私の事務所では、外装材に自然素材である木板張りをよく使うのですが、その外装に馴染む玄関ドアとして、既製品のアルミ製ドアでなく、自然素材の木を張った木製建具ドアをよく採用しています。玄関ドアに自然素材を貼ってあると、家に帰ってきた際、まるで自分を迎えてくれるような温かみを感じるのも、木製ドアを採用する理由です。
木製玄関ドアの断熱性能を計算してみる
その木製玄関ドアですが、2022年4月以降、建築物のエネルギー消費性能の計算方法が変更となり、今までの仕様規定にある断熱性能値が使えなくなりました。これまで木製建具(断熱積層構造+ガラス無し)ですと、熱貫流率U=2.33W/㎡・Kで計算して良かったものが、2022年4月以降はU=5.61W/㎡・Kと約半分も性能を落として計算しなければなりました。(熱貫流率は数値が小さいほど、断熱性能が高くなります。U=5.61W/㎡・Kということは、断熱材も何も入っていないただの内部がスカスカの内装木製ドア以下の断熱性能とみなして計算しなさい、という意味です。)
実際には木製ドアの内部には断熱材を充填して製作するので、そこまで数値が悪い訳はありません。建築研究所が規定するエネルギー消費性能の計算方法をよく読み込むと、但し書きがあり、JISの計算式に基づいて実際の仕様で計算した場合にはこの限りではない、となっています。
ということでしたので早速、木製ドアの断熱性能を手計算で算出してみました。ちなみにドアの仕様は、以下の通りです。
【ドア総厚44ミリ】
内部にネオマフォーム断熱材t25ミリ充填
両面を合板t4ミリ張りの上、木製突板t5.5ミリで仕上げ
上記仕様で手計算すると、木製ドアの実際の熱貫流率U=0.87W/㎡・Kとなりました。一般的な仕様数値5.61と比べ、6.4倍も断熱性能が高くなりました。アルミ玄関ドアの高断熱仕様が0.9W/㎡・Kですので、ほぼ同等の断熱性能があると考えられます。参考までに断熱材を入れない無垢のドアとして計算してみると、U=0.50W/㎡・Kとなり、無垢仕様でも断熱性能はかなり高くはじき出せます。
ただし、数値は計算値であり、実験値ではありませんので、その数値がそのまま採用できるかというと、そこは注意が必要です。そのまま鵜呑みにするのではなく、現実的には計算値よりも実際には数値が落ちると考えて設計することが肝要です。また木製ドアの場合、気温や湿度によって反りが出ますので、気密性の面で難点があります。木製建具では、建具自体の断熱性能よりも、気密性をどうやって担保するかに力を注ぐことが重要です。
地元の建具屋さんで玄関ドアを作る
大事なポイントは、木製建具でもきちんとした仕様で製作すれば、断熱性能を評価できることです。HEAT20レベルの高断熱性能の建物に木製ドアが採用できるのであれば、設計デザインの幅は大きく広がります。
また既製品として販売されている高断熱仕様の木製ドアは、まだまだ価格が高くなかなか手が届きません。地元の建具屋さんでも作れるのであれば、金額を抑えた上で手に入れやすい利点があります。どうしても木製ドアを採用したい場合、地元の建具屋さんに相談してみるのもよいかもしれません。