「岩室の平屋」では、冷暖房に床下空調エアコンを採用しています。この空調方式は、光熱費を抑えながら冷暖房ができることが利点ですが、それ以上にエアコンが見えないすっきりとした空間を作れる点も、大きな魅力です。
床下エアコンは、1階の床下にある空間を空調チャンバーとして利用する方式で、特別なシステムは必要なく、一般的な家庭用壁掛けエアコンを設置することで実現しています。
室内の温度だけでなく、冬の間は、床下空間全体を暖めるので、まるで床暖房をつけているような、柔らかな暖かさを足裏に感じることができます。床下エアコン暖房は、床暖房と異なり、暖める温度が低いので床に無垢フローリングを使うことができます。
また夏季でも床下冷房を行うことで、ある程度、部屋の温度を下げることができます。ただし、冷たい空気は下に溜まってしまうため、ある程度の風量で吹かないと冷気を吹き上げることが出来ず、部屋全体を均一に冷房するのは難しいかもしれません。
写真の「岩室の平屋」では、夏場の風量を上げるため床下にサーキュレーターを仕込んで対応しています。最近は、吹き出し口に取り付けるブースターも開発されていますので、そちらを設置することで夏場の冷房効果を上げることも可能です。
床下エアコンですっきりした空間を実現する
こちらの写真の中、エアコンはどこに設置してあるでしょうか?答えは、リビングコーナーに置いたベンチ型家具の下です。写真の左下、ルーバー状になっている部分にエアコンが仕込まれています。ぱっと見では、どこにあるのか分からない位の存在感になっています。(実際に訪れた人で、エアコンの場所に気がつく人の方が少ないかもしれません)
通常ならエアコンは、壁の上部に設置されるので、その見た目をどう隠すか、設計者としていつも頭を悩ますのですが、床下に納めることで写真のようにすっきりとした空間を簡単に実現することができます。床下エアコンの冷暖房効率もさることながら、見た目が良いということも、この方式を採用する大きなメリットです。
今回は、ベンチ家具を一体型にすることでエアコンを隠しています。ルーバーの奥にうっすらとエアコンの影が見えています。箱の下は暗がりとなるので、白いエアコンでも思った以上に目立ちません。もしもっと目立たせたくないなら、ルーバー裏に黒いメッシュシートを張れば、更に目立たなくなります。
エアコンから吹き出した暖気(冷気)は、床下空間を通って、床に設けられたルーバー吹き出し口から吹き出してきます。フローリング床に合わせて、目立たないように、吹き出し口には木製ルーバーをはめ込んでいます。
こちらの床ルーバーは、比較的自由にどこにでも設置できるので、空調を効かせたい場所へ集中的に設けることができます。空調を効かせたい場所、あまり効かせたくない場所、設置個所を選ぶことで温度調整することが可能です。
床下エアコンを設置する際のポイント
エアコン前のルーバー枠は、マグネット式で簡単に外せるようになっています。こまめにメンテナンスを行うためには、簡単に取り外しができることが大切です。
写真に見えている通り、取り付けてあるのは家電屋さんで購入できる一般的な壁掛けエアコンです。家電屋さんで簡単に手に入るのであれば、もしエアコンが壊れたとしても、特殊な工事は必要なく、簡単に交換が可能です。エアコンなどの設備機器は、絶対に壊れないなんてことはありません。故障した際にも、容易に交換できるよう考慮しておきましょう。
エアコンの機種によっては、温度感知センサーがついている場所が違ったり、リモコン受信部の位置が違っていますので、機種を選ぶ際には注意が必要です。が、かなり技術的な話になるので、ここでは割愛させていただきます。もし詳しく知りたい方は、問い合わせください。