ここのところ、アントニン・レーモンドが設計に関わった教会をいくつか見てきたがどれもが木造軸組形式の教会であった。そこで今回、構造形式の異なる鉄筋コンクリート造の教会を見てみることにした。訪れたのは目黒駅近くの聖アンセルモ目黒教会。
レーモンドといえば、打放しコンクリートを世界で初めて使ったことで知られる。この教会も聖堂内部は、荒々しいコンクリート打放しで仕上げられ、男性的で硬質な空間が生まれている。連続して立てられたコンクリート壁の隙間からは、硬質な陽が差し込み、刻々と陽の差し込む角度が変化していく。変化することの出来ない建築に、動きを与えていく光。まるで建築に生命を吹き込んでいるかのようだ。
木造と鉄筋コンクリート造。両方の建物を比較して気づいたのは、それぞれの材の使い方の違いだ。木は線材として、コンクリートは板材として、構造的な合理性のもと、その性質を最大限生かすような使い方をしている。決して木を板的に、コンクリートを線的に使うようなことはない。
また、最小限の部材で構造的安定性を得ようとした結果、木造のトラス構造が導きだされたのであり、鉄筋コンクリート造の折板構造が導きだされたのであろう。
そういえばレーモンドの建物には、構造形式が表現として心に残るものが多い。そのような率直さと誠実さが、この空間に強度を与えているのかもしれない。
聖アンセルモ目黒教会
住所:東京都品川区上大崎4丁目6−22
電話:03-3491-5461
※特別な一般公開は行なっていません。礼拝の場ですので各自お静かに見学を。