「上越高田の平屋」間取りを検討する

新潟県上越市高田で住宅プロジェクトがスタートしました。今回計画している敷地は、十分な広さがあり、敷地内のどこに、どんな形で建物を配置してもOKという条件。設計者にとって、とても贅沢な?、いや、設計者泣かせの敷地です(笑)。なぜなら、無限に建物の形に可能性があるからです。数百どころか、数万プランの形の実現性があり、その中から、これだ!という最適なプランを探し出していく必要がある訳ですので。

現地を訪れて記録した写真とメモを見ながら、敷地周辺の景色を思い浮かべ、頭の中に思い浮かぶイメージを思いつくままに手書きで描き込んでいきます。この段階では、あまり細かなことに捕らわれずに、できるかぎり敷地のポテンシャルを活かすこと、住まい手の要望を実現すること、に想像力を集中させます。

手を動かすことで、頭の中が整理され、何が大事なことなのかが、次第にクリアになってきます。

今回、施主さんから求められているのは、家の中から敷地周辺の樹々の緑を眺められる、ゆったりとした暮らしの空間。樹々の間をくねくねと散策するような空間を作れないだろうか。そんなことをイメージしながら間取りのスタディを進めています。自由に創造し、アイディアを練っていく、苦しくも、楽しい時間です。

間取りのアイディアがまとまってきたところで、検討用のスタディ模型を作ります。2次元から3次元へ。四角い単純な平面なら模型を作らなくとも、どんな空間が生まれてくるか容易に予想できるのですが、このようなくねくねとした平面は模型を作ってみないとどのような空間が成立するかを予想することが困難ですので、模型を作って検証します。

出来上がった模型を見て、部屋から部屋への繋がりや視線の通り方、スケール感や構造形式などを検討します。空間のバランスや繋がりが悪ければ、再度、間取りの検討へ戻ってスタディを再開します。このように立体的に模型を作ることで見えてくることも多いのです。



間取りは、住まい手(施主さん)との打合せの度に、少しづつ形を変えていきます。住まい手と何度も対話を重ねることで、その人となりや好み、住まいに対する価値観などが次第にくっきりと浮かび上がってきます。対話から掴んだそのイメージを頭に思い描きながら、平面に修正を加え、よりイメージに合った空間へと近づけていきます。

あいまいな生活イメージを平面という形へ翻訳する作業、これが基本設計と呼ばれるものです。確かに目に見える形としては部屋の並び替えをやっているだけのように見えるかもしれませんが、実は設計者はその背後で葛藤を繰り返しているのです。

中央の庭を柔らかく取り囲むようなU字型のプランとなりました。窓の外に見える景色がその場その場で変わるように、室内に差し込む光が時間によって変わるように、さまざまな方角に窓を設けています。玄関から奥の部屋へと、パブリックからプライベートな空間へと変化していくように、素直なプランニングを心掛けました。玄関から奥へと向かうに従って、床レベルが次第に上がっていき、床仕上げも硬質なタイル張りから柔らかな床材へと変化していきます。

だいぶ、最終案に近づいてきました。間取りのスタディはここまで。続いて設計図面の作成へと移っています。図面を描くことで、更に詳細な検討をしていきます。