工事費を抑えながら耐震性を上げる

構造計算

「越後曽根の平屋」プロジェクト。現在、構造計算を行って検証を進めています。建物を設計する際、出来上がる建物が美しく、かつ、居心地が良いことを求められるは当然ですが、それだけでは建物として完全とは言えません。そこに耐震性が加わることで安全性が増し、より建物としての完成度が上がります。

建築基準法には、小規模な木造建物は構造計算しなくとも、定められた仕様規定を守ることで構造的安全性があると見なす「仕様規定」が定められています。つまり、構造計算までしなくとも良いという緩和規定(=簡易的な壁量計算)があります。

現時点では木造であれば、2階建て以下かつ延床面積500㎡以下であれば、必ずしも構造計算を行う必要がありませが、法改正施行の2025年4月以降、平屋建てかつ延床面積200㎡以下に緩和対象範囲が縮小され、木造2階建ては「新たに定められる予定の簡易的な壁量計算」、または「許容応力度計算(構造計算)」が必須となります。特に多雪地域では、簡易的な壁量計算を選択した場合、柱サイズが105角では規定を満たすことができず、すべて120角サイズの柱が必要になる可能性があります。

今回のプロジェクトは木造平屋の住宅ですので、法令上は構造計算の義務はないのですが、建て主からより確実に耐震性能を上げたいとの要望があったため、「許容応力度計算」という構造計算方法を採用しました。

耐震性能を上げると、建設費も上がるか?

梁材

建物の耐震強度、つまり、耐震等級には1~3まで3等級あり、最も耐震性が高いのが耐震等級3です。単純に耐震性能を上げていくと、それに比例して建設費も上がっていくと思われるかもしれませんが、構造計算を詳細に検証することで、同時に費用を抑えることも可能です。

建物には個所によって、大きな強度が必要な部分とそこまで強度が必要でない部分があります。既に十分強度のある部分の強度をいくら増しても、それ以上、建物全体の強度は上がりません。逆に強度の弱いウィークポイント部の強度を上げることができれば、建物全体の強度、つまり、耐震性を効率よく上げることができます。

構造計算を行うことで、どの部分の強度に余裕があって、どの部分の強度が弱いのかを明確に捉えることができます。余裕ある部分は部材寸法を削り、余裕のない部分は部材寸法を上げて強度を増すことで、適切に構造材の強度を割り振ることができます。ただ闇雲に強度を上げるのではなく、適材適所、きちんとバランスよく部材の強度を上げれば、建設コストを抑えて耐震性能を上げることができます。柱梁は部材寸法が大きくなれば、材料体積が増えて、材料費が上がりますので、部材寸法を抑えることがコストダウンに繋がります。

また、部材寸法だけでなく、施工性や工事費用も考慮して構造検証することも大切です。例えば、木造建物の耐震要素である面材耐力壁は、使う材料はそのまま、釘の間隔を増し打ちするだけで、耐震強度が上がります。釘を増し打ちするだけなら多少の大工さんの手間代はかかってとしても建材費は変わりなく、少しのコストアップで耐震性能を上げることができます。

構造計算をして安全性を担保する

梁を飛ばして大空間を実現したい、大開口窓を設けたい、など設計を進めている際には、さまざまなアイディアが浮かんできます。それらのアイディアを実現するために、きちんとした理論に基づいた構造計算が必要になります。その建物にお住まいになる方の安全性に関わることですので、構造的に成り立っているのかどうか、設計者のなんとなくの感覚や今までの経験だけで進めることはできません。

また近年、各地で中規模地震が頻発しています。もはや日本中どこにいても、この土地だから安全だということはできません。いつ起こるか分からない中・大規模地震に対する安全性を構造計算によって担保することは、もはや必然となっているように思います。新潟県内であれば、大地震の発生確率を考慮した低減係数0.9を使うことができるのですが、日本全国どこで地震が起こるか分からない今、ほんとうに1割減らして構造計算をして良いのか、設計者としては判断に迷うところです。今回の計画では、建て主の耐震性能に対する要求が高いことを鑑みて、低減係数を使わずに構造計算を行っています。

構造計算を行えば、より詳細に一本一本の梁や柱にかかる力が見える化でき、安全性を確認できます。コストを落とすために余計なぜい肉部分をシェイプアップするのは良いのですが、どこまで削っても安全なのかは、構造計算してみなければ分かりません。コストダウンしたために構造耐力が著しく下がってしまって意味がありませんので。

構造計算を自社で行う

構造打合せ
現在、木造の建物であれば、自社で構造計算を行うようにしています。構造計算を外部委託業者へ出した場合、ただプログラムの計算エラーを消すだけの作業になってしまう可能性があるからです。

構造計算はパソコン上で構造解析プログラムにより行うのですが、構造部材を入力すれば、強度不足の個所をエラー表示で教えてくれます。ただ単純にエラーを消すように修正を行えば、プログラム上では構造強度をクリアすることはできるのですが、本当にその修正が適切であるかどうかは、きちんと検証を行ってみなければ分かりません。

構造計算を簡単に済まそうと思えば、部材強度を上げてオーバーめに入れておけば、計算をクリアすることは直ぐにできるのですが、そんなことをすれば、建設費が上がってしまいます。きちんとした検証を行うのであれば、どうしても時間を掛けて自社で構造計算を行う必要があります。

越後曽根の平屋完成見学会を開催します