片山光生設計「奈良県庁舎」を訪れて

奈良県庁舎を訪れる。片山光生設計、竣工は1958年。奈良公園側からアプローチする。ピロティで持ち上げられた低層棟が中庭を取り囲むような構成。設計者曰く、飛鳥・奈良時代の伽藍配置をイメージしたという。確かに、ピロティの連続する柱がまるで伽藍回廊のよう。懐かしくもあり、かつ、新しい空間。伝統様式とモダニズムの融合。

中庭に入り、公園側を振り返ると、回廊を通して樹々の緑が目に飛び込んでくる。囲いつつ、開くという、まさに伽藍の空間の特徴を上手く表現している。庁舎の外観は、竣工時期が丹下健三設計の香川県庁舎竣工の7年後となるためか、とても似通った印象を受ける。しかし、より水平性を強調したデザインと高さをより低く抑えたスケール感など香川県庁舎をモデルにしながら、さらにそのデザインをその場所に合わせ、洗練させているのが分かる。

何よりも一番印象的であったのは、中庭でのんびりと草を食む鹿と、ピロティの下で休んでいる人たち。この空間が心地よいからこそ、自然とそこに人も動物も集まってくるのだなと感じた。

奈良県庁
住所:奈良県奈良市登大路町30
開館時間:午前8時30分~午後5時15分
休館日:土日祝
電話:0742-22-1101(代表)
※屋上のみ、土日祝でも開放している場合があります。詳しくはHPを確認ください。

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