柏崎、泊に続いて島根原発を訪れる。
原発建設地周辺は、どこも独特の空気が流れている。
この空気感は、言葉や映像では説明しがたいものだ。
まるでこの場所が触れてくれるなという強い意志を発しているような。
少なくとも居心地の良いものではない。
漁港を抜け、くねくねとした細い道路を走っていく。
新緑に覆われた半島と青い海がどこまでも続いている。
少し走ると半島の先端に、白い建物と煙突群が現れる。
豊かな自然の中に突如現れる無表情な人工物。
何とも言えない違和感。
車を降りて何枚かシャッターを切る。
静かだ。風の吹く音だけが聞こえる。
また少し車を走らせる。
地図では原発に近い地点を走っているのだが、
半島の陰に隠れて建物は見えない。
近づけば近づくほど見えないのだろうか。
半ば諦めていた瞬間、急に視界がひらける。
驚くほど近い。場内で作業している人の姿まで見える。
一見するとただの倉庫のような外観でしかないが、
この中に巨大なパワーを秘めた原子力炉が眠っている。
今現在、反原発の世論が高まりつつある。
しかし、原発を止めたとしても
核燃料を廃棄処分するのにかかる手間や年月は気が遠くなるほど長い。
自分たちの世代が生きている期間だけでなく、
数百年、数千年後まで続いていく膨大な計画。
今度も核廃棄燃料の管理技術や核技術開発の手は一瞬でも休めることはできない。