手を動かして設計案を考える

手書きスケッチスタディ

私は設計案を考える際には、ペンや色鉛筆を使って手でスケッチを描き進めることから始ます。頭の中に思い浮かんだイメージをできるだけ素早く、忘れる前に書き留めておくような感じで、ぱぱっと一気にスケッチしてしまいます。この過程を、PC画面の図面ソフト上で行う人もいるでしょうが、私はもっぱら手を動かして考えるタイプです。スケッチをしていると、手を動かす=考える、というような感覚、手と頭が直結するような感覚があります。

当然、スケッチを描き始める前には、実際に敷地を訪れて、その土地の雰囲気や周辺環境などを体の中にインストールし、クライントにどのような建物を作りたいのかをヒアリングします。それらの情報を一度、しっかりと自分の中にため込んで、しばらく醸成させてをおくと、ぱっとイメージが浮かんでくる瞬間が訪れます。その浮かんだイメージを逃さないよう、一気にスケッチを書き留めていきます。浮かんでくるのは、平面スケッチの時もありますし、断面や透視図のような場合もあります。

その瞬間が訪れるまで、時間が掛かる時もありますし、直ぐに浮かんでくる時もあります。イメージが浮かんでこない時には、まだ醸成が進んでいないと考え、再び計画地を訪れたり、クライアントに質問したりして、醸成が進むまで根気よく待ちます。

案が浮かんで平面が出来あがったとしても、更にその平面図の上にトレーシングペーパーを重ねて、ペンで平面を修正していきます。ここはこうした方が良いかな、ここは窓を大きくとった方が良いかな、とか、手を動かしながら更に良い案を求め、手を動かし続けます。この作業を何度も繰り返していくと、あるところで「あっ、ここで良いかも」という場面が訪れます。その瞬間は、自分が納得できる案にたどり着いたということなのかもしれません。

スタディ模型作成中

ある程度、スケッチ案がまとまった段階で、次はスタディ模型を作成していきます。今まで手に持っていたペンを、カッターと定規に持ち替え、2次元から3次元へと思考の範囲を広げていきます。この段階で作るスタディ模型は、客観的なボリュームと空間構成を確認するためのものですので、細かなディテールに捕らわれないよう、素早く作っていきます。

手を動かして模型を作っていく途中の段階で、ここはこうした方が空間構成が面白くなる、使い勝手を考えるとこうした方が良い、などと色々な改良案が3次元模型を通して思い浮かんできます。スタディ模型が出来た後に、2次元の平面図に戻り、トレーシングペーパーを重ねて、ペンで書き込みをして再び平面を検討していきます。

これらの行きつ戻りつの作業を行うことで、設計案の強度がどんどんと増していきます。手を動かして考えれば考える程、設計案が良くなることは間違いありません。案がまとめるまでは少し時間が掛かってしまいますが、一生懸命に手を動かして考えていますので、それまで少々お待ちください。

スタディ模型外観