ダイニング空間の照明デザインのコツ

季節はすっかり冬。陽が落ちるのがずいぶんと早くなりました。この季節、照明をつけている時間が長くなりますが、今回は、ダイニング空間を照明するコツについて書きます。

住宅くらいの比較的小さな建物では、照明デザイナーに頼らず、設計者自らが照明計画を検討し、照明器具の選定や配置を決めるのですが、ふだん私が気にしている照明デザインのポイントを簡単に説明したいと思います。

照明は、ただ空間を明るくするためだけのものではありません。その灯りで、心地よい時間や豊かな暮らしを作り出すことができます。きちんと考えて配置することで、予想以上の効果を上げることができますので、ぜひ取り入れてみてください。

あえて暗めの空間に

私の家では、ダイニングスペースにダウンライトも、シーリングライトも取り付けず、ペンダント照明のみでライティングしています。一般的な住宅と比べると、照度はかなり暗いかもしれません。が、あえて意図的に暗くしているのです。

人間の目は、明るさを照度で感じるのではなく、明暗の対比で感じています。周りが一様に明るい環境に、どんなに明るい照明を配置しても、明るく見えません。ですが同じ照明を、やや暗めの空間に持ってくると、周りの明るさとの対比で先ほどよりも明るく感じます。そのような対比効果を利用して、空間を印象的に見せることを意識しています。

ダイニング照明

ダイニングテーブルの上だけを効果的に明るくし、その他の周辺部を暗めにする。そうすることで、空間に奥行きが生まれます。明暗のない、のっぺりとした雰囲気になるのを避けるため、空間全体を均一に照らすような照明器具は、あまり採用しません。

照明デザインをする際に気をつけるのは、明るい場所を作ることをイメージするのではなく、暗い場所をどうやって作るかを優先的に考えることです。空間が暗すぎると住まい手からクレームが来るのではないかと、作り手側は、ついつい明るめに計画をしてしまいがちですが、そこは自信をもって暗めに計画を進めることです。(ただ本当に暗すぎて、本が読めないとか、食事ができないというのでは困りますが。)適度な暗さが、落ち着きのある空間を実現するのです。

ペンダント照明の吊り下げ高さ

ペンダント照明吊り下げ高さ

ダイニングテーブル上にペンダント照明を吊り下げる場合は、できる限り低めに取りつけるようにします。光源を低くすることで、テーブルの上面だけが照らされ、他の部分は陰になり、明暗コントラストのある印象的な空間へと変化します。また同時に、明るさの重心が下がることで、部屋全体が落ち着いた雰囲気へと変化していきます。

上の写真は、照明器具の高さをテーブル上、60cmで設置しています。低くすればするほど、テーブル上の照らされるエリアが狭くなり、より印象的な雰囲気になるのですが、あまり低くしすぎると椅子に座った際、照明器具が視界に入ってきてしまうので、そこは注意が必要です。

テーブル上60cmを基本とし、その空間の雰囲気に合わせて数センチ単位で高さを変え、最終的な高さを確定します。たった数センチと思うでしょうが、その数センチの差で、雰囲気がずいぶんと変わります。ぜひ試してみてください。

ダウンライトで照明する場合は

ダイニングテーブル照明

ペンダント照明を吊り下げない場合は、テーブルを置く位置の上に天井ダウンライトを複数、集中的に配置します。(間隔を開けず、集中的にという点が重要です)ダウンライトを複数灯、集中配置することで、テーブル中心付近の明るさが増幅され、周辺部に向かって明るさのグラデーションができ、美しい配光バランスになります。可能なら広角タイプでなく、狭角タイプのダウンライトを選ぶことも効果的です。

もし照明計画時に、テーブルを置く位置が決まっていなかったり、テーブルの大きさが決まっていない場合は、天井に照明ダクトライン(ライン状の照明配線器具のこと。)を設置することで対応します。テーブルの配置が決まってから位置を決めて、照明器具を取り付けることが可能ですし、後で灯数を追加することもできます。そうすることで、自由にテーブルの向きを変えることができるようになります。

多灯使いがおススメ

当然、ダウンライトだけでなく、ペンダントライトやブラケットライトと併用することでより自由度が広がります。複数の照明を取りつける場合、スイッチ一つですべての照明をオン・オフをするのではなく、照明エリアや照明器具ごとにオン・オフできるようにすることが個人的におススメです。

テーブル上だけ明るくしたい時はペンダント照明だけをオン、モニタで映画を見たい時はブラケット照明だけをオン、部屋全体を明るくしたい時は全てをオンと、その時々によって、明るさを使い分けることが可能になります。

電球の種類について

LED電球

電球については、この記事を書いている2021年現在、消費電力を抑えたLED電球が主流となっています(LEDの電力消費量は、白熱電球に比べ1/6と省エネルギーです)。電球と一言でいっても、電球色、昼光色、蛍光色と大きく分けて3種類の色味があります。電球色がオレンジっぽい色の光、蛍光色が青みがかった色の光、昼光色がその中間色です。

私は、温かみのある雰囲気を作りたければ電球色、少しクールな雰囲気を作りたければ昼光色、と使い分けています。各電球メーカーとも少しづつ色味が異なるので、商品に表示されている色温度(K=ケルビンという数値で示されています)を必ずチェックすることが肝心です。3000K付近であれば温かみのある電球色、600K付近ですと青みがかった蛍光色となります。

また、色温度だけでなく、演色性にも気を使いましょう。演色性とは、自然光で見たときと同じような色を再現できるかを数値で表したものです。テーブルの上では、食事をしたり、雑誌を読んだり、手紙を書いたりと、さまざまなことが行われます。テーブルの上にあるものが、美しい色味で見えるよう、演色性の高い電球を選ぶことを心掛けることも大事です。