下地材を仕上げ素材として利用する

木毛セメント板仕上げ

通常なら壁や床の中に隠れてしまう下地材。でも、その下地材の中には、見方を変えれば魅力的な表情と独特の質感を持っている材料があります。仕上げとして使うことが想定されていないため、ラフな表情のままであったり、ムラがあったり、素材感がそのまま剝きだしてあったりしますが、そのテイストを上手く活かすことができれば、他には無いオリジナルな空間を実現することができます。

隠れてしまう裏方の材料をあえて仕上げ素材に抜擢することで、無限の可能性が広がります。この記事では、私の事務所で仕上げ材として採用した下地材の実例を上げ、解説していきます。

  • ラワン合板仕上げ
  • フレキシブルボード仕上げ
  • 木毛セメント板仕上げ
  • OSB合板・ラーチ合板仕上げ
  • 塗装下地用クロス張り

ラワン合板仕上げ

書斎ラワン合板仕上げ

柔らかい木目が特徴的なラワン合板。一般的にはべニア板と呼ばれている材料です。丸太をカツラ剥きのようにスライスして製材した材料から出来ているので、木目の表情がダイレクトに出ます。それぞれの合板の木目は、丸太のどの部分から採られたかによるため、それぞれ異なります。

私の事務所では、ちょっと暗めでしっとりと落ち着いた雰囲気にしたい寝室や書斎などの空間に利用することが多いです。杉板張りなどで仕上げるよりも、モダンな印象の木の空間になります。合板ではありますが、木目の自然な表情を持つため、温かみのある雰囲気の空間に仕上がります。

天井ラワン合板仕上げ

上の写真は、ラワン合板を天井仕上げに利用した例です。ラワン合板を全体でなく一部だけに限定して使うことで、控えめな印象の空間に仕上げています。ラワン合板は表情が特徴的なので、あまり多くの面に使いすぎるとウッディな雰囲気に持っていかれますので、バランスを調整して使います。写真の例では塗装を行わず、そのままのラワンの柔らかな表情を活かしていますが、塗装を行うことでもっと重厚な雰囲気とすることも可能です。

ラワン合板仕上げについて、もっと詳しく記事にしていますので、こちらも併せてご覧ください。→「ラワン合板仕上げが出来るまで

フレキシブルボード仕上げ

フレキシブルボード仕上げ

上の写真のグレー色の壁材が、セメントと強化繊維を混ぜ合わせて固めてできているフレキシブルボードです。耐水性と不燃性に優れており、コンロ周りや水回りなどに使うのに有効です。セメントで作られているため、コンクリート打放し仕上げのような硬質な雰囲気を持ちます。表面にはモルタルのムラ柄が現れており、クールな印象がありながら、自然の風合いもあわせ持つという特徴があります。

写真のようにモノトーン調のカチッとしたクールな印象の空間に仕上がります。私の事務所では、耐水性の高さを活かして、水のかかる場所に使用することが多い材料です。

キッチン床フレキシブルボード張り仕上げ

特殊な使用例としては、キッチン床や脱衣室床にタイル状にカットして貼り付けることもあります。見た目は大判タイルを張ったような印象で、表面のさらっとした質感が足触りが良く、好評です。もし耐水性を上げたいのであれば、表面をオイル拭き仕上げや撥水塗料仕上げとすることもできます。

木毛セメント板仕上げ

木毛セメント仕上げ

木毛セメント板(もくもうせめんとばん)とは、その名の通り、木片チップをセメントで固めて成型したボードです。一般的には体育館の天井など、耐火性能が求められる場所に使われるボードです。木片チップがそのまま表面に現れている凸凹の表面模様が特徴です。光の当たり方次第で、とても面白い表情を見せてくれます。硬質でありながら、温かみのある雰囲気の空間に仕上がります。

表面上の見た目だけでなく、写真の例では、遮音性の高いボードの性能を活かして、トイレの壁・天井仕上げに使用しています。

OSB合板・ラーチ合板仕上げ

OSB合板仕上げ

OSB合板(オーエスビーごうはん)は、木片チップを接着剤で固めて作られた合板です。表面には、木片チップの模様が現れています。主に構造強度を持たせたい部分に使われる合板で、高強度のボードです。構造材として使われるボードですので、比較的安い金額で手に入るのが利点です。上の写真の例では、ウォークインクローゼットの壁仕上げに採用しています。私の事務所では、コストを抑えたい部分や収納内の基本的に隠れてしまう部分などに採用する例が多いです。

なお、収納棚に採用している合板は、ラーチ合板と呼ばれるボードで、OSB合板と同様に構造用の合板として使われます。ビスが効きやすいので、パイプや棚板を取りつけ易く、収納エリアで使うことが多い材料です。

OSB合板・ラーチ合板、ともに、木目の表情が特徴的な材料ですので、積極的に見える場所に採用してみても面白い材料です。ただし、下地用として作られているため、表面には製造スタンプなどが印刷されており、印刷を消すためには、やすり掛けなどの処理を行う必要があります。私の事務所では、スタンプを消さずにそのまま収納に使用しています。(最終的には、収納物で隠れてしまいますので)

塗装下地用クロス張り仕上げ

下地クロス張り仕上げ

本来は、塗装下地用として作られた下地クロス材で、下地用クロスを貼った上に塗料を塗って仕上げます。が、ローコストを実現するため、塗装を行わず、そのまま仕上げ材として使います。

安いビニルクロスを使ってもコストダウンは可能ですが、安価なビニルクロスは表面仕上げがつるっとしていて安っぽく見えるため、下地用クロスの艶消しの質感を好んで、あえて下地用クロスを選択することがあります。下地クロスであれば、ビニルクロスの樹脂系の匂いがしないので、新建材の匂いが苦手な方にとっては有効な選択肢です。

下地用ですので、良く見ると下地ボードのパテ痕が薄っすら見えていることが分かります。ですので、基本的には収納エリアなどのバックスペースに使うようにしています。

下地材を仕上げ材として使用する際のポイント

下地材を仕上げ素材として使う

本来、あくまで下地材であり、仕上げ材として作られている材料ではないので、納まりや施工性などに難点がある場合があります。工事に際しては、どのように取り付けるか、どのように加工するか、メンテナンス性など工務店や大工さんと良く協議してから進める必要があります。

ただ、質感や素材感などに独特の表情を持つ材料も多いので、上手く使いこなせば既製品の仕上げ材には実現できないような面白い空間を実現できる可能性が高まります。下地素材の持つ特徴を積極的に活かし、上品な納まりになりすぎないよう、あえて大胆に使用することが、下地材を使う際の重要なポイントになります。

今回の記事では、各素材ごとに解説をしましたが、素材の取り合わせや組み合わせによっても、さらに表現のヴァリエーションが広がります。既成概念に捕らわれず、自由に素材を使いこなしていきましょう。