断熱性能だけでなく、気密性能も合わせて考える


建物の断熱性能を上げるには、断熱材の厚みを増やす、サッシの性能を上げる、などの方法で実現できますが、それだけでは本当の意味で快適な建物が実現しているとは言えません。断熱性能は高いのに、省エネでない建物も世の中には存在しています。高断熱住宅を作るためには、断熱性能だけでなく、気密性能も合わせて確保することが必須になります。

気密性能が低い建物というのは、つまり、隙間が多い建物ということです。特に木造建築は、工場内で一体成型して作ることはできず、現場で多くの部材を組み合わせて作るので、どうしても各部材の間に隙間が出来てしまいます。隙間の多い建物では、冬の暖房期には、暖まった空気が屋根裏から外部へ逃げ、床下からは冷たい外気が入ってきてしまいます。その空気の漏れがエネルギーロスとなり、冷暖房効率が落ちてしまうのです。

また、気密処理が適切に行われていないと、暖房効率が落ちるだけでなく、壁内結露が起こったり、せっかく入れた断熱材の効果が発揮されなかったり、とマイナス作用が起こる可能性があります。

そのようなことが起こらないよう、断熱性能と気密性能は、必ず合わせて考える必要があります。

2種類の気密試験

建物に気密性能がどの程度あるのかを調べるためには、現地で「気密測定試験」を行う必要があります。プログラム計算やシュミレーションなど、パソコン上で行う断熱性能計算とは異なり、「気密性能」は現場で測定しなければ、数値を明らかにすることはできません。

気密測定には、工事の途中(気密フィルム施工後)に行われる「中間気密測定」、または、工事完了時に行われる「完成気密測定」の2種類があります。中間気密試験は、手直しが出来る工事途中の段階で試験を行うことで、施工不良を無くす意図があります。また工事完了時に行う気密試験は、最終的な気密性能を測定するために行うものです。

気密試験は写真のように、現場にメガホン状の送風機を設置し、室内側に負圧を掛けて屋内外に気圧差を作りだし、隙間の面積を計器で測定します。

C値(シー値)とは何か


気密性能は「C値(シー値)」という値で示され、数字が小さいほど、気密性能が高まります。単位は「/㎡」で、床面積1㎡当たりの隙間面積を表します。

例えば、100㎡の住宅で、C値=0.5㎠/㎡だった場合、100×0.5=50㎠が、C値=1.0㎠/㎡だった場合、100×1.0=100㎠が、建物全体の隙間になります。50㎠=10㎝×5㎝の隙間があるということです。この隙間の面積を「相当隙間面積」と呼びます。

高断熱住宅の目安として一般的に、C値1.0以下が求められます。C値が1.0以上だと、隙間から逃げる熱量が大きく、暖房効果が落ちてしまいます。C値が1.0を下回れば、隙間からの漏気の影響が低下します。

C値は少なければ少ないほど良いと思ってしまいますが、C値が1.0以下であれば気密効果は得られ、C値が0.5を下回った後はいくら数値が落ちても実際の影響はほどんどないとの実験データが得られています。気密処理に掛かる施工コストとのバランスを考慮して、数値目標を設定することが大切です。

工事途中で気密試験を行うワケ


工事途中で中間気密試験を行うのには、理由があります。工事が進み仕上げ材が貼られた後では、試験で空気が漏れていることが分かったとしても、手直しすることが困難です。仕上げたボードを再び剥がして、手直しを行わなければいけないことになります。折角きれいに仕上げたのに、壁に穴を開けたり、天井を剥がしたりしたのでは、大きな手間と時間が掛かり、補修で直したところは最終的な仕上がりに影響が出てきてしまいます。

そのような事が起きないよう、仕上げをする前の工事途中で、気密試験を行います。室内に圧を掛けるので、隙間のある部分からは、手を当てれば風が吹き出していることが簡単に分かります。工事途中で気密フィルムや気密テープが見えている状態ですので、漏気が分かった時点で、手直し対応が直ぐに出来ます。

つまり、工事途中で試験を行うことで、気密性が担保できることになるのです。試験と聞いただけで、大工さんや施工者は震えあがってしまうかもしれませんが、落とすための試験ではなく、施工精度を保証するための試験ですので、ご心配なく。