中古物件を購入してリノベーションしようと思った際、どうやって物件選びを進めていけばよいのでしょうか。設計事務所へリノベーションを依頼する際には基本的に以下のリストに沿って進んでいきます。中古物件をどうやって探し、何を目標にし、どの点に注意すればよいのか、を具体的な例を示して解説していきます。
- 物件探し(条件・目的の整理)
- 現地確認・現地調査
- ヒアリング(要望の整理)と提案
- 物件購入申し込み後
物件探し(条件・目的の整理)

まずはともあれ、物件を探すことからスタートします。適切な判断基準がないまま、手当たり次第に物件を探しても、その物件が自分に合った物件かどうか的確に判断することは困難です。物件を探す前に、「どんな暮らしを実現したいか」を家族みんなで話し合って、イメージしてみましょう。
どの地域に住みたいのか、どれくらいの費用をかけて実現したいのか、どれくらいの広さの家が必要なのか、求める耐震性・断熱性はどれくらいかなど、きちんと条件を整理することから始めてください。条件を整理することで、必然的に判断基準が絞られてくるはずです。
どのエリアに住みたいのかによって探す地域が絞られてくるでしょうし、どのような暮らしがしたいのかによって必要とする建物の広さや規模が見えてきますし、求める耐震・断熱性能によって建物の築年数が決まるでしょうし、どのくらいの予算を掛けるかによって物件の購入費用が見えてきます。予算を検討する際は、中古物件の購入費に加え、リノベーション工事費、不動産会社への手数料、登記費用、ローン諸経費など、 すべての費用を含めた『総額』で考える必要があります。
判断基準が明確になれば物件を見た時、その物件が自分がイメージする暮らしに合っているかどうかを判断できるようになるはずです。その中古物件が暮らし方に合っているのであれば、改装する工事箇所が少なく済み、工事費を抑えることができます。耐震性能や断熱性能を重視するのであれば、築年数の浅い物件を選ぶことで予算を抑えることに繋がります。要望によって確認すべき条件が異なりますので、見極めポイントを間違わないことが重要です。
「どんな暮らしを実現したいのか」といった抽象的なソフト面と、「予算や広さ、性能、築年数」といった技術的なハード面とを分けて考えるようにしましょう。「予算や広さ、性能、築年数」といったハード面に関して不明な点がある場合は、専門知識を持った設計事務所に早めに相談し、物件購入のアドバイスを受けることをお勧めします。 これは、物件購入後にイメージしていた暮らしが実現不可能となる事態を防ぐためです。
現地確認・現地調査

もし希望に合いそうな物件が見つかった時には、不動産会社へ内見を申し込みましょう。間取り図や写真で見ていた時には印象が良かったとしても、実際に見てみるとしっくりこないこともあります。
外見上問題がなさそうに見えても、以下のような技術的な問題が潜んでいると、リノベーション工事費が予想以上に高額になったり、希望の間取りが実現できなくなったりするリスクがあります。
- 間取り変更の際、柱や梁、壁などの構造体が動かせない
- 設備配管が老朽化している
- 設備機器が古く老朽化している
- 柱梁が劣化している(シロアリ被害など)
- 地盤が悪く建物に傾きがある
- 断熱性能や耐震性能が著しく低い
- 雨漏りの跡がある(雨漏りしている)
素人目には分かりにくい建物の技術・性能の面で不安があるようでしたら、設計者に同行してもらい、専門的な目で見てもらうのも良いでしょう。天井裏や床下などを覗いて技術的な調査をすることもできます。隠れた部分で予想以上に工事費用がかかるようなら、その物件購入をあきらめることもあります。
ヒアリング(要望の整理)と提案

どんな暮らしを実現したいかある程度イメージが決まっているなら、そのイメージを設計者に伝え、リノベーション案を提案してもらいましょう。伝えるイメージは具体的でなくとも構いません。曖昧なイメージでも、ヒアリングを通して設計者と対話することで具体的な提案やユニークなアイデアが引き出されるかもしれません。
全くイメージが思いつかない場合は、今の暮らしで困っていることや解決したい項目を書き出してみるのも良いかもしれません。例えば、
- 収納量が少なくて片づかない → 収納量を増やしてすっきりした暮らしを実現したい。
- 細かい間取りが使いづらい → 間仕切りを解体して広がりのあるオープンなスペースを実現したい。
- 昼間でも部屋が暗い→明るく開放的な空間を実現したい。
このように自分が求めている暮らしの具体的な姿が見えてきます。
要望だけでなく、この時点で総予算を決め、リノベーションに掛けられる予算を決めましょう。要望をすべて満たそうとすれば、際限なく工事費は膨らんでいきます。この段階では、要望をすべて満たそうとして工事費が膨んでしまうようなことが無いよう、要望に優先順位をつけ、工事予算の上限を明確に定めることが重要です。
大事な点は、どのくらいの予算でどれくらいのことができるかを正確に把握することです。その目星をつけるのはなかなか難しいでしょうから、物件購入前に設計者へ相談するのがおススメです。その予算とリノベーション内容に満足できそうでれば、不動産会社へ物件購入の申し込みを正式に行い、売買契約へと進めていきましょう。
物件購入申し込み後

物件購入の申し込み後、引き続き設計作業を進めていきます。打ち合わせを重ね、予算の範囲を超えないように間取りや各部の仕様や仕上げ材などを決めていきます。場合によっては更に詳細な現地調査を行い、改修方法や工事の進め方などを検討していきます。
事前の手続きをきちんと経た上で物件を選んでいれば、物件購入後も追加で工事費用が掛かる可能性を最小限にとどめることができます。
リノベーション工事において最も避けたい2つのリスクは、物件購入後に希望通りの暮らしが実現できないこと、そして予定していた予算を大幅にオーバーすることです。
リノベーションにおける判断基準の重要性

中古物件の購入とリノベーションを成功させるためには、物件を探し始める前の準備が極めて重要です。的確に物件を判断するためには、以下の2つの側面を整理することが不可欠です。
- ソフト面: 「どんな暮らしを実現したいか」という具体的なイメージ
- ハード面: 「予算や広さ、性能、築年数」といった具体的な条件
この二つの条件を整理することで物件を見た際に、その物件が自分がイメージする暮らしに合っているかどうかを判断できるようになるはずです。
まずは家族で「どんな暮らしを実現したいか」というソフト面を明確にイメージすることが、物件選びの判断基準を確立するための第一歩です。
次に、物件の購入費とリノベーション工事費、諸経費を合算した総予算、および必要な広さ、求める耐震性・断熱性といったハード面の条件を整理することが不可欠です。この段階で総予算を決め、要望に優先順位をつけることで、工事費が際限なく膨らむのを防ぐ必要があります。
また、希望の物件が見つかった時点で、間取り変更の可能性や、老朽化の状況を専門家に現地調査してもらうことがベターです。
これらの事前の手続きをきちんと踏むことで、「物件購入後に希望通りの暮らしが実現できないこと」や「予定していた予算を大幅にオーバーすること」といったリノベーション工事で最も怖い二つのリスクを最小限にとどめることができます。
今回の記事が皆さんが物件探しの参考になれば幸いです。