宮城県女川町へと向かう。
津波が訪れた直後、ツイッター上では、
女川町が大変な状態になっているとの情報が流れていた。
海抜20m以上の津波が街を襲い、
鉄筋コンクリート造の中規模ビルが横倒しになって倒壊していると。
実際、私が足を運んだ岩手県大槌町でも、
鉄筋コンクリート造の町役場が津波の被害を受けていたが、
建物の躯体自体はかろうじて残っているという状態であった。
他の街と同様に、女川町旧市街地も今では瓦礫の大半が片付けられ、
見渡す限り、原っぱが広がっている。
その中に3つ、唐突に異質なものが転がっている。
3階建の鉄筋コンクリート造の建物だ。
津波に押し流され、基礎杭が根元からぽっきりと破断している。
基礎ごと横倒しになった建物は、津波の中を漂い、
元あった場所から大きく移動したとの話だった。
この現実を目の当たりにし、背中に冷たいものを感じた。
想像もつかない程の津波のパワー。
建築業界の中にも構造強度を増し、津波に耐えるようにすればよい、
などという言説の人もいるようだが、この現実を知って、まだ
同じように言い続けることができるのだろうか。
少なくとも私は、この現実を見て、建築というハードの無力さを知った。
自然の脅威に対してできることは、対抗するのではなく、逃げることだけだ。
三陸地方の言い伝えに「津波てんでこ」という言葉がある。
津波がきたら、てんでんばらばらに一生懸命に逃げろという意味。
昔からそうであったように、自然を恐れ、崇拝すべきだ。
人間の力ですべてをコントロールできるなどと、過信してはいけない。
建築業界に携わるものであるならば、
少なくともこの場に立ち、この現実を目にするべきだと思う。