菊竹清訓設計「出雲大社庁の舎」を訪れて

菊竹清訓設計、出雲大社庁の舎を訪れる。こちらの建物は、あの伝統的な大屋根と〆縄で有名な出雲大社の社殿のすぐ隣に建っている。この現代的な建物が果たして、あの古風な景観の中でどのような姿をして建っているのか、以前よりぜひ目にしてみたいと思っていた。

大社を参詣した後、境内の中を見渡す。白砂利敷きの境内の隅に、異彩を放ちながらも、ひっそりと佇んでいる建物が目に入る。気に留めていなければ、通り過ぎてしまったかもしれない。私の予想に反し、その建物はその場の気配に馴染じみ、影を潜めているようでさえあった。稲掛け(はざがけ)をモチーフにしたという菊竹さんの言葉通り、上部に従ってスレンダーになっていく台形状のルーバーが稲掛けを思わせる。その上部に向かって細くなってゆく山形形状が、大社の屋根の形状と程よく馴染んでいるように見える。

しかし、近く寄ってみると、各部に施された装飾群に目を奪われる。プレキャストコンクリートに刻まれた矢羽根や、門扉の波紋の文様。過剰とも思える装飾の数々。稲穂、矢羽根、波紋。それぞれが神へ捧げる文様だとしても、現代建築家としてなぜここまで過剰に装飾を施さねばならなかったのだろうかと、少し疑問を感じる。内部へと入る。横ルーバーの隙間からもれる柔かな光に満たされた内部空間。ルーバーから射し込む光が時間の流れと共に空間の中を移動していく。空間の造形としては、一見、未来的な形をしているが、障子を通したような、とても柔らかい光に満たされ、とても日本的な空間が成立していた。とても静かで濃密な空間。

出雲大社hp
住所:島根県出雲市大社町杵築東195
参拝時間:6時〜20時
休館日:無休
電話:0853-53-3100(出雲大社社務所)
※現在、出雲大社庁の舎の内部公開はしていません。

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