ぎんなん保育園は木造平屋の建物です。平屋であることで床面積600㎡超と、かなり大きな建物になりました。基本構想の段階では2階建て案も検討しましたが、最終的には平屋案を採用しています。なぜ平屋としたのかというと、2階建てとすると子供達が2フロアに分かれてしまい、年齢の異なる子供達同士の交流が図れなくなってしまうのを避けることが一つの理由でした。それに加え、もう一つの理由がありました。敷地隣に建つ寺の本堂を隠してしまわないようにと、意図したことです。
本堂の瓦屋根はこの地域にとって、昔から変わらぬ風景であり、心の拠り所でした。その風景を隠してしまうのではなく、新たに建物が建つことでシンボリックに際立たせたいと考えたためでした。水平方向に伸びる平屋の園舎と垂直方向に立ち上がる本堂の瓦屋根。お互い異なる方向性を与えることで、互いが互いを強調し合っているように見えます。自らが主張するのではなく、敢えて引くことで環境を変えるデザイン方法。以前よりも本堂の屋根が目に留まるようになったのではないでしょうか。