以前、床から天井に向け上へいくに従い、濃い色から明るい色にしていくのが、部屋の色選びの基本的な手法だということを紹介しました。下方に濃い色、上方に薄い色を使うことで、空間に安定感が生まれます。しかし、こちらの建物ではその手法に反して、天井を濃い目の茶色に着色しています。色選びを失敗した訳ではなく、きちんと理由があってそのような色選びをしているのです。
種を明かせば、視線が横方向へと伸びていくことを意図したからです。床と天井の色を同色とすることで、上下から視線が挟まれ、必然的に奥へと視線は広がっていきます。仮に天井を壁と同じ白い色にしてしまえば、上方へと視線が逃げていってしまいます。平面構成上、部屋が奥へ奥へと繋がっていく空間ですので、あえてそのような色使いをしてみました。視線が奥へと抜けていくように見えませんか?