ストローグ金物工法を採用するメリット

柱梁表し

「粟生津の平屋」では、ストローグ金物という金物工法を採用しました。参考までに、特殊な金物を使わない従来通りの木造工法は、在来工法(ざいらいこうほう)と呼ばれています。

こちらの建物は、柱・梁を隠さず、構造材を室内に表しにする仕様となっています。柱・梁構造部材がそのまま室内に現れてくるため、従来通りの在来工法ではなく、ストローグ金物工法を採用しました。その理由は以下の3点です。

  • 金物を隠すことができスッキリする
  • 柱梁材の断面欠損を少なくできる
  • 施工精度アップと手間の削減が可能

以下にストローグ金物を採用した理由をそれぞれ書いていきます。

金物を隠すことができる

ストローグ金物取付状況

写真の柱の上部に取り付いた黒い金物がストローグ金物です。柱の側面についている黒い金物は、梁を接合するための金物。柱の上についている黒いパイプは、柱上に梁を接合するための金物です。これらの金物にピンを通して梁を接合するのがストローグ金物工法です。

木造の柱・梁の接合部は、互いに掘り込み加工を行って組み合わせる在来工法仕口(しぐち)が採用されることが多いのですが、今回の建物は柱梁が表しとなるため、金物をできる限り隠したいことからストローグ金物工法を採用しています。

ストローグ金物柱梁取り合い部

上の写真は、組み上がった柱梁の接合部分です。梁の側面の3本のピン頭しか金物が見えません。構造体を表しとする場合には、デザイン上、非常に有効な工法です。木造在来工法ですと、梁側面に引き金物などが取りつき、見た目をすっきりとさせることができません。

構造材の断面欠損を最小限に

ストローグ金物柱梁欠損

見た目だけでなく、構造耐力上も有利に働きます。写真のように柱梁接合部の欠損部は、スリットとボルト径程度と非常に小さくすることができます。在来工法では、こうはいきません。

梁の構造計算を行う際には、梁の断面欠損を考慮する必要があるため、欠損が少なければ、それだけ梁を有効に使うことができ、場合によっては梁の断面積を最小限にすることができます。つまり部材コストを圧縮できる(建設費を下げられる)可能性があります。

施工上の利点

柱梁材の搬入状況

現場搬入される際には、柱梁材にはす既にストローグ金物が取りつけてあります。柱梁を加工するプレカット工場で先付けされているので、現場で大工さんが取りつけ作業を行う必要がありません。大工さんは柱梁を組み上げ、ボルトを金づちで打込むだけで作業が進みます。

また、既に金物の取付けが済んでいるので、間違えて部材を組み上げることもありません。間違って組み上げようとしても、異なる部材では金物が嵌らないため、間違いを防止することができます。実際に当日、柱を間違えて建てた個所があり、その部分に金物が嵌らないことから、直ぐにその間違いに気がつき、対処することができました。

ストローグ金物建て方作業

建て方の際、在来工法では柱梁を組み上げただけでは、梁の上に上がるとぐらぐらと揺れ、心もとないのですが、ストローグ金物で組み上げた場合、強度があるためか揺れが少なく、作業性が良く、建て方作業が捗ります。これだけ揺れが少ないということは、施工精度も高く、建て方後の立て入れ調整(柱梁を垂直・水平に調整すること)がほとんどなく、作業に掛かる時間がずいぶんと短縮されます。思っていたよりも作業の進みが速い、とのコメントを大工さんから貰いました。

ストローグ金物は、通常の在来工法に使用する金物よりも単価が高いのですが、現場での作業手間が削減できる点や作業スピードが向上する点などを考慮すれば、金物単価が高くとも、大工手間が減る分で賄えるのではないかと思いました。今後も機会があれば、積極的に金物工法の採用を検討したいと思います。