ダイニングテーブルに無垢の一枚板を使いたい。書斎カウンターを個性ある無垢材にしたい。そう思いながらも、どう選べばいいのか、どこで探せばいいのか、わからないまま時間だけが過ぎている——そんな話をよく聞きます。
無垢材を使いたいという相談は、年々増えています。共通しているのは、選び方がわからない、という戸惑いです。値段の幅が広すぎる、種類が多すぎる、どこで探せばいいかもわからない。手がかりがなければ、途方に暮れるのは当然です。
この記事では、無垢材を選ぶときの手がかりになるポイントを、実際の相談事例をもとにお伝えします。完璧な正解はありませんが、何かひとつでも参考になれば幸いです。
手がかりは、この3つから
一言で無垢材といっても、赤みのある重厚な無垢材、白い柔らかな表情の無垢材、長さのあるカウンター材、幅のあるテーブル材、などなど数えきれないほど木の種類があります。どこから手をつければいいのか、途方に暮れるのも無理はありません。
といっても、無限に選べる訳ではありません。使う場所が決まっていれば、必要な長さや幅などの寸法も分かっているでしょうし、予算にも限界があるはずです。まず選ぶための手がかりとして、以下の3点を決めることから始めると良いと思います。
購入予算(いくらの予算で手に入れたいのか)、必要な大きさ(長さ、幅、厚さなどの材寸法)、自分の好み(好き嫌い)。この3つが決まれば、選べる材はぐっと絞られてきます。次の章から、それぞれについて説明します。
購入予算について
無垢材は同じ大きさの板でも、樹種や杢目などの違いで1枚数千円から上は数百万までと大きく金額が異なります。無垢材の値段は、おおむね木の種類によって決まりますので、大体の予算が決めてあれば、この辺りの樹種で選べばよいのだな、と目途がつきます。杉や松(パイン)などの成長の早い木は安め、ウォルナットやカリンなどの成長が遅い木は高め。国内で比較的手に入りやすい木は安め、手に入りにくい木は高めになります。また木目の詰まった材や特殊な杢目が出ているほど金額が上がります。
必要な大きさについて
使う場所によって必要とする大きさは変わってきます。テーブルであればある程度の巾が必要でしょうし、カウンターであれば長さが必要になってきます。無垢材は自然の木を製材したものですので、長さ、幅、厚さとも全て違っています。大きめの寸法で無垢材を購入し、カット加工すれば必要な寸法の材は手に入りますが、必要以上に大きな材を買う分、割高になってしまいます。ちょうど良い寸法の材を探すように心掛けてみてください。おのずと選べる材が絞られてくるはずです。
自分の好みについて
予算も手ごろで、必要な大きさが確保できる材が無事に見つかったとします。しかし一番大切なのは、その無垢材を自分が気に入るかどうかです。この点だけはアドバイスをすることができません。個人的な好き嫌いですので。無垢材をじっと眺め、触りごこちを試し、匂いを嗅いでみてください。この木、好きだな~となれば買い、あまり感情移入できないな~となれば、止めておく。無垢材は、一度購入したら長く使うものですので、気に入るかどうかはとても重要です。もし購入するまでに時間的余裕があるのなら、その場では購入せず、一度家に帰ってじっくりと考えてから決めるのが良いと思います。その場の勢いだけで決めてはいけません。(場合によっては、材木屋さんに取り置きしておいてもらう手もあります。)
樹種の選び方——色・硬さ・木目で絞る

樹種は限りなくあります。といっても、国内市場で流通している手に入る材の中から選ばなくてはいけないので、無限ではありませんが。樹種全てを挙げていてはきりがないので、選ぶ際に考えておく指標をいくつか挙げます。
まず色目。濃い赤みのある木が好きか、白く淡い木が好きか。次に木目。はっきりとした力強い木目が好きか、おとなしく静かな木目が好きか。
硬さも樹種によってそれぞれです。硬い木は傷がつきにくく、柔らかい木は温もりがある。カウンターや床など、毎日触れる場所に使うなら、質感も大切な指標です。ざらっとしたラフな触り心地が好きか、さらっとした滑らかな質感が好きか。温かみを感じる木、冷たさを感じる木——触れたときの感覚は、目を閉じて確かめてみてください。
見た目の印象だけでなく、香りや質感も大切です。香りが強い木もあれば、ほとんど香りのない木もあります。杉や桧は香りが強く、空間に入ると木の匂いが漂います。好きな方には大きな魅力ですが、苦手な方もいますので、実際に嗅いで確かめてみてください。
端部の加工によっても印象が変わります。端部に樹皮が残っている材は荒々しさがあり、カットしてある木はモダンな雰囲気を持ちます。
参考まで指標をリストにしておきます。
- 色目:濃い―淡い
- 木目:はっきりとした木目-おとなしい木目
- 硬さ:硬い―柔らかい
- 触り心地:ざらっとしたラフさ―さらりとした滑らかさ
- 温かみ:冷たい―暖かい
- 香り:香りがある―香りがない
- 端部の形状:耳あり―耳なし(端部に樹皮の部分が残っているか―カットされてストレートになっているか)
これらの指標を頭に置きながら材木屋に行くと、漠然と眺めていたときとは違って、自分の好みの木が目に留まるようになります。
無垢材の費用はいくらかかるのか
無垢材の値段はそれこそピンからキリなのですが、それでは参考にならないので、仮に一枚20万円程度の表面を仕上げていない無垢板をテーブル材に仕立てるとした場合の金額を計算してみます。
無垢板 20万円
+表面サンダー(やすり掛け)仕上げ2万円
+オイル塗装仕上げ1万円
+輸送料2万円
+別途テーブル脚の用意4万円
合計30万円→消費税を足して33万円前後。
33万円と聞くと高く感じるかもしれません。でも無垢材のテーブルは、それこそ一生使えるものです。もし50年使うとしたら、33万円÷50年=6,600円/年。年間6,600円で、世界にひとつだけの無垢材テーブルを手に入れることができます。
また無垢材は、傷がついても削り直せば元に戻ります。経年変化で色が深まり、使い込むほどに味わいが増していく。そういう素材です。長く使うことを前提にすれば、決して高い買い物ではないと思います。
なお上記はテーブルに仕立てる計算をしましたが、カウンターや飾り棚として建物に組み込む場合は、大工さんの取付加工費用が別途かかります。
加工と木取り——どこをどう使うかで表情が変わる

できればカット加工せずにそのまま使えれば一番なのですが、カウンターとして組み込む場合など、その場所に入るようにカットする必要が出てきます。その際に大切なのは、その無垢板のどの部分を見せるかを考えてカットすることです。節の出ている部分をちょうど真ん中に配置する、杢目の出ている方を手前の見える側に配置するなど、どこをカットし、どの向きにするかで木の印象がずいぶんと変わります。どの部分をどう使うかを考えることを「木取り(きどり)」と言います。
購入前には必ず、立て掛けてある無垢材を横に倒して置いて、見せてもらいましょう。立て掛けてみていた感じとはまた違って見えるはずです。試しに左右の向きを変え、次に裏返してみてください。向きを少し変えただけでも、印象が違って見えるはずです。最初はあまり印象が良くなかったけど、見る向きを変えてみたら印象が良くなった、ということもよくあります。
木取りが決まったら、木の表皮の部分=耳(みみ)をカットするか残すかを決めていきます。耳を残せば、木らしい荒々しさが残りますし、耳をカットすれば端正な整ったモダンな印象になります。
次に仕上げの方法を決めていきます。表面をサンダー仕上げにすれば、表面が平滑になり、杢目が目立つようになります。材木を製材する際に残ったノコ目(のこぎりの歯跡)をあえて残す方法もあります。よりワイルドな表情を求めるのであれば、ノコ目のまま、といった選択肢もあります。
木取りの考え方や実際の作業については、こちらの記事で詳しく書いています。あわせて読んでいただけると、より具体的にイメージできると思います。
→ 無垢材(天然木材)を活かすも殺すも使い方次第
無垢材の欠点(デメリット)は

無垢材も、良い点ばかりではありません。自然の素材であるだけに、ひび割れが入ったり、反りが出たりといった可能性がない訳ではありません。きちんとした材木屋さんで購入することはもちろんですが、もし仮にそのような現象が起こった場合には、引き取り修理や現場修理で対処してもらえるところから購入することをお勧めします。
また定期的なメンテナンスも必要になります。といっても大げさなものではなく、年に数回オイル拭きをしてあげる程度です。メンテナンスが面倒な方にはお勧めできないかもしれません。ただ、メンテナンスを繰り返すことで、木の表面は年々つやが出て表情を変化させていきます。経年変化が愉しめることは、無垢材の特典です。
傷がつくこともあります。でも無垢材の傷は、紙やすりで削れば目立たなくなります。集成材や既製品カウンターでは同じようにはいきません。直しながら、育てながら使っていける——それが無垢材という素材の本質だと私は思っています。
無垢材を選ぶことに、完璧な正解はありません。予算、大きさ、好み——この3つを手がかりに、足を運んで、触れて、自分の感覚を信じて選ぶしかない。でもそのプロセス自体が、家づくりの醍醐味のひとつだと私は思っています。
迷ったときは、一人で抱え込まずに設計者に相談してみてください。素材選びは、設計の一部です。一緒に考えることで、思いがけない素材との出会いがあることも少なくありません。
無垢材の木取りや仕上げの方法、素材の価値観については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
→ 無垢材(天然木材)を活かすも殺すも使い方次第
→ 無垢材の仕上げ種類とソープフィニッシュ仕上げ
→ 無垢材の選び方と効果的な使い方
→ 良い木を使えば良い家になる、は本当か。
