「ユニベールハウス」工事がスタートした頃は、まだ残暑が続き、暑い暑いと言いながら現場作業していたように思うのですが、気がつけば既に肌寒い季節になってきました。夏になれば暑さが、冬が近づけば寒さが、つい気になってしまうのが人情ですが、今回は断熱性能についての話です。なぜなら現在、現場ではまさに断熱工事が進行中!だからです。
断熱材は色々なメーカーが研究開発を重ね、現在、さまざまな種類の断熱性と気密性が高い製品が市場に出ています。10年前に比べると、同じ値段で手に入る断熱材の性能は、格段に上がっているというのが実情です。数ある断熱材の中からどの断熱材を選ぶのが良いのか。各社のカタログを見比べて今回選択したのは、在来工法でもっとも一般的に採用されている高性能グラスウール断熱材でした。
高性能グラスウール断熱材を採用した理由は、一般流通している製品で日本中どこでも手に入りやすいこと(つまり全国どこの建材屋さんでも手に入り、かつ、導入コストが安い)、また、大工さんが昔から使っていて最も慣れており、施工スピードが速くて施工が確実なこと、でした。高性能と呼び名がつくだけあって、一般のグラスウールよりは材料自体の値がやや張りますが、高性能グラスウールだろうと、一般グラスウールだろうと、(グラスウールの厚みが一緒なら)大工さんのグラスウールの施工手間は全く一緒。施工手間は変わらず、グラスウールの差額分を増額するだけで高性能な断熱材を導入できるので、費用対効果が大きく、おすすめです。
サッシには、樹脂複合サッシ+複層ガラスとし、日差しの差し込む大きな窓については熱線反射ガラス(Low-Eガラス)を採用しました。数年前まではアルミサッシが主流で、樹脂複合サッシは、まだ金額が高かったのですが、近年、国の省エネ政策の影響もあり、アルミサッシの1~2割増しで手に入るようになりました。また、更に断熱性能の高い樹脂サッシも普及が進んできており、価格が年々、下がってきています。今回の建物のように、大開口窓を設けるような住宅では、窓サッシの性能を上げるのは、建物の断熱性能アップにとても有効な手段です。
上記の仕様で、建物の断熱性能は(正確には外皮性能ですが)、平均熱貫流率(UA)値=0.64W/㎡Kとなっています。ZEH(ゼッチ=ゼロエネルギー住宅)の断熱性能基準が新潟市では、UA値=0.6以下ですので、ゼロエネルギー住宅にはちょっと届かないという数値ではありますが、坪単価を抑えたローコスト分譲住宅という建物の性質を考慮すれば、それなりにハイスペックな断熱住宅の部類に入れても良いのではないかと思います。
分譲住宅においては、販売価格と断熱性能スペックのバランスが重要となるので、今回はこの断熱性能としましたが、もっと断熱性能を上げていくことは技術的には当然、可能です。例えば、断熱材をの厚さを上げる、または、窓を全て樹脂サッシにする、Low-Eガラスを採用する、など方法はいくつもあります。部屋の広さやデザインなどと違って断熱性能は、ぱっと見で伝わるものではないので、どこが適正値かを決めるのはとても難しいところではありますが。
思い返してみると、私の事務所で設計している住宅は、年々、断熱性能が上がってきています。10年前の住宅と今の住宅では、まったくといっていい程、断熱性能が違っています。それは、断熱材の性能アップという断熱メーカーの努力と、省エネルギーに対する人々の意識が変わってきたことの現れと言えるかもしれません。