「粟生津の平屋」の外壁仕上げは、杉板縦張りのウッドロングエコ塗装としています。ウッドロングエコとは、木材の表面に浸透させることで木の持ちを良くする自然塗料です。私の事務所では、杉板の耐候性を上げるだけではなく、グレーの色合いと艶のない落ち着いた質感に仕上がることから、ウッドロングエコ塗装をよく採用をしています。
今回は建設費を抑えるため、外壁の塗装工事を塗装屋さんに頼まず、施主さん自らDIYで行うことにしました。塗料自体は水のようにさらさらで、塗装するというよりは、板を水に漬けるといった感じですので、塗装を始めてやる方でも、簡単に行うことができます。(小学生くらいでも、楽しんでできる作業です。)
今回の工事を塗装屋さんに頼めば、塗装手間だけで15万円程度の費用が掛かります。全体の工事費からすれば、小さな金額かもしれませんが、小さな積み重ねで全体の工事費が決まってくることを考えれば、馬鹿にできません。コストを抑えられることも大きな利点ですが、施主さん自ら建築工事に参加することで、自分の家に愛着が沸くことも、DIY施工することのもう一つの利点です。
ドブ漬け塗装する前の準備
ウッドロングエコ自体は、水のようにさらさらの塗料です。刷毛で塗ることもできるのですが、ある程度の塗装数量がある場合は、刷毛よりも、桶を作ってその中に材料を漬ける方が効率よく作業ができます。今回も桶を作って、その中に材料を漬け込む「ドブ漬け」という方法で塗装を行いました。
塗装の前に桶をつくることから始めていきます。桶と言っても簡易的なもので良いので、桟木(さんぎ:3cm×3cm程度の細長い角棒状の木材)とべニアとブルーシートで作っていきます。桟木とべニア板をビスで組み合わせ、塗装する板のサイズよりも一回り大きなフレーム枠を作ります。
地面に置いて塗装作業をする場合、底板のべニア板は無くとも良いですが、地面にしゃがんで作業をするのは、なかなか骨の折れる作業ですので、写真のように作業台の上で作業をすることをおススメします。作業台の上において作業する場合には底板べニアが必要となります。(今回の作業台は、工務店さんから貸していただきました。)
組み上げたフレーム枠の上に、ビニールシートを掛けます。ポイントは、シートを2重にして敷き込むことです。一重ですと、作業中に板の角などをぶつけて穴が開き、塗料が漏れる可能性があるので、保険のために2重にしておきます。
今回は板のサイズが巾225ミリ×長さ4mでしたので、フレーム巾は360ミリ×4.5m程度にしています。板のサイズギリギリでフレームを作ると、板の隙間に指が入らず、作業しずらいのでご注意ください。
ここまでで塗装前の準備は完了です。
ドブ漬け塗装作業の仕方
所定の量の水道水で溶かした塗料を桶の中に流し込みます。ある程度の塗料量が無いと、板が塗料に漬かりませんので多めに塗料を作ります。今回は、一回に19Lの塗料を作って桶の中に流し込みました。19Lの塗料で約100枚の板を塗ることができました。
塗装する板の枚数が少ない場合は、作る塗料の量が少ないため、板を漬けることができません。その場合は、ドブ漬けとせず、桶の中で刷毛塗りするのが良いでしょう。
板を塗料の中に漬けるだけですと、脂分の多い個所は水分をはじいて塗料が板に浸透していきません。そのような部分は、板の布で表面を軽くこすって塗料を浸透させます。板の表面全体を擦ったら、よく塗料の水分を切って、板を立て掛けていきます。
塗装後は、よく乾燥させることが大切です。雨の掛からない風通しの良い場所に立て掛けておきます。板と板の隙間は風が通るよう、少し離しておきます。
上の写真は、塗装15分後です。真ん中だけ、未塗装の板です。15分で明らかに色が変わってきているのが分かります。一日経つと、もっと色目がグレーへと変化していきます。
ドブ漬け塗装作業に掛かった時間
今回の塗装作業では、2人の作業で1時間で60枚程度の塗装ができました。一人で作業する場合、板の移動→塗装→板の移動と、板を移動するのに効率が落ちるため、ペースダウンします。
計算すると、200枚の板を塗装する場合、2人で作業すれば作業時間3.5時間=約半日となります。ドブ漬け枠の組み立てに1~2時間かかるので、それらを考慮しても2人作業で一日で完了する計算になります。
板の乾燥状態や仕上がり程度によっても、作業に掛かる時間は変わってきますので、上の計算はあくまで目安としてください。以前、同様の方法で塗装を行った際は、一時間に20~26枚の塗装ペースでしたので、今回はかなりのハイペースで塗れたことになります。板の状態によって塗装にかかる時間は大きく変わるので、注意が必要です。