住まい手自らが関わる家作り

家は買うモノでしょうか?それとも作るものでしょうか?
私は、「家は作るモノ」だと考えています。が、最近では、車や家具などと同じ商品として、買うモノだと捉えられている風潮があります。家は一生の中で一番高価な買い物です。きちんと自分の暮らしに合った家を手に入れるため、住まい手自らが家作りに関わることが大切だと思います。

とはいえ、素人に一から建物を作れと言っている訳ではありません。他人任せにせず、きちんと自分ごととして、家作りに参加してほしいと言っているのです。極端な例では設計打合せも行わず、建設時には一度も現場を見ずに、完成時に初めて家を見る方もいると聞きます。それでは自分の暮らしに合った家を手に入れることは困難です。

住まい手が設計に関わる

設計者は、当たるも八卦当たらぬも八卦の占い師ではないので、住まい手の要望や好み、暮らし方、家族間の関係など、そこに暮らす人の情報がなければ設計を進めることはできません。まったく要望がなく、一般的な家族の家を作れということであれば、設計することができない訳ではありませんが、個性の無い普通の家となりかねません。

自分の暮らしに合った理想の家を実現するには、家が出来たらどんな暮らしがしたいか、自分の好みの時間や趣味がどんなものなのかなど、設計者へきちんと伝え、その暮らしを設計図面に反映してもらう必要があります。そのためには、設計者に丸投げせず、自らこうしたい、ああいしたいと設計プロセスに住まい手自らが関わっていくことが大切です。

予算的な制約、構造的な制約、などさまざまな制約がありますので、全ての要望を実現できるとは限りませんが、設計者と一緒になって当事者として考えることです。住まい手が設計に関わることで、家は買うモノでなく、一緒になって作り出していくモノへと変わっていきます。

話せば話すほど、住まい手のイメージが明確になり、深度が深まっていくので、私の事務所では、住まい手との対話に出来る限り時間を割くようにしています。住まい手が一生懸命になればなるほど設計者も、その思いに答えて良い家にしようという思いが強まります。

住まい手が現場に関わる

建設時には、職人さんが作業しているからと遠慮して、現場に行かない方もいます。が、私は積極的に現場へ行きましょうと話しています。なぜなら、顔の見えない人の家を作るよりも、住む人が見えていた方が、この人の家を作っているんだと職人さんのモチベーションが上がるからです。基本的に職人さんは10時と15時に休憩をとるので、飲み物などの差し入れを持って、話をしてみるもの良いでしょう。最近は、昔気質な職人さんよりも、気さくな方が多いので怖がる必要はありません。

時には、作り手である職人さんに設計者として相談してみることもあります。こういった感じにしたいけど、どう作るのが良いか?何か良い方法はないだろうか?などなど。腕の立つ職人であれば、(予算的な制約と時間的制約が無い限りは)技術的な良い解決策を提案してくれます。住まい手の方も、こうしたい、ああしたいと、現場に足を運んで要望を伝えることで、現場任せにならずに、自分の思いを実現できる可能性が高まります。ただし、相手の立場を無視した無理な要望は、現場を混乱させるので注意が必要ですが。

住まい手が直接的に家作りに参加する

より直接的に家作りに参加するという方法もあります。特殊な工具が必要だったり、技術と経験が必要な部分は、その道の職人さんに任せて、自分たちでもやれるちょっとした部分は自分たちの手で作り込んでいく。具体的には、壁をDIY塗装をしたり、家具や棚をセルフビルドしたりといった方法です。自分が関って作った住まいは愛着が湧きます。

自分でやってみることの意義は、職人さん達の仕事の大変さが分かるということです。壁塗り一つとっても、職人さんを見ているとあっという間に仕上げていって、簡単に見えるのですが、自分でやってみると体力的な面でも、技術的な面でも、その大変さが分かります。自分で関わってみると、モノづくりをしている職人さんへの感謝の気持ちが湧いてきます。

感謝の気持ちは大切です。家を作っている職人はロボットではなく、人です。モノを作ることが好きで職人をしている訳ですので、感謝の気持ちを持って職人に接していれば、それに答えようと良い仕事をしてくれるはずです。

関わり方はいろいろありますが、家作りは人生の中でも、最大の道楽です。他人任せにせず、積極的に関わって自分らしい家を実現していきましょう。もし積極的に関わって一緒になって家作りしたいという方は、ぜひご相談ください。設計者として全力で家作りのお手伝いをいたしますので。