1958〜64年、カルロ・スカルパによって改修設計されたカステル・ヴェッキオ博物館。14世紀に建てられた城塞を博物館へ用途転用した、建築史を代表する改修事例の一つです。
既存のアーチや石積みの壁に対して、鉄、コンクリート、ガラス、木などの現代的な素材が静かに挿入されています。スカルパによって加えられた新しいデザインは、とてもシャープで現代的です。古典的な城塞とは対照的でありながら、不思議なほど違和感がありません。
その相反する新旧の要素は、混ざり合い、馴染み合い、ときにせめぎ合いながらも、まるで以前からそうであったかのように自然に融合しています。古典的な部分と新たに加えられた部分は対比しながらも互いを引き立て合い、その組み合わせによって、この建築に新たな価値を生み出していました。

カルロ・スカルパは、この建物の改修設計を少しずつ、10年以上かけて行ったようです。
何か新たな要素を加えることで、既存部分と融合し、空間に変化が生まれる。その変化を読み取りながら、さらに新たな要素を加えていく。
そのようなことを繰り返すことで、この建築は少しずつ形づくられていったのでしょう。だからこそ、このような新旧の自然な調和が生まれたのかもしれません。
既存の城塞も、一度に建設されたものではなく、何世紀にもわたり、ある部分を壊しては、ある部分を加えることを繰り返しながら、少しずつ形を変えてきたのでしょう。
何世紀にもわたる時間の流れを読み取り、その延長線上に新たな要素を加え、この建築をもう一度解釈していく。それは、古典建築に返歌するような行為だったのかもしれません。

配置される展示品は、空間の中にぽつりぽつりと置かれています。一見するとランダムに見えるのですが、眺めているうちに、その置かれ方が少し気になってきます。
展示する高さ、光の当たる向き、壁際に置くのか、それとも空間の中央に置くのか。一つとして同じ展示方法はありません。それぞれの展示品には、それぞれにふさわしい場所が選ばれている。そんな気がしました。
一つの展示品を見ていると、視線の先には次の展示品が自然と現れます。
館内には、進む方向を示す案内や標識はほとんどありません。それでも、建物が次の展示へと静かに導いてくれているような感覚がありました。
奥へ進むにつれて、展示品が変わるだけでなく、明るさや空間の広がり、屋内と屋外の関係も次々と変化していきます。

空間全体を味わうことも大切ですが、やはりスカルパといえば細部(ディテール)です。
本当に細かな部分までデザインされていて、設計に携わる者として見ていて飽きることがありません。手すりや建具はもちろん、展示する家具や固定金具に至るまで、一つひとつがその場所に合わせて丁寧にデザインされています。
形、素材、質感、バランス。
どこを見ても隙がありません。それでいて、それぞれが過度に主張することはなく、空間全体に自然と溶け込んでいます。
じっと見ていないと、その存在に気付かず通り過ぎてしまうほどです。素材ごとの特徴を素直に生かしているからでしょうか。
細部まで考え抜かれているにもかかわらず、不思議と無理をしているようには見えませんでした。

建物の中を歩いている間、何度も足を止めては、細部を見ていました。写真を撮っても、次の瞬間には、また別の場所で立ち止まってしまいます。気が付けば、予定していた時間を大きく過ぎていました。
建物を出る頃には、まるで中世の時代を歩いてきたような、不思議な感覚だけが残っていました。
Museo di Castelvecchio
住所:Corso Castelvecchio, 2, 37121 Verona VR, イタリア
開館時間:月曜13:30~19:30、火曜~日曜8:30~19:30
参考web:museo di castelvecchio
定休日・開館時間などはHPで確認ください。
【追記(2026年)】
カステルヴェッキオ美術館について記事を追加しました。
カルロ・スカルパによる改修が、単に古い建物を保存するものではなく、見る人の体験をつくる建築であると、改めて気づいた記事です。
記事はこちらです。
「カステルヴェッキオを、もう一度歩く」


























