屋根梁を表しにする技術

屋根上断熱工法

「粟生津の平屋」ここのところ天候が悪く、しばらく現場作業が空いてしまいましたが先日、雨の合間を縫って建て方工事が行われました。

一般的な木造住宅の建て方工事は、現場で柱梁を組み上げるのに1日、建て方2日目に屋根防水シートを張る流れで進められますが、今回の建物は、室内に屋根梁を表しとするため、(天井裏でなく)屋根上に断熱材を敷き込まなければならず、屋根防水シートを張るまでに通常よりも多くの日数が掛かります。それまでの間、雨に降られないように工事工程を組まなければなりません。

屋根梁を表しとするには、建て方開始〜屋根防水シート敷き込みまで、2日の作業では足らず、少なくとも3~4日の間、天候が崩れないタイミングを見計らっておく必要があります。途中で雨が降ってしまうと、表しとする梁や合板が雨に濡れ、木のアクがついてしまいます。せっかく表しとするのであれば、きれいに見せたいのが心情です。雨の心配だけでなく、表しとなる柱梁材に傷がつかないよう、部材の扱いにも細心の注意を払わなければならず、いつもよりも作業ペースが遅くなってしまいます。

屋根断熱工事

上の写真は、屋根上断熱工事を行っている最中の写真です。左手の黒い部分が屋根上断熱施工前の状態、右手が屋根上断熱材を施工中の状態です。肌色のネオマフォームという高性能断熱材を敷き込んだ上に、通気層を設け、更にその上に合板を敷き込んで、屋根面を作っていきます。ネオマフォームの断熱性能は非常に高く、断熱性能を保ちながら断熱材厚さを薄くすることができます。断熱材を薄くなることで、運搬費が抑えられる利点があります。また他の断熱材に比べ、素材が硬質なのでビスで留め付けることができ、現場での施工性が上がり、建設費用を抑えることができます。

一般的な天井裏断熱工法であれば単純に、屋根合板の上に屋根防水シートを敷くだけで良い(左手の状態で終了すれば良い)のですが、屋根上断熱工法の場合は、屋根合板の上に気密処理→断熱材を敷き込み→通気層を設けた上に→二重に屋根下地合板を貼り、その上に屋根防水シートを敷き込まなければなりません。通常の工法に比べ、多くの手間が掛かります。雨だけを気にしていれば良い訳ではなく、これらの複雑に絡んだ多くの工程を建て方の際に一気に行う段取り調整も必要になります。

屋根梁表し

上の写真のように柱梁を表しにするのは実は簡単なことではありません。天候や複雑に絡み合った工程の段取りなど、綿密に計画を立て、スムーズに工事を進めることができて初めて実現できます。それだけに工務店は気苦労が多く、あまり積極的にこの工法をやりたがらないのかもしれませんが。。。

美しさの裏には、見えない努力や多くの工夫が隠れています。屋根梁の表しは、創意工夫があって始めて成立する、手間の掛かる工法です。手間は掛かるのですが、その手間をかけた分、屋根梁を表した美しい空間が実現できます。