「越後曽根の平屋」プロジェクトは現在、スタディ模型を作っての検証が進んでいます。基本的な設計作業としては、平面・立面図などの図面を作成し、検証を進めていくのですが、プロポーションのバランスや立体的な空間スケールなど、2次元情報だけではイメージしにくい部分があります。そのような部分の検証のため、図面を3次元に立上げ、スタディ模型を作って直感的に検証を進めていきます。
私の事務所では、3Dモデリングで、モニタ上に仮想モデルデータを立ち上げることも可能ですが、モニタ上のシュミレーションでは感情移入できないというか、実感が沸かないため、「模型」という実体を作って手に取って検証をするようにしています。3Dモデリングだと、意図的に広角カメラで実際よりも広く見せるなどのデータ操作ができるため、個人的にはあまり信用していません。
アイデアやコンセプトを視覚化する
スタディ模型を作ることで、おぼろげだったアイデアやコンセプトを視覚化できます。スタディ模型を実際に手に取って外観プロポーションを確認したり、内部を覗いて内部空間の雰囲気やスケール感を感じたり、より実感を持って検討することができるようになります。
施主さんとの打合せでは、アイデアやコンセプトといった抽象的なイメージをあいまいな表現でやりとりするのではなく、実物の縮小模型を見て考えることで、具体的に評価・検証ができるようになります。また模型を作っていく過程でより良いアイディアが思い浮かんだり、問題点や改善点が浮き彫りになったり、といったことも起こります。
コミュニケーションツールとして使う
図面だけではうまくイメージが浮かばない人でも、スタディ模型を見ればはっきりと、どんな建物になるのかが想像できるようになります。これから家を建てる施主さんは、基本的に建築の素人ですので、図面だけですべてをイメージできることはないでしょう。そんな方でも模型を見れば、これは好き、これは嫌い、と直感的に判断ができるはずです。
例えば上の写真は、屋根勾配を変えたスタディ模型ですが、屋根勾配によってどのような外観、どのようなプロポーションになるか感覚的に分かり、判断がしやすいことが分かるかと思います。
デザインやコンセプトという曖昧な概念を扱う際、模型という具体物で可視化すれば、同じ目線でコミュニケーションできるようになります。模型を見ながら打合せを行うことで、趣向・価値観のすり合わせや、問題点の共有ができ、より良いデザインへ向かって意見交換が図れるでしょう。
積極的にかかわる
図面だけのやりとりだけでは、自分が家作りをしている実感がなかなか沸いてこないでしょう。スタディ模型を手渡されると急に、実感を持って家作りをしていることが感じられるはずです。自分が住む家ですので、より自分の思いを盛り込んで、建てたいと思うのは当然です。
できることなら施主さんにも、積極的に意見を話して、自分事として設計に関わっていただきたと思っています。そのために設計案やコンセプトが分かりやすくなくてはなりません。図面が読み取れず、内容がチンプンカンプンでは、言いたいことも言えませんから。そのためにスタディ模型を活用するのが有効です。模型という実体があることで、ああしたい、こうしたいという意見が言いやすくなります。
自ら思い描いた空間が実際に建ちあがってくるのは、とても感動的で楽しいことです。積極的に設計に関わっていきましょう。