杉丸太を買って梁に製材する

「丸太を買う」初めての経験をしてきました。長いこと設計を仕事にしてきましたが、丸太を買ったのは実は初めて。今回は、その丸太を買った話です。通常、家を建てるのであれば、製材された後の柱・梁材を買うのであって、最近では丸太から買って製材することは見かけなくなりました。

「岩室の平屋」の屋根形状は、切妻形(家の中央部が高くなっている屋根形状)となっており、屋根の一番高い場所に棟梁(むなはり・むねはり)と呼ばれる梁が置かれます。この棟梁には構造的に大きな力が掛かるため、大きな材寸法が必要になります。昔の建物であれば、大黒柱と同様、棟梁には特徴のある材を使い、象徴性を持たせていました。

文字通り、建物の骨格を支えている大事な梁ですので、存在感ある梁として室内に表すことで、安心感を与える空間を作り出せないかと。

そんな考えを施工打合せの際に話していたところ、それなら建て方までの時間もないので直ぐに材料を探しに行こうとなり、そのまま製材所へ向かうことに。

丸太を探しに製材所へ

杉丸太

製材所内には山から切り出されたままの丸太が山になって積んでありました。その丸太の山の中から、存在感のある丸太を探していきます。ただ真っすぐで杢目の詰まった丸太材ならば、いくらでもあるのですが「個性的な」という条件で探すと、なかなか、見つかりません。あっちの山を覗いたり、こっちの山を覗いたり、探しまわっていると、積み上げた丸太の奥に少し根元が曲がった杉丸太が。重機を使って奥から掘り出してもらいます。

長さ6m、太い方で丸太直径80センチと太さがあり、存在感は十分です。真ん中付近が弓なりに反りかえっています。(曲がり丸太と、呼ぶそうです。)曲がった杉丸太は、製材する際に木どりが悪く(つまり真っすぐな柱や梁材を効率よく丸太から取れない)、形のくせが強くて一般流通させにくいので、現在では市場価値があまり良くないそうです。しかし今回探している個性的な梁材としては、その特徴的ある形は、とても魅力的です。

丸太の見方(見立て方)を教えてもらう

最初にも書きましたが、長い間、建築業に関わっていますが、丸太材を買うというのは実は初めてのこと。そこで製材所の方に、丸太の見方を教えてもらいました。大事なのは丸太の切断面をよく観察すること、だそうです。切断面から判断したところ、この曲がり丸太は年輪は詰まっているものの、アテが強く、身割れ(玉割れ?)している、との事でした。

「アテが強い」というのは、傾斜地などで育ったため、ねじれた力が掛かり、木目に偏りがあるという事。(つまり、ねじれやすく、割れやすい)逆を返せば、単調でない、特徴的な杢目が入っている可能性があるという事でもあります。身割れ(みわれ)というのは、ある年に台風や土崩れなどで強い外力が加わり、節の周りにひび割れが起きている状態を、そう呼ぶようです。身割れしてる丸太は、製材時や乾燥時にひび割れが入る可能性が高いとのことでした。今回は、構造計算で必要な寸法を上回る断面寸法があるため、多少のひび割れは問題なしと判断しました。

長さ、径、杢目とも問題なし。個性ある面白い梁材が取れそうなので、この杉丸太に決定、購入しました。まずは丸太の3面を挽き、太鼓状に製材加工をしてもらうことになりました。

丸太一本の購入価格

参考までに、この丸太材をいくらで買ったかというと、1本で約3万円強でした。(加工費や送料などの手間は別途掛かります。)製材所で直接購入したので、かなり安く手に入れられた方だと思います。通常の一般的な梁材であれば、約1.5~2万円で手に入るので、倍かかったことになります。それでも、このような個性的な表情のある材を手に入れることができたことを考えれば、その差額はけして高くないと思います。ただ、それを探すために自分の時間を使う必要があるのですが。