見ることです。一緒に材木屋に行き、さまざまな木を見て、触って、匂いを嗅いでみる。これは好き、これは嫌い、と自分の中に指標をつくっていく。そのプロセスが、素材選びの土台になります。
好き嫌いが見えてきたら次に、なぜこの木に惹かれるのか、を探ってみてください。色なのか、木目なのか、質感なのか。理由が言葉になると、好き嫌いの法則が見えてきます。その法則をつかめば、多くの木の中から「これだ」という材が自然と目に留まるようになります。
それでも迷うときは、設計者に相談してみてください。設計者は空間全体のイメージを持っています。この材なら雰囲気に合う、このサイズなら納まりが良い、といった視点でアドバイスできます。素材選びは、一人で抱え込まなくていい作業です。
その材はその場所に入るか
好みの材がわかったら次は、その材が、使おうとする場所に入るかどうか、を確認します。無垢材は自然の形そのままですので、曲がっていたり、幅や長さが不揃いだったりと、一本一本すべて異なります。それが無垢材の魅力でもあるのですが、気に入った材が見つかっても、長さが足りなかったり、曲がりがうまく納まらなかったりと、残念ながら使えないこともあります。
大きなサイズの無垢材を使いたい場合は、設計を進める段階で先に材を選んでおくことをお勧めします。現場が始まってから、やっぱりこの材を使いたいとなっても、部屋のサイズを変えなければ入らない、となれば変更は大掛かりになります。材が先、設計がそれに合わせて動く、という順番になることもあるのです。
搬入ルートにも早めに配慮しておく必要があります。壁ができてからでは搬入できないサイズの材は、壁ができる前に現場に入れておく。重さの問題で2階に上げられない場合は、建物の建て方の際にクレーンで搬入するケースもあります。大きな材ほど、段取りが肝になります。
気に入った材がすぐに見つかればよいのですが、なかなか出会えないこともあります。そんなときは材木屋に時間をかけて探してもらう必要があります。市場や競り市をあたれば見つかる可能性はありますが、時間的な余裕を持っておくことが大切です。無垢材探しは、気長に構えるくらいがちょうどよい。
もうひとつ大事なことがあります。無垢材を単体で見ていてはいけない、ということです。無垢材は空間の中に置かれるものです。材木屋で見たときには良い感じだったのに、空間に置いたらチグハグになってしまった、というのはよくある話です。周囲の仕上げの質感、空間の雰囲気、他の素材との取り合わせ——それらを頭に置きながら、材を選ぶ必要があります。
変わり者の丸太が、空間の主役になる

今回の計画では、太鼓状に曲がった梁材を使いたかったので、事前に材木屋に材料探しをリクエストしておきました。曲がった丸太となると、当然、材木屋に加工されてストックされているものではありません。市場や競り市で丁度良い曲がりの丸太を探すか、林業業者に直接、お願いして木を切って山から輸送してもらわなければなりません。
材木屋に早めに話をしていたこともあり、市場で良い丸太が見つかったと連絡があり、早速、丸太を確認しに行ってきました。曲がり丸太といっても、一本一本、形やサイズが異なります。何本かある曲がり丸太を見比べて、空間の雰囲気に合いそうなカタチの材を一本選びました。市場では丸太が並んでいるだけですので、梁材に加工した後の姿は想像力を働かせるしかありません。
曲がった丸太のままでは使いようがありませんので、丸太を製材所へ運び、梁形に製材し、その後、乾燥ボイラーに入れてと、多くの工程を掛けて曲がり梁へと形を変えていきます。また今回選んだ丸太は太さがあり、丸太から梁材を取った残りの部分からも良質な材が取れそうでした。ただ最終的には、別の材を選ぶことになりました。一本の丸太から何が取れるか、何を活かすか——そうした判断の積み重ねも、無垢材との向き合い方のひとつです。
完成した写真です。上部天井付近に加工した曲がり梁が見えています。幅を大きめに加工し、梁の存在感を高めました。家の骨格を支える棟梁としての安心感が視覚的に感じとれます。
素材が決まったら、また設計に戻る
使う無垢材の形が決まったら、再び設計に戻ります。素材が決まって終わり、ではなく、そこからまた設計が動き始める。それが無垢材を使うときの面白さでもあります。
今回は梁の曲がりや柱の形状を模型上で検討しました。特徴的な形の無垢材は、向きや位置、高さをほんの少し変えるだけで空間の印象がガラッと変わります。
[写真上:設計時点の配置]
[写真下:最終決定した配置]
2枚の写真を見比べてみてください。梁の向きと柱の位置を変えただけです。それだけで、空間の雰囲気がこれだけ変わる。上下、左右、表裏——どこからの見え方をメインにするのか、空間のバランスや窓からの光の入り方を考慮しながら、ひとつひとつ検証していきます。素材が変われば料理の仕方が変わるように、使う無垢材が変われば、使い方にも工夫が必要です。

これまで何度も無垢材を使ってきましたが、正解がないだけに毎回、本当に悩みます。しかし、一つとして同じものはなく、正解が異なるのが無垢材の面白さでもあります。悩みながら辿り着いた答えだからこそ、その空間にしかない何かが宿る、と私は思っています。
これを言ったら元も子もないのですが、最終的には使う人のセンスで決まります。同じ無垢材でも、軽快にモダンに使うこともできますし、あえて存在感を消すこともできますし、重厚に、より特徴的に使うことも可能です。無垢材をどう料理するかは、設計者のセンス次第。決まったルールはないだけに、経験だけが頼りになります。
多額の予算をかけなくても、特徴的な表情の無垢材をうまく取り入れることで、その家にしかない空間が生まれます。大切なのは、高い素材を選ぶことではなく、その素材とどう向き合うか、です。
無垢材の選び方、木取りの方法、仕上げの種類については、それぞれ別の記事で詳しく書いています。あわせて読んでいただけると、無垢材との付き合い方がより具体的にイメージできると思います。
→ 良い木を使えば良い家になる、は本当か
→ 無垢材(天然木材)を活かすも殺すも使い方次第
→ カウンター・テーブルの無垢材を選ぶポイント
→ 無垢材の仕上げ種類とソープフィニッシュ仕上げ
