光の取り入れ方をデザインする

差し込む朝日01
以前、窓の配置と外観デザインについてブログを書きましたが、今回のテーマは、窓から差し込んでくる光の取り入れ方についてです。日本で建物を建てる場合、南面信仰と言えるほど南側から光を取り入れたいといった意識が強く、敷地の北側に建物を寄せ、南側に空地を設け、南側から光を取り込む配置計画が一般的に取られます。

日本には四季があり、太陽が差し込む陽の角度は一年を通して刻々と変化していきます。動きのない室内空間に、日々変化していく日差しを取り込むことで、室内空間に動きが生まれます。南側の光だけでなく、東西南北、方角ごとの差し込む光の特徴を活かすことで、多様な雰囲気を生み出すことができます。

南の光の取り入れ方

雪の日リビング大開口

南側から光を取り入れる場合、夏季には直接、室内へ陽射しが差し込んでくるため、庇を伸ばす、熱線反射ガラスを使うなど、光の取り入れ方には工夫が必要です。可能であれば、南側は庇を伸ばして夏の陽ざしを遮り、逆に太陽高度の低い冬季には陽を取り入れるのが理想です。

庇を伸ばせば伸ばすほど、室内が暗くなってしまうのですが、そんな場合は室内の仕上げの色合いを淡い色目にして、光をバウンドさせて柔らかな明かりを奥へ届けることを意識すれば、暗くなってしまうことが緩和できます。特に明るい色目の床を選ぶと反射光で部屋全体が明るくなります。

更に高度な光の取り入れ方として、庭に水盤などを置き、水盤に反射した光を天井に写すのも一興です。太陽の動きと共に、反射した光は西から東へと移動していきますし、風が吹けば水面の揺らぎが、ゆらゆらと天井面を照らします。

東の光(朝日)の取り入れ方

朝日の取り入れ方

東の光は低い高度から、つまり、上空からでなく、真横から差し込んできます。あまり大きな開口部を設けると、射すような陽射しが室内に入り込んで、室内がハレーションを起こしてしまします。

東に窓を設ける場合、スリット状窓にするなど、差し込む光を制限することが必要です。朝の一時、硬質な光が差し込み、印象的な空間へと変化します。光を絞って取り入れることで、少し暗い場所へと光が差し込むことになり、光の印象が強まります。(明るい空間にいくら光を取り込んでも、明るくは見えません)

また、単純に光を取り込んでも良いのですが、植栽の葉を通して光を取り込むのも面白さが出ます。葉の影が風に揺れ、動きのある光になります。

朝の光を浴びることで、生体リズムに合った目覚めの良い朝を迎えることができます。東窓を設けた寝室に就寝していると、朝の明るさですんなりと目が覚めてくるはずです。

西の光(夕日)の取り入れ方

差し込む夕日

西の光も、東の光と同様、真横から差し込んできますので、光を制限して取り込むことで印象的な空間を作り出すことができます。夕日は朝日に比べて、赤味があるので、室内を赤く染めることができます。夕日が落ちる直前の赤い光を室内に取り込めば、より印象的なシーンを見ることができるはずです。

北の光の取り入れ方

北の光を取り入れることで、安定した明るさの部屋を作り出すことができます。少し落ち着いた雰囲気の部屋としたい場合、北窓からの採光は有効です。

図書館やオフィスなどは、北窓から採光するのが基本です。室内に光が差し込んでいては、眩しくて本が読めませんし、現代ではPCモニタ上で作業することが多いのですが、明るすぎてはモニタが見にくくて作業がはかどりません。

光を取り入れる工夫

障子に落ちる樹々の影

直接光を取り入れても良いのですが、少し工夫を加えることで、室内の雰囲気ががらっと変化します。障子やすだれを透過して光を取り込めば、室内が柔らかい光で満たされますし、水に反射させた光を天井に写すことで動きのある空間へと変化させることができます。

また光だけでなく、影を意識するのも重要です。障子や床に落ちる樹々の影に焦点を当てれば、その風景も愉しいものとなり、暮らしを彩ってくれます。

樹々の影