ここのところ、障子戸を採用した住宅を設計する機会が増えています。障子戸によって、和の雰囲気を持たせることが出来るだけでなく、開け閉めによって外からの視線をカットしたり、適度に太陽光を遮ったりと、さまざまな効果的な使い方をすることができます。
障子というと、直ぐに破れたり、毎年の張替えが大変というイメージがあるかもしれませんが、実は今回採用した障子紙は、和紙では無く、塩化ビニール樹脂で出来ており、そう簡単に破れるものではありません。(つまり、基本的には、張替えする必要がありません)むしろ指で障子をついたら突き指して怪我するほどの強度があります。本来であれば、手すきの障子紙を使った方が光の透過が美しいのですが、直ぐに穴が開いてしまうようでは、住むのに気を使って疲れてしまいかねません。このような新建材を使うことで、現代の生活にも障子戸を気軽に取り入れることができます。
障子戸で外との連続性を調整する
上の写真のように、障子戸を完全にオープンにすれば、外部空間とシームレスに連続させることができます。フルオープンにする際は、障子戸全てを壁の中に引き込む納まりを採用しているので、障子戸が視線を邪魔することはありません。写真ではまだ庭の工事が完成しておらず、やや殺風景ですが、庭木が植えられた暁には、緑豊かな開放的なリビング空間が出来上がる予定です。
こちらは障子戸を閉めた時の写真です。障子の有る/無しでガラッと雰囲気が変わります。障子があることで、しっとりとした落ち着いた雰囲気の空間が現れます。外からの視線を遮ることで、包まれるような安心感も生まれます。
室内の明るさを調整する
障子戸を開け閉めすることで、室内の明るさを調整することができます。障子戸を開けている時は、外からの光が直接、室内へ差し込み、明暗のコントラストが強くなります。窓際は非常に明るく、奥のエリアは対照的に暗く見えます。
障子戸を閉めると、外からの光が障子で拡散され、柔らかい光が室内を満たします。全体的に照度が均一になり、ゆったりとした雰囲気の空間へと変化します。天気の良い日にあえて、障子戸を閉めて、ゆっくりと寛いで過ごすのもおススメです。
障子に落ちる影を愉しむ
晴れた日には、樹々の影が障子に落ちます。風が吹けば樹々の影が揺れ、太陽に雲が掛かれば影が薄くなり、時には木にとまる鳥の影を見ることが出来たり、ずっと見ていて飽きません。障子を開けているよりも、障子を閉めていた方が、刻々と変化する外の変化を敏感に感じることができます。
こちらの記事も併せて、ご覧ください→「障子に落ちる樹々の影」
外からの視線を遮る
障子戸を閉めることで外からの視線を遮ることができます。外よりも室内の方が明るくなる夕方以降、ガラス窓を通して、外から生活が丸見えになってしまいます。特に大開口を設けたオープンな構成の家では、何らかの目隠しを施さなければ安心して暮らすことはできません。障子戸であれば、夕方以降に視線が気になる個所だけを閉めたり、外からの視線が気にならない昼には全開にするなど、開け閉めして視線を調整することができます。
障子からもれる柔らかな明るさは、外から見ると、とても温かみを感じられます。仕事が終わって家路につくとき、障子から漏れる暮らしの灯りを見れば、家に帰って来たなあと、ほっと心が癒されるでしょう。外に漏れる暮らしの温かみは、その家に住む人だけでなく、周辺地域にも良い影響を与えると思います。暗い夜道を歩いているとき、家々から漏れる明かりを見れば、安心感が生まれるはずです。
和の素材と相性が良い
障子戸は、和の素材との相性がとても良いです。畳のイグサや杉板の木目、ざらっとしたしっくい壁など、自然素材の柔らかな質感と合っています。むしろ、障子の無い和というのは考えられない程、和の象徴となっています。
和風はちょっと苦手という人もいるかもしれませんが、昔ながらのゴテゴテした和でなく、モダンな現代風の和の空間も実現できますので、ぜひ興味を持ってみてはいかがでしょうか。陰影礼賛。日本的な感性を感じながら時間を過ごしてみませんか。