大高正人設計「坂出人工土地」を訪れて

「坂出人工土地」と読んで、いったい何のことなんだ?と、お思いになったかもしれません。そう今回は、建物だけではなく、土地自体から設計したという例を紹介します。場所は、香川県坂出市。駅前商店街の一角に、この人工土地はあります。

そもそも人工土地というのは何かというと、50m×150mの1街区を丸ごと地面から持ち上げ、人工的に作り出した土地(地面)のことです。高さ6mほど持ち上げられた人工土地の下には、柱の区画に嵌るように商店街が入っています。電車の高架の下に入ったお店の並びをイメージすると分かりやすいかもしれません。持ち上げられた人工土地の上には、中層の市営団地がランダムに建っています。

表通りから見ている限りは、なんの変哲もない建物に見えます。しかし、階段を上り、人工土地の上に出ると、驚きの風景が現れます。階段を上ったのに、また地面がある。。。持ち上げられた人工土地の上では、自動車が走り、地面から樹々が生い茂り、自転車に乗る人が目に入ってきます。先ほどまで家々が立ち並ぶ駅前商店街にいたのに、階段を上った途端、ゆったりとした郊外団地の風景が目の前に広がります。近年であれば、人工的に持ち上げた地盤は多々見る事はあるのですが、それはあくまで地盤であって、土地ではありません。「坂出人工土地」は地盤ではなく、土地となっています。個々の玄関の前には、自転車や自動車が置かれ、緑の樹々が育ち、地面の舗装も程よく色褪せ、時を経てまさに人々の生活が根付いた土地となっていました。

人工土地のレベルは均一ではなく、場所ごとに高くなったり、低くなったり階段状になっています。さらに各住棟がランダムに配置されているため、住棟間にはとても複雑な空地が生まれています。人工土地の上を歩いていると、上がったり下がったり、ぐるっと回って元の場所に戻ったり、迷路状の回遊動線となっていて、ぐるぐると歩き回ると、とても面白い空間体験ができます。

坂出人工土地(市営京町団地)
住所:香川県坂出市京町
竣工:1968年
設計:大高正人
※住民の方がお住まいですので、見学の際にはプライバシー等に充分配慮ください。

坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地
坂出人工土地