環境負荷の少ない木杭地盤改良工法

「ユニベールハウス岩室」が着工しました。まずは地盤調査を行い、建物が建つ場所の地盤がどれくらいの重さに耐えられるのかを、確認していきます。新潟は「新たな潟」という地域名だけに、もともと海抜が低く、古代には遠浅の海だった場所が時代と共に湿地へと変化し、埋め立てられ水田となった由来を持っています。ですので海抜の低い場所では、地表面から数mまでは泥が堆積した軟弱な地層であることが多くみられます。

新潟で設計をしていると、軟弱地盤である確率が非常に多いのですが、県外にでると地盤の良好な所が多く、つくづく新潟で家を作る地盤条件の不利さを感じてしまいます。関東では数センチ掘っただけで、良好な赤っぽい関東ローム層が見えることもあり、地盤改良無しで直接載せても全く問題ないケースも普通に見られます。

001環境パイルS

今回も地盤調査を行った結果、軟弱地盤であることが判明し、地盤改良を行う必要があることが分かりしました。(可能であれば事前に地盤調査を行い、建物本体の工事費だけでなく、地盤改良に掛かる費用も見込んでおくことが大切です。工事を進める段階になって地盤改良費用が掛かることが分かるなんてことの無いように。)

今回、地盤改良に採用したのは「環境パイル」という木杭を打ち込む改良方法です。セメントを使った改良工法とは異なり、土壌汚染が少ない杭の撤去が容易である、施工費が安い、ことが理由で最近、私の事務所ではよくこの改良方式を採用しています。

重機を使って上から圧をかけて木杭を地面に圧入していきます。所定の深さまで圧入し、所定のトルク圧をかけ、求められた地盤強度に到達しているかを確認します。

木杭地盤改良

防腐処理した木杭を構造計算に基づいた一定の間隔に打込んでいきます。まるで発掘現場のようですが、上の写真が地盤改良木杭の施工後です。この木杭の上に基礎を載せ、地盤下数mの深さの良好な地盤層へと建物の重量を伝えます。

見た目そのまま、木の丸太ですので、建物を解体する際の杭撤去が容易で、解体まで含めた建物に掛かるトータルコストを考えると、利点が大きい。(同様に、鉄パイプを使った地盤改良方式もありますが、鉄資材の高騰で近年、値上がり傾向がみられます。)建物を建てる際には、ついつい建物の建設費だけを考えてしまいがちですが、建物の毎月の光熱費、数年ごとのメンテナンス費、解体時の解体費用まで含めてトータルに費用を考えることが重要です。

木杭地盤改良

基礎配筋の施工状態です。木杭の上に基礎配筋が載っているのが見えます。建物上部の重量は、屋根・床から柱へ、柱から土台へ、土台から基礎へ、基礎から地盤改良杭へ、改良杭から地盤へと、部分を通して力が伝わっていきます。それぞれの部材がどんなに強度があっても、接続部がうまく施工できていなければ、力を伝えることはできません。それだけに各部の施工チェックは欠かせない個所です。