無垢材の仕上げ種類とソープフィニッシュ仕上げの手順

無垢材を選んだあと、もうひとつ大切な選択があります。どんな仕上げにするか、です。同じ無垢材でも、仕上げ次第で表情がまったく変わる。設計者として、私が仕上げにこだわる理由はそこにあります。

仕上げは、素材の最後の決断です。どんなに良い無垢材を選んでも、仕上げが合っていなければ、空間の印象は変わってしまいます。私の事務所では、仕上げを素材選びと同じくらい大切な設計行為として捉えています。

この記事では、無垢材カウンターによく使われる仕上げの種類と特徴をお伝えします。その中でも私がとくに好んで使うソープフィニッシュ仕上げについては、実際の手順も合わせてご紹介します。

仕上げが必要な理由


無垢材は、塗装しなくても使えます。ただ、そのままでは水や油汚れが表面に染み込みやすい。コーヒーをこぼしたり、手の脂が触れたりするだけで、跡が残ることがあります。

写真を見てください。左手はオイル塗装仕上げ、右手は塗装なしの無垢材に水を垂らして数分後の状態です。オイル仕上げの表面は水をはじき、拭き取れば跡が残りません。一方、塗装していない表面は水分が染み込んでいるのがわかります。水であれば乾けば元に戻りますが、油汚れやコーヒー、紅茶などは跡が残ってしまいます。

汚れがつくたびにやすり掛けをしていてはキリがありません。塗装仕上げを行うことで表面に撥水効果を持たせ、汚れにくくすることができます。

ただ私が仕上げにこだわる理由は、汚れ防止だけではありません。仕上げの種類によって、木の表情が大きく変わるからです。同じ無垢材でも、仕上げ次第で柔らかくも、力強くも、静かにも見える。その選択が、空間の雰囲気を決める最後の一手になります。

仕上げの種類と、設計者としての使い分け

塗装には大きく2種類あります。表面に被膜を作るタイプと、被膜を作らないタイプです。

被膜を作る代表がウレタン塗装です。木の表面を塗装被膜で覆い、木の呼吸を止めることで、反りや割れを抑えられます。水回りや湿乾変化の激しい場所に向いています。ただし表面がつるっとした触感になり、無垢材本来の質感は薄れます。使い込むうちにスクラッチ傷がついて表面が曇ってくるため、定期的なポリッシュが必要です。最近では艶消しで木の質感が残るウレタン塗装も出てきていますが、私の事務所ではあまり採用していません。

被膜を作らない仕上げには、オイル塗装、蜜蝋ワックス塗装、ソープフィニッシュ仕上げがあります。いずれも成分が木の表面に浸透し、撥水や防汚効果を発揮します。表面に被膜をつくらないため、木の質感がそのまま残り、触り心地が良い。木の経年変化を愉しめるのも、この仕上げの大きな魅力です。撥水効果は永遠には続かないので、年に数回、定期的に塗り直す必要があります。

3つの仕上げは、それぞれ表情が異なります。オイル塗装と蜜蝋ワックスは、水で濡らしたような濡れ色になり、杢目がくっきりと浮き出ます。しっとりとした深みのある表情です。ソープフィニッシュは、何も塗っていないような自然な風合いのまま仕上がります。さらさら、すべすべの触り心地が特徴です。

私の使い分けはこうです。優しく柔らかな雰囲気をつくりたいときはソープフィニッシュ。空間のポイントとして木を強調したいときは、オイルまたは蜜蝋ワックス。水を多用する場所にはウレタン塗装、という順番で考えます。

ひとつ、実践的なアドバイスをお伝えします。無垢材を選ぶときは、必ず水で濡らして表情を確認してください。オイル仕上げにすると、水に濡らしたときに近い表情になります。濡らすと木の印象ががらっと変わる材もあれば、まったく変わらない材もあります。オイル塗装で仕上げたら、最初見たイメージとは違ってしまった——とならないよう、購入前に必ず確かめることをお勧めします。

上の写真は、アズキナシの無垢材の右半分を水で濡らしたものです。濡れた部分は赤みが強くなり、杢目もくっきりと浮き出ているのがわかります。オイル仕上げにすると、この濡れた状態に近い表情になります。

ソープフィニッシュ仕上げの手順

私が最もよく使うのがソープフィニッシュ仕上げです。石鹸水を木の表面に塗るだけですので、誰でも簡単にできて、どんな木に塗っても失敗がありません。手軽にできなければ定期的なメンテナンスも億劫になってしまいます。施主の方が自分でメンテナンスできる、というのも私がこの仕上げを好む理由のひとつです。

用意するもの

  • 無添加せっけん(固形)
  • お湯
  • カッター
  • 食器洗い用スポンジ
  • 紙やすり(#400番程度)

せっけんは必ず「無添加」を選んでください。漂白剤や着色料が含まれているものを使うと、木の表面が変色してしまいます。

手順

①せっけんを削る

固形せっけんをカッターで削ります。えんぴつを削る要領で。お湯1Lに対して、大さじ3〜5杯程度のせっけん削り節が目安です。濃いめにしたい場合は多めに入れても構いません。

②ソープ液をつくる

お湯にせっけん削り節を入れ、よく混ぜて溶かします。泡が立ち始めたらソープ液の完成です。お湯は高めの温度の方が泡立ちが良くなります。やけどしない程度に熱めのお湯を用意してください。泡立ちが良いほど、仕上がりが良くなります。

③塗る

食器洗い用スポンジのスポンジ面(ざらざらの研磨面ではありません)にソープ液をよく染み込ませ泡立て、無垢材の表面を軽く撫でていきます。木の表面に泡を擦りつけるような感じで、隅々まで塗り残しのないように。せっけん水で濡れた部分は色目が濃くなりますが、乾けば元の木の表情に戻りますので、気にせず手早く作業しましょう。

④拭き取って乾かす

スポンジで全体に塗ったら、塗りむらがないように布で表面を軽く拭き取ります。風通しの良い日影において、おおよそ30分程度、表面を乾かします。濡れている状態では濃いめの色ですが、乾いていくにしたがって、元の色目に戻っていきます。

⑤やすり掛けして完成

乾燥すると木の表面が少し毛羽立ちます。#400番の紙やすりで軽くやすり掛けしたら完成です。強くかけると、せっかく表面にできたせっけん被膜まで削り取ってしまいます。あくまで表面を整える程度に、軽くかけるのがポイントです。下の写真は、塗装完了後です。塗装前と比べると、やや木目がはっきりしたように見えますが、よく見ていなければ気がつかない程度です。

仕上げは、素材選びの延長線上にあります。どんな空間にしたいか、どんな暮らしを望んでいるか——その答えが、仕上げの選択に繋がっていきます。

ソープフィニッシュは、木をありのままに見せたいときの仕上げです。オイルや蜜蝋ワックスは、木の表情をより豊かに引き出したいときに選びます。どれが正解というわけではなく、その空間とその人に合っているかどうか、が判断の基準になります。

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