建築費のコストダウンを図る

設計事務所の業務は、住まい手の要望を盛り込んで図面を作成するのが基本的な業務で、施工工事を請け負うわけではありません。実際に建物を作る際は、地元の工務店や大工さんに、出来上がった図面を渡して見積りをお願いすることで、建築費(工事費)が決まります。工務店によっては、得意・不得意な工事があるので、何社かに相談し検討した上で、その建物の作りにもっとも適した工務店へ見積もりをお願いします。

工務店に見積りを取る


設計段階では、最終的な建築費までは分かりませんので、設計段階で工務店に早めに相談し、予算調整を行いながら設計を進める方法を最近では採用しています。そうすることで、予算を把握しつつ、設計を進めることができます。

予算をある程度、把握していたとはいえ、工務店に見積もってもらったが建築費が、昨今の建築資材の高騰の影響であったり、設計を進めていく内についイメージが膨らんだりと、当初予定していた予算よりも建築費がオーバーしてしまうことがあります。予算に余裕がある方なら問題ないのですが、厳しい予算の中で最大限の要望を実現したいと考える方にとっては、出来る限り予算を抑えたいと考えることでしょう。

そのような場合、設計者は見積書の内容をしらみつぶしにチェックし、すべての設計仕様を見直し、どこかに無駄がないか、重箱の隅を突くように、コストダウンを図っていきます。工務店の見積り書は、何ページにも渡る多くの項目から作られており、かつ、専門用語や建材名が書かれていますので、建築を学んだ人でなければ、いったい何が書いてあるのか、予想もつかないかもしれません。

コストダウンの進め方

根気よく見積り項目ひとつひとつをチェックし、削れる部分は削って、代替えできる建材は安いモノに変え、単価や数量が間違っていれば指摘し、構造計算して部材を減らしたりと、あの手この手で、コストダウンを図っていきます。きちんとした金額が見積に計上されているか、適正であるかを査定するのであって、見積り金額を理由もなく値切るわけではありません。もし無理に値切った場合には、現場が始まってから職人さんとのトラブルが発生したり、現場が遅延したり、設計仕様と違う施工が行われたりといった問題が起こり、最後は住む方の不利益になってしまいますので。

最初の段階では、できる限り見た目や空間の雰囲気、建物性能が損なわない範囲で変更を積み重ねていきます。しかし、それでも予算が収まらない場合には、住まう方の要望を再度、見直してもらう段階へと進んでいきます。具体的には、住まいに対する要望リストに依頼者から優先順位をつけてもらいます。この部屋は本当に必要なのか?この仕上げでなければならないのか?住み方を工夫することで対処できないか?要望する性能は適切か?など、すべての要望をいま一度、見直して、重視するものから並べ直してもらいます。

すべての要望を実現しようとすれば、それだけ工事予算が嵩んでしまいますので、すべての要望が満たせないとしても、上位から順にいくつかでも何とか要望を叶える方向へと方針変更していきます。暮らしにとって無駄なぜい肉をそぎ落とし、うまく工夫することで、すべての要望が実現できなかったとしても、最初に思い描いていた暮らしのニュアンスは予算内で実現できるはずです。

予算を落とすことは住まい手にとって(設計者にとっても)、たいへん労力がかかる作業ですが、あきらめず根気よく、続けていくことが夢を実現していくためには必須です。