沖縄本島の今帰仁(なきじん)に建つ「今帰仁中央公民館」を訪れてきました。こちらの建物は1975年竣工、既に45年という時間が経過しています。公民館ですので、特にこれといった明確な建築的機能がある訳ではなく、地域の人たちが集まる場所というのがこの建物に求められていた機能のようです。集まる場所といっても、この南国の温暖な気候の下では、雨が避けられる屋根さえあれば、集まる場という要求自体は満たせてしまいます。こちらの建物も、基本的には大きな屋根を掛け、その下に簡易な間仕切壁で仕切ったいくつかのスペースと、その周りに取りついた回廊というシンプルな構成で成り立っています。
大きなコンクリート屋根は、真っ赤な列柱で支えられています。列柱が配置された半屋外の回廊のどこからでも入ることができ、とても開放性が高く、建物というよりも、屋根のあるオープンスペースといった感じです。ただ、屋根の下に入ると、列柱に囲まれた半屋外空間は、適度に外からの視界が遮られ、落ち着きのある場が生まれています。列柱群が、閉じる訳でもなく、開きすぎる訳でもなく、ある種絶妙な境界を作り出しているようで、外部でありながら、同時に内部であるという両義的な空間が実現しています。真っ赤な列柱と濃い緑の樹々の対比が強く、赤と緑が互いの色を引き立てあい、とても印象に残ります。
屋根の下に佇んでいると、心地よい風が吹き抜けていきます。居心地よい場があれば自然と人が集まってくる、人が集まれば、そこが公民館としての性質を帯びる。人が集まる場所として秀逸な場が実現できているのを感じました。