スタディ模型で設計密度を高める

スタディ模型作製

「粟生津の平屋」プロジェクト。現在、スタディ模型を作って設計案を検討をしています。最初は縮尺1/100と、手のひらに載るくらいの大きさで、あまり細かな作り込みをせず、全体の空間構成や建物ボリュームが掴める程度の精度で作っていきます。(私の事務所ではスタディ段階の模型ということで、スタディ模型と呼んでいます。)

私が頭の中でイメージしている空間を「こんな感じです」とテレパシーで伝えられれば話は早いのですが、そんな訳にはいきません。スタディ模型を作ることで、頭の中でイメージしている空間を実体化し、お客さんへより実感を持って伝えることが可能になります。

スタディ模型

スタディ模型を作る段階では、大まかな検証を行うための模型ですので、小さなところに捕らわれず、手を動かして作りながら考えていくようにします。作りながら考え、考えては作り直す。何度も繰り返すことで、頭の中が次第に整理されてきます。

図面だけでなく、同時に模型を使ってスタディ(検証)を行っていきます。平面図にペンでスケッチを入れて考えるのが2次元的なスタディだとすれば、模型を作るのは3次元的なスタディです。平面上でのスタディに比べ、より立体的にイメージが立ち上がってきます。

スタディ模型検証

検証していくことが目的なので、スタディ模型はいくつも作られます。構造フレームを検証するための模型だったり、建物の立面を検証するための模型だったり、平面を検証するための模型だったり、と目的に合わせ少しづつ模型の作り方が異なります。

図面の上ではほんのちょっとの違いかもしれませんが、その違いを模型で3次元に起こしてみると、結構大きな違いが発見できることもあります。上の写真は、いくつかのヴァリエーションの検証模型をいくつか作って、並べて比較しているところです。ぱっと見、どれも同じように見えますが、実は少しづつ異なります。


スタディ模型02

模型内部を覗くと、その違いが分かります。上の模型では、窓の配置位置を検討していることろです。ほんの少しの違いではありますが、出来あがる空間の雰囲気は随分と異なります。実際の方位に合わせて模型を窓際におけば、太陽の光が室内に差し込む感じを掴むことができます。光の入り方だけでも空間の雰囲気はがらっと変わります。

こうかな、ああかな、と窓の配置レイアウト模型を作っては中を覗いて、また更に別の案を作っては覗き、と何度も検証を繰り返していると、ある瞬間に、ああこれが一番しっくりくる、という案にたどり着きます。本来であれば、一発目の案でこれだっ!となれば良いのですが、いかんせん、私はまだその境地に達していません。今後ますますの精進が必要です。

と、このようにスタディ(検証)を行うために模型を作ることが私の事務所では基本的な設計作業となっています。今後、更にパソコンソフトの開発が進めば、もっと簡単にPC画面上で同様の検証作業が行えるようになるのかもしれません。が、どんな形であれ、ひたすら手を動かして考える、という作業はデザインをする人にとって、無くせない大事な過程であると思っています。