「立川の3世帯住宅」外部足場が外れ、外壁が姿を現しました。今回、外壁に選んだのは、濃灰色のラフな質感の吹付け材です。外観だけ見ると、開口部も少なく、重厚で閉鎖的な印象を受けるかもしれません。(外観の印象とは相反して、室内には明るく開放的な空間が広がっているというのは、言うまでもありませんが。)
密集した都市部では、どうしても敷地一杯に建物を建てざるを得ません。そのため、道路ぎわ一杯まで建物が迫り、どうしても外部空間(前面道路)と内部空間(室内空間)の距離が近づいてしまいます。つまり、プライベートな空間とパブリックな空間とが外壁一枚で裏表で接している状態が生まれてしまいます。
この濃灰色は、心理的に少しでもその距離感を離したい、ということから選択されました。壁の色が白くても、黒くても、実質的な距離や遮音性能(つまり、数値)は変わりません。ただ数字は同じでも、心理的な距離感は大きく変わってきます。何故だか人間というのは、濃い色の方が距離感を感じてしまうのです。黒く重厚な外壁。その色と質感だけも、室内にいる人は、大きな安心感を感じることでしょう。
外壁の色一つだけでも、室内の居心地に大きく影響を与えてしまいます。色や質感。ちょっとした事ですが、空間の雰囲気を変えてしまう大事な要素です。ただのぱっと見の造形的な印象だけでなく、人の心に及ぼす心理的影響を考慮しつつ、選択することに気をつけています。