以前、木製玄関ドアの断熱性能を計算する記事を書きましたが、2024年4月に熱貫流率等の計算方法が改定されましたので、改めて木製玄関ドアがどの程度の断熱性能を持つのかを計算してみます。
計算方法の詳細に関しては、国立研究開発法人建築研究所の技術情報に掲載されています。同様の方法で木製ガラス引き戸の断熱性能を計算することができます。計算方法が明示されたことにより、計算の自由度が広がったとも解釈できます。
木製ドアの断熱性能を計算する
計算条件は、以下の通り(基本的には以前の仕様と同様)です。
【ドア総厚44ミリ】
内部にネオマフォーム断熱材t25ミリ充填
下地フレームは木製桟木25×25[@150で製作
両面を合板t4ミリ張りの上、木製突板t5.5ミリで仕上げ
計算機をたたいて計算してみると、木製ドアの熱貫流率は、U=1.96W/㎡・Kとなりました。熱貫流率は、熱の伝えやすさを示す数値ですので、数字が小さい程、断熱性能が高いと判断できます。以前の計算方法では、U=0.87でしたので、性能が大幅に下がったことになります。
もし仮に計算を行わない場合は、木製ドア(ガラス無し+ポスト口無し)の断熱性能は5.44W/㎡・Kとして評価されるので、かなり低い断熱性能となり、建物全体の断熱性能値を押し下げてしまいますので、きちんとした断熱評価を行うのであれば、数値計算した方が得策です。
今回の計算方法では、下地材の構成面積比によって計算しているので、下地材の数が多ければ多い程、数値が低下していきます。また、以前は計算に盛り込んでいなかった錠の断熱欠損も計算に見込んでいます。断熱数値を上げたいのであれば、充填する断熱材の厚みを厚くするのが有効で、厚みを増しても加工手間代は同じですので、価格を大幅に上げることなく、対応することができます。
今回計算で求められたU=1.96W/㎡・Kという数値は、かなり実情に近い数値ではないかと考えられます。例えば、YKK APの玄関ドア「ヴェナートD30」のD2仕様の熱貫流率は、1.79~1.94W/㎡・K、リクシルの玄関ドア「ジエスタ2」のk2仕様の熱貫流率は1.79W/㎡・K~となっていることから、それらの製品と同等程度からやや低めの性能といった扱いです。
木製ドアを製作する利点
以前も書いた通り、製作で玄関ドアを作る利点は、デザインの自由度が高く、設計の幅が広がることです。既製品ドアの中に気に入ったデザインのドアがなかったり、建物の外観に合うドアが無かったり、個性的なオリジナルなドアが見つからない場合、断熱性能を担保した上で製作で玄関戸を作れることは、大きな利点です。表面材の樹種から、板を貼る方向、板の幅、塗装色など、どんな好みにも合わせて製作することができます。
また既製品の木製ドアは、価格がとても高く、なかなか手が届かないことが難点ですので、費用を抑えた上で採用できるのも良い点です。
玄関戸が地元の建具屋さんで製作できるのであれば、地元の職人さん達へお金が回り、職人たちの技術保存や技術向上にも繋げることができます。もし既製品の中によいドアが見つからないようなら、建具屋さんに相談してみるのも良いかもしれません。